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思いつきと勢いだけではじめたものの、早くも後悔しております。


恋愛物……難しい (ノД`)・゜・。




 上級生でもある従者に案内されて、私たちは入学式が行われる大広間に向かった。


 広いエントランスを抜け、大広間につづくアーチ型のアーケードに入ると、


「これ、どう見てもホグワ●ツよね? わたしたちの名前はドイツ風なのに、なんで校舎はイギリス風なの?」


「相かわらずですね」


 周囲を見回してブツブツつぶやく主人を、苦笑まじりでながめる美貌の従者。 



 あの日、やむを得ず連れ帰った浮浪児はかなり衰弱していた。


 そこで母は、急遽我が家のお抱え医師を呼び、高価な薬を惜しみなく投与して手厚く看護させた。


 少年がなんとか一命をとりとめ、ようやく起き上がれるようになると、母はさっそく彼を質問攻めにした。

 しかし、相手は頑なに口を閉ざし、身の上はもとより名前すら言わない。


 すると母は、「拾ってきた者には責任がある」と、私に世話を押し付け、名前をつけるよう命じた。


 一方、少年には、


「とりあえずあなたをこの屋敷で保護しましょう。なにしろ、娘に『一生おやつは無しでいいから、あの子をここに置いてあげて』と、土下座して頼まれたから」


 ……完全な捏造だ。



 ちなみに、クラウスというのは半年前に老衰で死んだ犬の名で、いきなり振られて無意識に口走ったら、そのまま採用されてしまったのだ。



 その後も、母は事あるごとに、


「ヒルダが頼むから」と、いっしょに家庭教師の授業を受けさせ、


「ヒルダにお願いされたから」と、一流の騎士に剣術の稽古をつけさせ、


「ヒルダが学園生活が不安だと言うから」と、自分の実家に手を回して分家の男爵家の養子に押し込み、私より一年早く貴族学校に入学させた。


(クラウスの歳は本人が明かさないので、母が勝手に私の一歳上と決めつけた)


 こうしてせっせと私に対する恩を刷り込みつづけた結果、浮浪児はみごとな忠犬――第二のクラウスに成長した。


 忠け――クラウスは、まだ第二学年にもかかわらず、今期の生徒会役員に選ばれたので公私ともに多忙を極めている。

 今日のような学校行事がある時は特に忙しいはずなのに、たぶん必死で仕事をこなして、私のもとにかけつけてくれたのだろう。


 ところで、クラウスの髪はきれいな銀髪なのだが、母は、「黒の方が絶対似合う!」と、無理矢理染めさせている。


 なんでも、「娘が懐いている従者が家族に見つかって連れ戻されたら、かわいそうだから変装させなきゃー!」なんだとか。


 ――べ、別に懐いてなど……。


 

 

 大回廊を抜けたところが大広間グレートホール

 吹き抜けになった天井はゆるいアーチ状になっており、最奥と両側の壁に造られた釣鐘型の窓の光でも一番高いところはうす暗く、金の飾り金具につけられた紋章もはっきりと見えない。


 扉の正面・最奥は手前の床より一段高く、そこには来賓や校長のための豪華な椅子が並べられている。


 時間どおりに入学式がはじまり、来賓として出席していた宰相の父が国王の祝辞を代読する。


 祝辞を読み上げた父は、式が終わるやいなやさっさと帰っていった。


 娘に祝いの言葉ひとつかけない父親に、従者は恨みのこもった目を向ける。


「お父さまは『わーかーほりっく』だから、仕事に戻ったのよ。いつものことでしょう?」



 母によると、父は呼吸をしなくても生きていけるが、仕事をしないと死んでしまう変種の生き物『わーかーほりっく』なんだとか。

 

 母は現王の第一王子だったルーカスさまに婚約解消された直後、同じ学年で同じく生徒会役員だった父と結婚した。


 非生産的な事象には全く興味を示さない父だが、母のことは「わたしの事務処理速度についてこられる得難い人材」と、高く評価していたらしい。

 


 そのルーカスさまは学園卒業の八年後、式典に出席するために訪れていた隣国で不慮の事故に遭い亡くなった。

 また、王子に随行していた学園時代からの取り巻き――将来の側近候補たちも主と命運を共にしたという。


 在学中は王子の取り巻きのひとりと目されていた父だが、


「あのバカス……(げふんげふん)……ルーカスたちとは同じ生徒会役員だっただけで、取り巻きだったわけではない。(あんなバカとつるむわけないだろ?)あいつらは女の尻ばかり追いかけて怠けていたから、やつらが放棄した仕事がたっぷりあって、あの頃はとても充実していた」


 ――と、黒い笑みを浮かべつつ教えてくれたことがあった。



 そして、私の婚約者は、そのルーカス王子の忘れ形見であるラインハルトさま。


 ラインハルトさまは現国王の孫で、唯一の直系男子。

 だが、なぜか『殿下』の称号をつけて呼ぶことは許されていない。

 

 あまり公にできない事情があるらしいワケアリの婚約者は、どうやら私のことを嫌っているようだ。


 はじめて引き合わされた六年前から、ラインハルトさまは常に不機嫌そうな顔で、ロクに話しかけてもこない。

 当然、誕生日にプレゼントをもらうことも皆無で、このままでは婚約破棄になる可能性は極めて高い。


 個人的には母の予言する五年後――卒業記念パーティの時ではなく、少しでも早く縁を切りたいくらい私の心は冷めきっている。


 


『おやつ』って不定時法の八つ時に食べる軽食が語源ですよね。

 こんなヨーロッパチックな世界に不定時法があるんかい?


 2話目にして、もうエタりそうじゃ~。

 





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