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戦鬼と呼ばれた男、王家に暗殺されたら娘を拾い、一緒にスローライフをはじめる(書籍化&コミカライズ作)  作者: ハーーナ殿下
【後日談】

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アフターエピソード7:娘を守る影の者

 これはオードルとエリザベスが、帝都を離れていた時の話。


 《オードル聞こえる⁉ 大変だワン!》


 オレはオードル傭兵団の砦に滞在していた。

 フェンからの緊急の遠距離念話が入る。

 大事件が起きたという。


 《マリアが何者かに、さらわれちゃったワン!》


 帝都の屋敷にいたマリアが、何者かによって誘拐されたのだ。

 フェンも奮戦して抵抗したが、防ぐことが出来なかったという。


 《アイツ等、変な術を使ってきたワン!》


 何でも相手は“人”ではなかったという。

 誘拐犯は実態がない黒い人影。

 上位魔獣すらも一撃で倒せる、フェンの牙が通じない相手だという。


 《そうか、フェン。ニースとリリィは無事か?》

 《二人は無事ワン! 相手の目的は、マリアだったみたいワン!》


 残る二人は無事だった。

 なるほど黒い人影の目的は、最初からマリアが一人だけか。

 音もなく屋敷に忍び込み、一気にマリアを誘拐していったのだ。


 《どうしよう、オードル……》

 《フェンはそのまま、ニースとリリィの警護をしてやれ》

 《分かったワン。でもマリアは……》


 オレとエリザベスがいる場所から帝都まで、どんなに急いでも二日はかかる。

 その間のマリアの身を、フェンは心配していた。


 《大丈夫だ、フェン。マリアの警護は、“アイツ”にも依頼してある》

 《“アイツ”……もしかして……ワン?》

 《ああ、そうだ。頼りになる奴だ》


 帝都を離れる前に、ある人物に依頼をしていた。

 依頼内容は『有事に備えてマリアたちの警護』だ。

 その人物は必ずマリアの足取りを、今は追っているであろう。


「さて、任せても大丈夫だが、やり過ぎだけが心配だな」


 こうしてオレは朗報を待つことにした。


 ◇


 マリアが誘拐されてから、少しだけ時間が経つ。


 彼女が誘拐された先は、帝都の薄暗い地下にある礼拝堂。

 ここは普通の礼拝堂ではない。禍々しい神を崇拝する邪心教会だった。


 漆黒の祭壇の上にマリアがいた。

 誘拐されてきたばかりで、横たわっている。

 外傷はなく、何かの薬で眠らされている状態だ。


「くっくっく……こんな小娘が世界の命運を握っているじゃと。未だに信じられんな」


 そんなマリアを見つめながら、高笑いしているのは黒衣の司祭。

 邪教教会の最高司祭だ。


「だが、これで“偉大なる我らの神”が復活する! この世界に、本当の混沌が訪れのじゃ!」

「「「おぉおおお!」」」


 最高司祭に反応して、礼拝堂にいた者たちの声が響き渡る。

 彼らは邪教教団の暗黒騎士団。

 大陸中の各地に潜んでいた信者で、この日のための地下教会に集結していたのだ。


「「「真なる混沌を! 真なる混沌を!」」」


 地下組織とはいえ、邪神教団の勢力は大きい。

 何しろ各国の騎士団長の中や、傭兵の中にも信者は多い。

 ここに集結しただけでも小国を攻め落とせる、危険な武装集団なのだ。


「くっくっく……邪神様が降臨した暁には、この世界は我らの者じゃぁああ!」

「「「ぉおおおお!」」」


 彼らの狙いはマリアを器として、自分たちの神を降臨させること。

 その後は各国に宣戦布告。世界を混沌と、混乱の世にするのが目的なのだ。


「それではぁあ、これより“偉大なる神”の降臨の、儀式を始めるぅうぞ!」


 最高司祭の興奮は最高潮に達していた。

 横たわるマリアに向かって、邪神の像を近づけていく。


「んっ⁉」


 だが次の瞬間だった。

 大事な邪神像が消えていたのだ。


「なっ……⁉」


 邪神像は消えたのではない。

 最高司祭の足元に、転がり落ちていたのだ。


 ――――手首から切り落とされた、最高司祭の右手と共に落ちていた。


「なっ⁉ なっ⁉ なっ⁉」


 目の前のことを理解できずに、最高司祭は混乱する。

 そして邪神の器となるマリアに、神の助けを求めようする。


「それ以上、一歩でもマリアに近づかないで」


 いつの間にか“一人の女”が立っていた。

 黒装束に身を包んだ、黒髪の女だ。


「マリア、私が来たから、もう大丈夫よ」


 現れたのはカスミ。

 オードルから事前に、依頼を受けていたのは彼女だったのだ。


「マリア、もう大丈夫よ」


 カスミは守るために、ここに飛び込んできた。

 依頼を受けた者として。


 そしてマリアを産んだ女親として。

 遠くから見守っていきた存在なのだ。


「こ、殺せ! この異教徒を殺して、神の器を取り返すのじゃ! うぐっ⁉」


 そう叫んだ最高司祭の頭は、胴体から音もなく切り離された。

 カスミが切り裂いたのだ。


 彼女の裏の顔は、大陸有数の暗殺者。オードルですら信頼を置く、武の者なのだ。


「さ、最高司祭様がぁ⁉」

「殺せ! あの異教徒を八つ裂きにしろ!」


 集まっていた邪教騎士団は、剣を抜く。

 危険な侵入者でありカスミを、抹殺するために突撃していく。


「言ったでしょ。マリアに近づかないで……って」


 次の瞬間、邪教騎士たちが倒れていく。

 カスミの目にも止まらぬ暗殺術で、次々と首が飛ばされていったのだ。


 先ほどの最高司祭と同じように、死体の出血は皆無。

 理由は彼女の手に持つナイフ。

 これは古代文明の遺産。血を出すこともせずに、鎧ごと切り刻める魔道武器なのだ。


「「「ヴぁあああああ!」」」


 仲間の異様な突然死。

 それでも邪教騎士団の突撃は止まらない。

 同志の死体を乗り越えて、盲信者のように斬り込んでくる。


「ふう……本当は無益な殺生は、もう止めたんだけど……今日はマリアを守るためだから」


 カスミは深いため息をつく。

 本当の過去、彼女は東方で暗殺者として育てられた。

 人を殺すことには、何の罪悪感もない人生だった。


 だが魔女に乗っ取られて、人生が激変。

 血の繋がった子が出来たこと……影ながら守る者が出来たのだ。


「マリアを守るためなら、一人も残さないわよ!」


 こうしてカスミの激戦が幕を上げる。


 二度と邪神の器として狙われないよう、教団ごと殲滅するのであった。


 ◇


 それから二日が経つ。

 オレはエリザベスと帝都に到着した。


 マリアが心配になり、砦から急いで帰還したのだ。

 帝都の屋敷にすぐに帰宅する。


「パパ、お帰りなさい!」


 屋敷の玄関で、笑顔のマリアが出迎えてくれる。

 どこにも外傷はなく、精神的に落ち込んだ雰囲気もない。

 どうやら無事だったようだ。


「元気にしていたか、マリア?」

「うん、元気だったよ! そういえばカスミさんが、今日も遊びに来てくれて……あれ? いなくなっている?」


 マリアは後ろをキョロキョロしながら、不思議そうにしていた。

 先ほどまで家にいたカスミの姿が、どこにもないのだろう。


「もしかしたら、カスミは急用を思い出したのかもな」

「なるほど、そうかもね! でもカスミさんと、もっと遊びたかったな……」


「それならパパが今度会った時に、伝えておく」

「うん! ありがとう、パパ!」


 挨拶を済ましたマリアは、ニースたちのいる奥の部屋に戻っていく。

 オレは玄関に階段に、死角へと近づく。


「マリアを助けてくれて感謝する、カスミ」

「感謝は無用よ。仕事だったからね……」


 気配を消して隠れていたのは、恥ずかしそうにしているカスミ。

 オレが帰宅して気まずくなって、ここに姿を消したのであろう。


「誘拐した連中は、邪神教団という連中よ。マリアは神事の器として、狙われたみたい」


 アイラから今回の報告を聞いていく。

 最高司祭は邪神の怪しげな力を使えたと。

 マリアを誘拐する時も、その力を利用したという。


 “稀代なる王”の魂の継承者として、マリアは特殊な力を有している。

 おそらく今回の件も、それが要因となっていたのであろう。


「そうか。それなら生き残りを、潰しておかないとな」

「とりあえずは大丈夫かな。私の方で、一通り“潰して”おいたから」


 カスミは一瞬だけ、危険な顔になる。

 これが彼女の裏の顔……暗殺者としての顔なのであろう。


「そうか。それなら別料金も払わないとな」

「いらないわ。マリアを誘拐されたミスは、私にも責任があるし」


 邪神教の司祭の力は、古代文明とは別の領域。

 腕利きある彼女でも、事前に防げなかったのだ。今後は対策を講じておくことにした。


「じゃあ、オードルも帰ってきたことだし、アタシは帰るわね」


 今のカスミの本拠地は、王都のダジル商店。

 しばらくは帝都には来ることはないのだ。


「そうか。前も言ったが、ウチには、いつでも遊びに来い」

「で、でも私が来たら……」


 アイラは下を向いて、歯を食いしばる。

 本当はもう少しマリアの側にいたいのであろう。

 だが彼女が生みの親である記憶は、マリアにはない。


 全てを告白してしまうと、マリアに辛い過去を背負わせてしまう。

 アイラはそんな辛い葛藤に、苦しみながら生きていたのだ。


「先ほどのマリノの言葉を聞いて、お前も分かっただろう? マリアが楽しみにしている」

「わ、わかったわ……気が向いたら、帝都観光に来てあげるわ」


 恥ずかしそうにしながら、アイラは去っていく。

 その顔は先ほどの何倍も清々しい。

 まったく素直になれない女だな、アイツも。


「さて、マリアのことか。オレの方でも片付けておかないとな」


 “稀代なる王”の魂の継承者として、マリアは秘めた力を持っている。

 邪神教団の残党以外にも、じゃあ集団に今後狙われる可能性がある。


 だから事前に危険な芽を、摘んでおく必要があった。

 帝国内の危険な地下組織を、根こそぎ排除する必要があるのだ。


「さて、これから忙しくなるな」


 こうしてオレの帝国での新たなる戦い、地下組織撲滅の戦いが幕を上げるのであった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 誤字が気になるほど多い…疲れてるのかな?
[一言] マリノとか、アイラとか、難しくてよくわからん。 コータのサッカーみたいな話がまた、読みたいので頼みます。
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