表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

127/130

アフターエピソード6:オードル傭兵団 vs 戦鬼オードル(後編)

 現オードル傭兵団の力を試すため、オレは完全武装で砦を強襲。


 砦の奥から姿を現したのは、巨漢の戦士タルカス。

 まるで山のような体躯と、岩のような筋肉の半裸の戦士だ。


(タルカスか……昔よりも更に大きくなったか)


 現れたのは大隊長の一人タルカスだった。

 西方部族出身で団随一のパワーの持ち主。

 巨大戦斧の凄腕の使い手だ。


「お前、何者だ?」


 タルカスは距離を取りながら、こちらを牽制してきた。

 この男はパワーファイターだが、力押ししか出来ない愚者ではない。

 対峙したオレの力量を測りながら、こちらの隙を狙っているのだ。


「オレか? 敵だろう、この場合は」


「でも、お前“普通”でない。昔、団長言っていた。こういう相手、一番厄介だって」


 今のオレは声色を使っている。顔も兜で見えない。

 だがタルカスは明らかに危険な存在だと、こちらを警戒していた。


(ん? やるな、タルカス。時間稼ぎだったのか、今のは)


 新たな気配が、この場に到着する。


 タルカスは牽制しながら、時間を稼ぎしていたのだ。


「ん? 騒がしいと思って来てみたら~、相手はたった一人じゃん?」


 オレの背後から姿を現したのは、一人の女。

 ダルそうな口調な癖の女戦士だ。


(ミュー・ファンか……)


 次に現れたのも大隊長の一人ミュー・ファン。

 辺境の山岳地帯の少数民族で、カラフルな民族衣装を着込んでいる小柄な女だ。


 ダル口調と見た目とは裏腹に、恐ろしい剣術の使い手だ。


「こんな相手に踏み込まれるなんて、どういうこと、タルカスちゃん? オードル団長が知ったら怒るわよ~?」


「油断するな、ミュー・ファン。こいつ普通じゃない。下手したら、大隊長より上の強さ」


「それって、どういうこと、タルカスちゃん? つまり“団長レベル”ってことなの~?」


「……それは、ない。オードル団長、特別だから」


 雑談をしながらも、二人は間合いを詰めてきている。

 見事なものだ。


 こうして相手を油断させるのも、オードル傭兵団の戦い方。

 オレがこいつらに徹底的に仕込んだ、対強敵用の戦法なのだ。


「いつまでお喋りしているつもりだ? 他の援軍が来るまでか? 団長だった“戦鬼オードル”とやらの“レベルの低さ”が、これで丸分かりだな」


 オレはそんな二人を敢えて挑発。

 オレの名を強調して侮辱する。


「こいつ⁉ 愛しの団長を愚弄するなんて、万死に値するんだからぁあ!」

「団長、侮辱、許さない!」


 二人とも昔からオレの名を、大事にしていた。

 怒りに任せて斬り込んでくる。


せん!」

さい!」


 ミュー・ファンとタルカスが挟撃してくる。

 怒りに身をかませたとはいえ、見事なタイミングの攻撃。

 凄腕の戦士ですら防げない。


「最高だな、お前たち!」


 だから攻撃をオレは防御しない。

 二人の攻撃に向かって、自分の両手のハンマーで攻撃し返す。


 そのまま一気に押し返していく。


ぁあああああ!」


 二人を吹き飛ばす。

 嬉しさのあまり手加減を、忘れてしまうほどだ。


「くっ⁉ コイツ、予想以上にヤバイやつじゃん……でも!」


「うぐ……オラたち、負けない。団長のためにも!」


 吹き飛んだミュー・ファンとタルカスは起き上がる。

 もはや自分たちが敵わないことを、彼らも察している。


 だが最後までオードル傭兵団として、果敢に戦おうとしているのだ。


「いいつらだな、お前たち!」


 そんな果敢に二人の勇気に、オレの血がたぎる。

 戦士として魂が甦ったのだ。


 さて、第二ラウンドに移るぞ。

 ここ先はどう向かってくる?


「大丈夫ですか、タルカス殿!」


「我らが来たから、大丈夫でござるよ、ミュー・ファン殿!」


 そんな時、二人の戦士が駆け付ける。


(ピエールとコサブローか……)


 やって来たのは細身剣使いのピエールと、東方のサムライのコサブローの二人。

 いや、二人だけはなかった。


「我らオードル傭兵団に単騎で攻め込んで来るとは、舐めたマネしやがって!」

「兄ちゃん、気を付けて。あの敵、普通じゃないよ」


 続いて駆けつけてきたのは二人。

 双剣使いのベラミーと、重戦士ルーニーの兄弟コンビだ。


「おい、お前たち。相手は一人じゃからって、油断はするんじゃないぞ!」


 そして最後に駆けつけたのは、老剣士ジン。

 八人いる大隊長のうち七人までが、この場に揃ったことになる。


「ジン殿の仰る通り。ここは全員でかかりましょう!」

「「「承知!」」」


 ピエールの提案に従い、七人の大隊長が包囲陣を形成。

 オレを中心にして隙なく包囲。

 七人の刃先から凄まじい殺気が、オレに向けられる。


「七人同時か……面白い!」


 取り囲まれながらも、思わず笑みを浮かべてしまう。

 団長時代だった時ですら、この七人と同時に相手したことはない。


 しかも当時から、コイツらも腕を上げている。

 これから始まる激闘を想像しただけで、全身に血が湧きたつのだ。


「ちょっと! オレっちのことを、忘れてもらったら困るし!」


 その時、八人目の援軍が登場。

 大陸有数の隠密術の使い手であるロキだ。


 これで実質、“大隊長クラス”八人に取り囲まれたことになる。

 こうなったら無傷で脱出することは不可能。


 力づくでもコイツ等をねじ伏せるしかないのだ。


「皆の衆! ロキ殿が来てくれたから、八人で“アレ”をするでござる!」

「そうじゃのう、コサブロー。アレでいくぞ、お前ら!」


 東方の侍コサブローの声に反応して、老剣士ジンが動く。


「対“団長クラス用”の必殺技ね……やってやろうじゃん!」

「オラ、本気でいくど!」


 同じくミュー・ファンとタルカスも連動して動く。

 そして残るピエールとベラミー、ルーニーの三人も動いていく。


 “対オレ強さの持つ敵用の必殺技”だと?

 どんな強力な一撃がくるのか。楽しみ過ぎて興奮が止まらない。


「…………」


 相手の陣形的に、最初に攻撃を仕掛けてくるのはロキだ。

 無言でこちらを見つめている。


 おそらくは八人同時による連携攻撃……いや、全方位からの一斉攻撃であろう。


 さぁ、こいロキ。

 お前たちの今の全力を、オレにぶつけてこい!


「……ねぇ、みんな。この侵入者って……団長じゃない?」


 だがロキは先陣をきることはなかった。

 オレの方を指差してくる。


「「「なっ⁉」」」


 他の七人の動きも、ピタリと止まる。

 全員が目を見開いて凝視してきた。


 ――――完全にバレしまったのだ。


 ふう。

 こうなったら知らないふりをするのは不可能。


「やれやれ……“解除ギア・オフ”」


 武装を解除。

 素顔を晒した状態に戻る。


「「「団長!」」」


 団員たちの叫び声が、砦中に響き渡る。


 次の瞬間、武器を投げ捨てた大隊長たちが、オレの元に駆け込んでくる。

 戦士たちが並のように、押し寄せてきたのだ。


「団長!」

「団長!」


 中でも特に大変なのは、タルカスとルーニーの抱きつき。

 巨漢の戦士の二人に挟まれて、オレはサンドイッチ状態だ。


「ちょっと、そこのデカブツ、二匹、そこをどきなさい! アタイと団長ちゃんの感動の再会をじゃまするな~!」


 更にその二人にミュー・ファンの蹴り攻撃が加わる。


 特にタルカスとミュー・ファンは前回のバーモンド領で、オレに再会していない。

 その置いてかれた分だけ、感動の押し寄せが凄いのだ。


「「「団長!」」」

「「「団長!」」」


 それ以外にも砦にいた数百人の団員が、押し寄せてきた。

 オレの周囲はとんでもない状況になる。


「はっはっは……お前ら、少し落ち着け。オレは今日ここに世話になる。ゆっくりと話を聞いてやる」


 タルカスとミュー・ファン以外にも、一般の団員はオレとは、約三年ぶりの再開。

 押し寄せてくる団員の顔からして、誰もが積もる話があるのであろう。


 今宵は酒でも飲みながら、ゆっくりと話を聞いてやる予定だ。

 そうだ、エリザベスも呼んで来ないとな。


「さて、誰から話を聞いたものか……」


 こうしてオレは昔の部下たちとの再会を、楽しむもことにした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 新作は楽しみだ! [気になる点] 新作にかまけて、こっちが疎かにならないことを願うばかり…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ