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*** 100 住宅展示場 *** 

 


 ミミとピピとの話を終えた大地はブリュンハルト一行の下に戻った。


「みんな、待たせて済まなかったな」


「全然かまわんよ。

 それにしてもダイチの人気は凄いな……」


「まあみんな腹を空かせてたから、飯が喰える有難みを俺の有難みとカン違いしてるんだよ」


「いや……

 それはあながちカン違いでもないだろうに……」


「はは、まあ飯さえ喰えればそんなことはどうでもいいだろう」


「それにしても、俺たちがダイチの商品を売って稼いだカネで子供奴隷を集めて来たとしたら、あの子たちが面倒を見てくれるんだな……

 あの子たちも『いーかいてい』が高いんだろ?」


「そうだ、2人とも3.0を超えてるぞ」


「それなら安心だ。

 ところで乳児はどうするんだ?

 この村には乳の出るご婦人がそんなにいるのか?」


「地球には乳の素を作る技術があってな。

 湯を入れて混ぜると乳になるんだよ。

 それを哺乳瓶っていうものに入れれば、乳の出るご婦人がいなくても乳児を養えるんだ」


「す、すごい技術だな……

 だったら、いくら乳児がいても、世話をする人手があれば養えるのか……」


「その通りだ。

 さて、それじゃあ住宅街に行ってみようか」


「ああ……」




「さあ、ここが中型種族用の住宅の見本を置いてある場所だ。

 俺たちヒト族は、中型種族に分類されるからな」


「随分といろいろな種類の家があるんだね……」


「そうだな、同じ中型種族でも、種族特性によって好む住居の形がぜんぜん違うんだ。

 例えば、寝る場所ひとつとっても、家族単位で寝ることを好む種族と、村の全員が塊りになって寝ることを好む種族もいるし。

 それから、穴倉みたいな場所を好む種族や逆に天井の高い部屋を好む種族も。

 だから、移住して来た種族には、ここで家を選んで貰ってるんだよ」


「なるほど」


「それじゃあ俺が考えたヒト族用の住居に案内しようか。

 ほら、ここがヒト族の独身者用住居だな。

 これにも3通りあって、大きな部屋に50人ぐらいが寝泊まりする家、6人ほどの集団が一緒に寝泊まりする家、それから1人用の部屋が集まった集合住宅だ。

 それからあちらの小さな家は家族用の家だな。

 4人ほどの家族が一緒に住むことを想定している。

 あそこの家は8人ほどの大家族用の家だ」


「移住してくるとすれば、これらの家の中から選ぶということか」


「そうなるな。

 また村の敷地なんだが、例えば500人だったら100メートル四方ぐらいの広さになるだろう。

 もちろん全員が一堂に会せる集会場も作る。

 また、それほど大きくはないが厨房もな。

 基本的には転移の輪で食堂街に行って食事をしてもらうことになるから、厨房はそれほど大きなものは必要無いだろう。


 また、もちろんこうした村ではなく、多くの種族が集まって暮らしている街に住むことも出来るぞ。

 それじゃあしばらく時間を取るから、みんな自由に部屋の中を見てくれ。

 俺はその間ちょっと別の場所に行ってくるよ」


「ああ…… そうさせてもらおうか……」



 一行は熱心に各種住宅を見学し始めた。

 特に会頭と男爵は真剣な表情で全ての住宅を見ている。

 ということは、本気で移住してくる気になっているのだろう。



(なあシスくん、これから商会の連中を全員招待して見学させたいんだけどさ。

 案内係って十分にいるかな?)


(既にこれだけ多くの種族が移住して来ております。

 その中には職業紹介所で『案内係』の職を選んだ者も大勢おりますし、その中でもベテランを付けますので大丈夫だと思われます)


(そうか、それで彼らは500人ほどいるんだけど、50人ぐらいずつ10回に分けて見学させるのがいいかな。

 それとも500人いっぺんがいいか?)


(500人の方に来て頂いて、それから5つの組に分かれて頂いて案内係を5人付けるのはいかがでしょうか。

 ほとんどの種族の移住や見学に際しては、皆そうして頂いています)


(それなら大丈夫そうだな)


(はい)




 皆が住宅のサンプルを見分している間、大地は妖精族の村に転移した。


 あっ!

 男の子と女の子がくっついてイチャコラしてる!

 しかも1対1じゃあなくって、多対多のグループまでいる!

 ああっ!

 そ、そんな……

 R15宣言した小説で書いちゃあイケナイことまでしてるっ!

 み、みんなハジけちゃったんだ……


「あ、ダイチさま……」


「あ、ああ、すまないが族長を呼んで来てくれ……」


「はい、ただいま!」



 すぐに息を荒くしている族長がぱたぱた飛んでやって来た。

 服は身に着けておらず、体中にキスマークがついている。


「お待たせいたしましたダイチさま♡」


(あー、声まで潤んでるよ……

 お楽しみの真っ最中だったのか……

 こ、こんな美人さんが…… くっ……)


「な、なあ族長、頼んでいた『金抽出の魔道具』は出来たかな……」


「はい、あちらに50個完成しております……」


「ご苦労だったな。

 それじゃあ貰っていこう。

 ストレー、収納しておいてくれ」


(畏まりました)


「あの…… ダイチさま……」


「ん? なんだ?」


「よろしければ今度、『変化へんげ』の魔法を見せて頂けませんでしょうか……」


「もちろん構わないが、何に使うんだ?」


「あの、その魔法を使えるようになれれば、わたくしたちも大きなヒト族と同じ体に成れて、ダイチさまの夜伽が出来るようになるかと……」


(げげっ!)


「ですのでわたくしたち、今から殿方に悦んでいただける方法をいろいろと研究しているところなんです♡……」


(げげげげげげげげ……

 だ、だから男の子たちがみんなぐったりしてるのか!)


「ま、まあそのうちな……」


「はい♡」


(い、いかん……

『試され過ぎておかしくなりそうな大地』……)




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




(ダイチさま)


「おおシスくん、どうした?」


(あの『金抽出』の魔道具なのですが、もし頑丈なロープをご用意いただければ、わたくしが海中に設置しておきますが)


「そうか! あそこはもうダンジョン領域だからシスくんだけで出来るのか!」


(はい。

 海岸から100メートルおきに、水深100メートルの海底に設置すればよろしいのですよね?)


「そうだ」


(それから魔道具の魔石の交換や、抽出された金の回収なのですが、ストレーさんが直接出来るそうです)


「それは便利だなぁ。

 それじゃあ2人とも頼んだぞ」


(( はい ))


「ついでに魔道具に岸から近い順番に番号を付けておいてくれるか。

 そこから抽出した金を回収するときには、番号別に分けて収納しておいてくれ。

 そうすれば岸からどれぐらい離れれば、金の抽出量が最大になるか分かるだろうからな」


(( 畏まりました ))




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 大地がブリュンハルト一行のところに戻ると、全員が神妙な顔をして集まっていた。



「ダイチ、住宅をみんな見せてもらったけど……

 あれほどまでに豪華な家は見たことが無かったよ……」


「全ての家の中には木で出来た家具があり申した。

 中には木で出来た寝台まで……

 それに寝台には清潔な布地で作られた敷布団や、見たことも無いほど綺麗な毛布まで……」


「しかも、何に使うかよくわからない箱もたくさん……」


「あれは『灯りの魔道具』や『暖房の魔道具』や『水の魔道具』や『クリーンの魔道具』なんだ。

 箱の表面の石に触るだけで使えるから便利だぞ」


「そ、そんな……

 国宝級の道具に囲まれて暮らすとは……」


「はは、まあ便利な道具だから使ってくれ」


「「「「 ……………… 」」」」


「さて、それじゃあそろそろ王都に戻ろうか。

 王都にいる商会の他のメンバーの見学の日取りが決まったら教えてくれ。

 500人いっぺんに来ても平気だぞ。

 そのときには5組ぐらいに分かれて貰うことになるけど。

 ベテランの案内係がつくから安心してくれ」


「今日はたいへんお世話になり申した。

 厚く御礼申し上げます……」




 転移の輪で王都の商会本部に戻った一行は、中庭で即席の会議を始めた。


「皆の者、ダイチ殿の村についてどう思った?

 遠慮なく感想を述べてくれ」


「何から何まで素晴らしい場所でございましたな……

 特に住民たちの笑顔が印象に残りました」


「食べ物や住処や安全に不安が無いと、人はあのような笑顔になるのですな……」


「それにあのモンスター戦士たち……

 あの戦士たちとダイチ殿がいれば、如何なる貴族や国が攻めて来ても簡単に撃退出来ることでございましょう。

 あの村、いやもはや国と言っていいでしょうが、あの国はこの大陸で最も安全な場所でありましょうな……」


「そうか……

 まあ、あの国の素晴らしさについて異論はあるまい」


 その場の全員が頷いている。



「じゃが、わしにはひとつだけ不安があるのだ」


「と、仰いますと?」


「ダイチ殿と天使さまは我らに仕事をお望みであった。

 ダイチ殿の母国の商品を売ったカネで、子供奴隷を集めて来て欲しいと。

 わし自身は全力でその任務を為したいとも思っている。


 だがの、ダイチ殿は職業については各人が自分で考えよと仰っておられただろう。

 たぶん、お前たちはダイチさまのために働いてくれると思う。

 じゃが、まだ若い奴隷たちや見習い護衛たちは、我らと一緒に働いてくれるかのう……」


「もちろん、彼らの中には危険な護衛の仕事ではなく、もっと安全な職に就きたいと言い出す者も出て来るでしょう」


「やはりそうだろうの……」


「ですが、それはダイチさまの御心に適うことでもあります。

 それに、あの村には既に多くの種族が移住して来ております。

 どうやらいろいろな仕事を斡旋する場もあるようですので、そこで護衛見習いを募集してみてはいかがでしょうか」


「ダイチさまのために働けるのであれば、驚くほど多くの応募があると思われます」


「そうか、なにもヒト族だけに限る必要も無かったか……」


「「「「 はい 」」」」


「獅子人族、豹人族、熊人族、狼人族などの強者が護衛隊に加われば、後は集団での戦い方や、護衛の心得を教えてやるだけですぐに護衛兵として一流になれるでしょう」


「そうだな、お前の言う通りだ。

 それではそうするとしよう。

 それでは皆宿舎に帰り、残っていた者たちに今日の見学の様子を伝えてくれ」


「「「「 はい 」」」」





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