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3/10

3 (???視点)①

もう面倒くさくなったからエタっちゃおうかと思っていたんですが、なんと評価をつけてくださった方が!(@_@)

それに、ブックマークも( ̄□ ̄;)


……とりあえず完結させようか ε~(;@_@)



 前世を思い出したのは、五歳の時だった。


 百花咲き乱れる王宮の中庭。

 高価そうな茶器が乗る優美なガーデンテーブル。

 その傍に立つ銀髪赤目の美女と、自分と同い年くらいのコバルトブルーの髪の男の子。


「ルーカス、こちらがあなたの婚約者、メルレンニヒ侯爵令嬢よ」


 ドレス姿の女性がその幼児と私を引き合わせる。


「フロイライン。ルーカスは第一王子ですから、あなたにはお妃教育を受けてもらわねばなりません。つらいことも多いでしょうが、どうか立派な王妃となって、ルーカスを隣で支えてあげてください」



 常識ではありえない色彩をまとった美しい母子。

 侯爵、王子、お妃教育。

 まるでゲームみたいな……。

 

 いや、『みたい』ではなく、これはラノベでよくある設定――異世界転生では!?


 だとすると、私の立ち位置はどう考えても悪役令嬢。

 あと十数年後、この美少年に断罪されて破滅する役回り。ヒロインと攻略対象との恋のスパイス的当て馬だ。


 ……マジか。


 大人たちに勝手に結婚相手を決められ、その男に浮気されたあげく、最悪処刑すらありうる理不尽な末路を甘受しろと?


 とはいえ、悪役令嬢転生ものの多くは、転生者にはその世界の(ゲーム)基礎情報(シナリオ)があり、それを駆使してバッドエンドを回避するのがデフォ。


 だが、あいにく私は乙女ゲームをやったことがない。

 だから、これから先どうストーリーが展開していくのかも、どんなイベントが起こるのか全くわからない。


 でも……わたしにはラノベで得た知識がある。

 もし、テンプレ通りに話が進めば、最悪の事態は避けられるかもしれない。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 それから私は必死でがんばった。 

 貴族としての基礎知識・マナー、王子の婚約者としてのお妃教育はもちろんのこと、女性として許容される範囲の武術、婚約破棄後国外追放になるかもしれないので周辺数か国の語学と、内職仕事で小銭を稼げるように売り物にできるくらい手芸の腕も磨いた。


 一方、婚約破棄後、家を放逐された場合に備えて街を見てまわって物価の相場を把握したり、私物を売る時に使えそうな良心的な店をいくつか探したり、一時的シェルターとして利用するために孤児院に寄附をして恩を売ったりと、身分を剥奪されても生きていけるよう、ひそかに準備を進め……そうこうするうちに、あっという間に十三歳――王立学園入学の年を迎えた。


 そして、学園の入学式で見つけたピンクの髪の少女――たぶんこれがヒロイン。

 聞くところによると、ヒロインはつい先日まで市井にいた男爵庶子。

 まさにテンプレそのものだ。

 

 その後は予想どおりピンク頭は私の婚約者である第一王子やその側近候補の高位貴族たちに接近し、着実に好感度を上げていく。


 私と彼らの関係もほぼテンプレ通り。


 私は嫉妬に駆られて身分の低い美少女をあの手この手でイジメる極悪非道な高慢女でなければならないため、ピンク頭は無いこと無いこと吹き込んでいるらしく、彼らの私を見る目は日に日に険悪になっていく。


 四年次になると、今までお妃教育を口実にしてパスし続けてきた生徒会役員に就かざるをえなくなった。

 早い話、すべてのカリキュラムを史上最短で終了したからだ。


 生徒会役員はほぼ全員ピンク頭の信奉者。

 なので、できれば関わりたくなかったのだが、各学年の成績優秀者は生徒会に入らなければならないという暗黙の了解があり、どうしても辞退できなかった。


 お妃教育の代わりに今度は第一書記として生徒会の仕事に忙殺されているうちに時は流れ……そして迎えた卒業記念パーティ。



 五年間の学園生活でピンク頭とドップリ懇ろになっていたルーカスは、案の定、私のエスコートをすっぽかし……いや、それどころか、婚約者なら当然のマナーであるドレスや装飾品のプレゼントも一切なく、私は自前のドレスで一人学園に向かった。



 会場に入る早々、一段高くなったステージに立つ数人の男女から呼びだしをくらう。


 私がステージ正面に立つや否や、ルーカス王子は敵意のこもった目で睨みつけ、


「おまえとの婚約を破棄する! こんな性悪女を国母とするわけにはいかない!」



 ――キタコレ――


 まさにテンプレ通り!



「おまえは入学以来、醜い嫉妬から、このリリアをいじめつづけ、数々のいやがらせをしてきたそうだな! これまではリリアがおまえを庇って被害を訴えなかったので、察知することができなかったが、先日、命に係わる暴力を振るわれたと知り、もはや黙ってはいられない! 神妙に罪を認め、次期国王たるわたしの裁きに従え!」


「ルーカスさま!」


 言い切った感タップリのドヤ顔青年に、ピンク頭がすがりつく。


「心配するな、リリア。おまえのことは俺たちが守る」


「ああ、あの女が少しでも不穏な気配を見せれば、その場で切り捨てる」と、近衛騎士団団長の次男も吠える。


「リリアには金に糸目を付けずに最高の護衛をつけてあげるから、安心して」と、国内有数の商会を持ち多額の献金で爵位を得た成金子爵家の三男がささやき、


「義姉さん、もう証拠は挙がっているんです。あなたの部屋からリリアのネックレスの残骸が見つかりました。なんでも義姉さんは、リリアから母親の形見の首飾りを無理矢理取り上げて壊したそうですね? リリアは壊れていてもいいから返してほしいと懇願したのに、あなたはそれを無視して持ち帰り、クローゼットの奥に隠していた。もはや言い逃れはできませんよ」

 本来私の味方になるべき義弟がビシッと指をさす。


「まぁ、ウォルフ、人を指さすなどはしたない。もう一度マナーの講義を受け直す必要があるわね」


 遠縁の五男坊だったウォルフガングは、その優秀さを買われてわがメルレンニヒ侯爵家の養子になったはずなのだが、色香に狂って、自分の立場すらわからなくなったようだ。

 

「「「ごまかそうとしてもムダだ!」」」


 怒鳴る男たちの後ろで、こっそり醜悪な笑みを浮かべるピンク頭。



 と、 


「このように殿下たちは主張していますが、フロイライン、あなたの抗弁をお聞きしたい。できれば簡潔に。一刻も早くこのクソバカげた茶ば……(げふんげふん)……断罪を終わらせないと、祝賀会の進行に支障をきたしますので」


 しらけた目で傍らの学友を見据える侯爵家嫡男。

 ポジション的にそっち側の人かと思っていたが、意外にも彼――アロイス・フォン・グリュスヴァイクは、公正な目で事態を見届けるつもりらしい。

 そういえば、ピンク頭の取り巻き中、唯一生徒会の仕事をしていたのは副会長のこの男だったっけ。


 じゃあ、そういうことなら……。


「私には殿下がおっしゃるいじめ・いやがらせ・暴力、そして義弟が証拠と言ったネックレス、すべてについて全く心当りはありません」


「「「なんだと!? しらを切る気か!」」」


「ひどい! あたしは一言謝ってくれれば許そうと思ったのに!」


「なぜ何もしていない私が謝らねば――」



 激高するお花畑さんたちに、反論しようとした矢先、


「いいかげんになさい」


 威厳に満ちた声が大広間を圧する。


「「「王妃さま!」」」


 上段横の扉から現れた国王夫妻。

 この貴族学校では、卒業式典に両陛下が主賓として列席する習わしになっている。

 お二人は、どこかのバカ息子たちのおかげで出座のタイミングを失してしまったのだろう。



「話は聞いた」


 渋い低声が静まり返った会場に響く。


「命に係わる暴力とは聞き捨てならぬ。具体的に何があったか聞こう」


「はい、父上!」


 王に促され、ルーカスは喜色をうかべて、私の犯行なるものを言い立てる。


 いわく、


 ・リリアの身分の低さをあげつらい嘲笑した

 ・理不尽な叱責を繰り返した

 ・教科書・装飾品等持ち物を取り上げて壊した

 ・放課後、一人になった隙を見計らって、中庭の池に突き落とした


「そして、先月十日には人気のない校舎に呼び出し、いきなりナイフで切りつけたそうです!」


「ほう、もしそれが本当だとしたら、将来の国母として不適であるな」


「その通りです! わたしはこんな性根の腐った女より、清廉なリリアを妃に迎えとうございます! 父上、なにとぞリリアとの婚約をお認めください!」


 勝利を確信したのか、満面の笑顔でピンク頭を前に押し出すバカスさま。



「清廉……か」


 父王は息子のものよりだいぶ薄くなったコバルトブルーの頭を力なく振った。


「例のものをこれに」



 

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