プロローグ
拙い文章ですが、読んでいただけると幸いです。読んで後悔がないような、面白い話にします。
誰かこの小説を見つけてください。
よろしくお願いします。
有名な自殺スポットがある。
人里離れたある田舎の山奥。そのどこかに、広大な丘が広がっている。辺りには家屋は当然、電柱も花も、音すらもない。鬱蒼と茂った草原がただひたすら地平線のはるか彼方まで続いているだけのはずのそんな場所に、その自殺スポットはある。
広大な丘の上のど真ん中に悠然と立っているのは、木。何の変哲も無い――あるとすれば、幹は太く、葉はブロッコリーのように空に向かって広がり、枝は悪魔の手のように広がっているという、その巨大さなのだが、やはり、大きいという以外はどこにでもある――普通の大木。
その木が最初に有名になったのは、ネットの裏掲示板であった。
>>マジ、あの木に何人も首を吊ってたらしい。
>>俺も行こww人生どうでもいいしww
>>俺肝試しで行った時、マジで死体ぶら下がってて、ヤバかった、、、
そう。その木は、首吊り自殺が多発する場所であったのだ。
頑丈な枝に紐状のものをくくりつけ、首を吊る。この世に生きる意味をなくしたものたちが、一度に何人もその木にぶら下がっていたり、毎日のように、新しい自殺者が次々と命を絶ったりした。
想像しただけでも、恐ろしい阿鼻叫喚の図は、しかし、紛れもなく事実だった。
そのうち、ネットの噂だけではなく、実際に警察も動く事態にまでなった。全国版のニュースにも細々とではあるが取り上げられ、その筋の人々にとっては格好の話題になった。その後も自殺は後を絶たず、あるいは、いたずら半分に若者が近づきしばらくの間は騒がれることとなった。
しかし、それも一時的なものであった。しばらく経つと、人々の記憶からも丘の上の木はだんだんと薄れつつあった。
有名な自殺スポットがあった。
だが、それも過去のこと。今は警察にもネット民にも忘れられた、過去の場所。
そんな場所に、再びまことしやかな噂が流れ出したのは、やはりネットの裏掲示板であった。
>>あの木に誰か住み着いてるらしい!
>>マジで…絶対化けて出てんじゃん。。。
>>でも、女らしい。しかも、美人、、
>>誰か声かけて来いよ笑
丘の上の木に、いつも女がいるというのだ。
首から上がない女が木の周りをぐるぐる回っている。木の幹から女がぬるりとでてくる。それらしい噂が次から次へと飛び交った。中には、木陰に座り木に背中を預け本を読んでいるといった、訳の分からない噂まで掲示板をさまよった。
こちらは、はっきり言って信憑性は無い。所詮、自殺スポットに必ず付いて回る怪談話だ。ネット民が我先にと面白おかしく話しを脚色して、あるいは、一から作り上げてネットにばらまいているだけなのだ。
そんな怪談話が渦巻く掲示板に、一際目立つ噂があった。それはまるで、何かの紋章が浮き出るように異色を放っていた。
その噂はこれまでの怪談話とは毛色がまるで違うものだった。
何がどうなって、そんな噂が流れたのかは分からないが、とにかく、怪談とはまた違った不思議な雰囲気を醸し出していた。
しかし、その噂は「不思議」という以上に、あまりにもうろんな内容だった。くだらない怪談話で盛り上がっていたネット民が一笑に付すほどに。ある意味では、怪談話なんかよりもよほどくだらなく、信憑性のないものだったのだ。
こちらは、説明するのがあまりにも馬鹿臭い内容なので、簡単に済ませることにする。
どうせ、根も葉もない噂――といえば語弊があるか。丈夫な根を張り、壮大な葉をつけている大きな大きな木の話なのだから。
かつて、自殺スポットと呼ばれた場所は、今は違う呼び名が付いている。
本のなる木。
リンゴがなるように、ブドウがなるように、その木には、本が――紛うことなき、人間が読むあの本が、枝にいくつもぶら下がっているというのだ。
だから、その丘の上の木はこう呼ばれているという。
本のなる木、と――