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やっとここまで来た~ (;'∀')
くちびるをかみしめてうつむくラインハルトに、ヒルダはおずおずと声をかけた。
「その後、ルーカスさまたちは……?」
「国王陛下の命令で、毒杯を賜った」
「毒杯を!?」
「当然だろう。長年にわたる不毛な戦争がようやく終わっていたのだ。いくら知らなかったとはいえ、父には使節の長として監督責任があった。皇帝の不興を買って、再び戦争がはじまったらどうする? 父たちが死をもって詫びたため、皇帝もこの件は不問に付してくださった。そのうえで、父たちは移動中の事故死ということにして、それ以上の汚名を被ることは避けられたのだ」
「父たち?」
気になって聞き返すと、
「同行した旧友たちだ。父は、長である自分ひとりが死をもって贖うと言ったらしいが、彼らは随員の中にいたあの女に気づかなかったのは、自分たちにも責任があるからと……」
ラインハルトは沈痛な面もちで、そのあとに続く言葉を飲みこんだ。
「母に冤罪をかけようとしたことは許せませんが……本当は悪い人たちではなかったのですね」
自分の母に行った所業は許しがたいが、その加害者たちのあまりに悲惨な末路に、当事者でもない人間が批判することなどできなかった。
「父は、責任ある立場にいながら、また婚約者のある身でありながら、他の女の色香に迷い、道を踏み外したバカな男だ。だが、俺にとってはたったひとりの肉親だった。あんな女の産んだ子どもなのに、父はとても優しかった。あの女は父の人生を狂わせただけでなく、最後は間接的ながら命まで奪った。だから俺は、あの女も、その黒幕も、同じ組織に属しているであろうおまえも、絶対に許さない!」
激しい怒りをぶつけられ、少女は哀れなほど震えだした。
「リ、リリアは? リリアはどうなったの?」
「絞首刑だ。おまえの組織は、そんなことも把握していないのか?」
「ひぃっ!」
刹那、女は白目をむいて卒倒した。
「背後関係を聞き出そうと、随分苛烈な尋問が行われたそうだが、あの女は最期まで口を割らなかった。なんでも、『ひろいん』だの『げーむ』だの『ばっどえんど』だの、不可解な言葉を並べたて、追及をかわし続けたらしい。おそらく、狂人のふりをして罪を逃れようとしたのだろう。だが、今回はそうはいかない。必ず黒幕を吐かせてみせる!」
喪心した女子に向かって、ラインハルトは無慈悲に宣言する。
「連れていけ」
そう命じられた男子生徒たち――十中八九、近衛騎士の変装だろう――は、床に横たわる物体を軽々とかつぎ上げ、静かに部屋を出て行った。
ゲームでは、絞首刑になるのはヒルダの母でした。
それも、ルーカスとリリアの結婚式の余興として。
鬼畜やー (~_~;)