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戦鬼と呼ばれた男、王家に暗殺されたら娘を拾い、一緒にスローライフをはじめる(書籍化&コミカライズ作)  作者: ハーーナ殿下
【第2章】学園都市編

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第39話:家のリフォーム

 礼拝堂裏での事件から数日が経つ。

 あれ以来、マリアの学園生活は特に事件もなく順調。

 今朝もマリアは元気よく朝食を作っていた。


「いただきます」

「「「いただきます!」」」

『ワン!』


 朝ご飯ができたので、全員で食べ始める。

 丸いデーブルに、オレと中心にしてマリア、エリザベス、リリィが席に付いていた。

 子犬のフェンは床が特等席だ。


「ん? このスープ。美味いな」


 スープを飲んでオレは思わず声をあげる。

 シンプルなスープだが、今までの味付けと違う味わいだったのだ。


「それはリリィお姉ちゃんに教えてもらって、マリアが作ったんだよ!」


 なんとマリアが作ったスープなのか。

 自分の娘の料理の腕が上がったことに、二度目の感動をする。


「マリア様は物覚えがいいので、教えがいがあります」


 この家に引っ越してきてからリリィが、マリアの料理の先生だった。

 リリィは聖女時代に、修道女たちに女性としてのたしなみも教わっていたという。

 特に料理はリリィ本人も好きで、進んで勉強していた。


 そのリリィが教えてくれるお陰で、最近はマリアの料理の腕がどんどん上がっていた。掃除や洗濯などの家事も、リリィに習っていた。


「色々と悪いな、リリィ」


 オレも傭兵流の家事なら、マリアに教えることは出来る。だが女性が覚えるべき家事は、傭兵流とは違う。

 だからリリィの心遣いに感謝していた。勉強だけではなく、女性としてもマリアは成長している。


わたくしの命はオードル様に救っていただきました。だから、この程度の恩返しは苦ではありません」


 リリィも聖女を止めてから、生きがいを探していた。マリアに家事を教えることによって、本当の生き方を見つけたという。


 それを差し引いても、リリィには感謝だ。


「わ、私だってマリアに色々と教えているぞ、オードル!」


 大人しく朝食を食べていたエリザベスが、急にアピールをしてくる。何かリリィに対抗しているのであろうか。


「勉強の復習とか運動とか、ちゃんとマリアに教えているぞ!」

「エリザベスお姉ちゃんの教えかた、分かりやすいから、マリア好きだよ!」


 お嬢さま育ちのエリザベスは家事が苦手。だが勉強や身体能力はかなり高い。

 そのため家ではマリアの勉強と運動の家庭教師をしているのだ。


「ああ、お前にも感謝しているぞ、エリザベス」

「おお、そうか! そうか! 嬉しいぞ、オードル!」


 感謝されてエリザベスは満面の笑みを浮べる。

 先日の礼拝堂の裏でも、マリアは驚異的な運動神経を見せていた。あれもエリザベスの運動の教えの成果かもしれない。


(だが、マリアがエリザベスみたいになるのか……)


 エリザベスも悪い少女ではない。

 公爵令嬢として学があり、女性としての教養もある。王都で猫を被っていたエリザベスは、舞踏会でも男性貴族にモテていた。


(しかし、エリザベスみたいに剣一筋に生きていくのは……ちょっとだな……)


 エリザベスの本質は剣に生きる女剣士である。

 何しろ戦鬼と呼ばれていたオレに、いきなり斬りかかって腕試してきた少女だ。客観的に見ても普通ではない。


 自分の娘がそんな風に成長していくのは、少し不安に気がする。エリザベスの運動も教育も、ほどほどにしてもらおう。


『ワンワン!』


 お前のことも忘れていないぞ、フェン。

 いつもマリアと仲良く遊んでくれて感謝している。

 歳の離れたエリザベスとリリィとは違い、二歳のフェンの精神年齢はマリアに近い。

 家でもいつも楽しそうに遊んでいるのだ。


 さて、朝食も終わったのでお茶タイムとするか。

 今日は安息日で学校と仕事もない。全員でゆっくり出来る一日なのだ。


「そういえば、この家に何か欲しいものはないか?」


 食事を終えた、全員に尋ねる。

 この家に引っ越してきてから数週間が経つ。

 暮らしている中で、何か欲しい機能や家具がないか? 


わたくしは特に希望はありません、オードル様。素敵な家なので、毎日が感動です」


 リリィは今まで大聖堂の冷たい部屋に住んでいた。だから不満な点は特にないという。


「ですが、少しだけワガママを言えるのなら……“お風呂”が欲しいです」


 この大陸では風呂は特殊な習慣である。

 大都市では蒸し風呂の共同サウナが一般的。この屋敷にあったのも小さなサウナ部屋だけだった。

 ちなみに田舎は小川で水浴びしたり、井戸水で身体を拭くのが普通。


「実はわたくしの故郷では、お湯を溜めるお風呂が主流でした……」


 リリィが五歳まで育った故郷は、暖かいお湯“温泉”の産地だったという。

 だから幼い時は暖かい風呂に入って育っていた。


 だがこの大陸では一般的には風呂の習慣はない。だから懐かしいのであろう。


 なるほど、風呂か。

 オレも傭兵として大陸を旅していた時、利用した時がある。

 たしかに風呂はいいものだった。


「よし、今日は風呂を作ろう」


 今日は特に予定はない。

 リリィのアイデアを受けて、家に風呂を作ることにした。


 ◇


 その日の夕方になる。

 風呂は無事に完成した。


「これが風呂だ。後でお湯は入れる」


 完成した風呂を、みんなに披露する。


「すごい、パパ! おふろはじめて見た!」

『ワン! ワン!』


 マリアとフェンは大喜びしていた。

 使い方が分からないので、空の湯船に入って遊び始める。


「まさか、たった一日で完成させるとは……相変わらずだな、オードル」


 エリザベスは苦笑いしていたが、今回の風呂はそれほど難しい造りではない。

 何しろここは王国でも第三の都市ルーダ。材料は探せばいくらでも大きな商店に売っている。


「湯船は木造にした。耐水もある木のなので、お湯を入れても大丈夫だ」


 街の下町にある材木屋で、大きな丸太を買ってきた。

 適当な大きさにカットして、中身をくり抜いて湯船にしたのだ。

 五人くらいは同時に入れる広さである。


「木のいい香りだね、フェン!」

『ワンワン!』


 湯船の中の二人が喜ぶように、木のいい香りがしていた。お湯を溜めたら、もっといい香りが広がるであろう。


「あと、お湯はこの部分で沸かす。お湯の温度も井戸水で調整できる」


 湯船の隣に湯沸しの機器を作っておいた。

 水は庭の井戸から引いてきて、まきで温めてお湯にする方式。この風呂の設計図は傭兵時代に、とある地方で学んでいたものだ。


 ちなみにお湯を沸かす機器には、鉄大蛇てつだいじゃの外皮も使っている。耐水性で耐火性の性質を、今回は最大限に利用したのだ。


「お湯を溜める機能は、使いながら今後も改造していく。最初は試作品として入ろう」


 今日作ったのは湯船と、簡易的にお湯を沸かして流し込む機能。

 できれば、もっと手軽にお湯を沸かしたい。使いながら改造していくことにした。


「ありがとうございます、オードル様……」


 リクエストをしたリリィは一番感動していた。

 完成した風呂を見つめて、うっすらと涙を浮べている。


「オレも入りたいと思っていたから気にするな。ところで、リリィ。なんでそんな薄着なのだ?」


 風呂を目の前に感動しているリリィは、かなり薄着だった。下着に近いくらいに薄着である


「これは故郷でのお風呂着を模したものでした。もしかしたら迷惑でしたか、オードル様?」


 なるほど、そうだったのか。

 リリィの故郷では風呂前は、そういう格好をするのか。故郷の風習なら仕方がない。


 だがリリィは15歳と年齢にそぐわない、女らしい豊な身体つきをしている。

 オレは女として見ていないので問題はない。

 だが何となく目線のやり場にこまるのだ。


「そうだ、リリィ! あなたのその恰好、私も気になっていたのだ! ま、まさか……オードルを誘惑しているつもりなのか⁉」


 何やら急にエリザベスが、リリィに噛みついていく。

 リリィの身体に比べて、エリザベスは慎ましい身体つきをしている。どうやらそれを気にしているようだ。


「あら、エリザベス様。これは私の普通の格好ですわ。でも、オードル様が望むなら、私はこの乙女の全てを捧げるつもりです」

「ちょっ、と、リリィ⁉ いきなり、何てことを⁉ わ、私も負けている場合ではないぞ、これは!」


 リリィに対抗して、エリザベスも薄着になろうとする。

 だが、ハッと我に返って、顔を真っ赤にする。


「マリアも、おようふく、ぬぐ!」

『わん! わん!』


 そのどんちゃん騒ぎに、マリアとフェンも加わる。

 二人とも上着を脱いで、下着姿になろうとする。


 というか……フェン、お前は毛を脱ぐことはできないであろう。

 もしかしたら、白魔狼族には何かの秘密があったのか? いや……無かったらしい。


「やれやれ……騒がしくなったな。さあ、お湯を沸かすぞ。手伝え、お前たち」


 この後は大騒ぎのまま、お湯を溜めて風呂に入ることにした。

 もちろん男女は別々。

 エリザベスは強引にオレと入ろうとしたので、手刀で気絶させておいた。


「ふう……いい湯だな。苦労して作って大正解だったな……」


 こうしてオレは一人で大きな風呂を満喫するのであった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] スローライフ系で定番となっている風呂作成も、オードルさんならあっさり完成か… ほんと「相手にビビられると困る仕事」以外は何でも出来る男だな
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