表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦鬼と呼ばれた男、王家に暗殺されたら娘を拾い、一緒にスローライフをはじめる(書籍化&コミカライズ作)  作者: ハーーナ殿下
【最終章】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

119/130

第119話:魔女と呼ばれていた者

 空中遺跡での魔女との激戦から、日が経つ。

 大事な家族であるマリアとニースを助け出し、オレたち一家は王都に戻ってきた。


 そんな中、一人でいたオレの前に、かつて“黒髪の魔女”だった女が姿を現した。


「久しぶりね、オードルさん」


「“オードル”の呼び捨てで構わない。あの空中遺跡、以来だな……」


 相手の名前を呼ぼうとして気が付く。

 そういえば、この者から名はまだ聞いていなかったことを。


「カスミ……私の本当のカスミよ、オードル」


「そうか、カスミか」


 この女……カスミは、マリアを取り戻した後、すぐに意識を取り戻した。


 オレが闘気術で治療をして、事情を聞こうとした直後、カスミはいつの間に姿を消していたのだ。


 それ以来、一度も姿を見せていない。

 今はあの時の魔女のローブではない。

 普通の町娘のような格好で、黒髪も結っている。


「オレたちのことを調べて、王都まで来たのか?」


「まぁね。私の本業は“こっちの方”だからね」


 カスミは指で“鍵開け”のサインを示す。

 それが現すように、彼女の本業は盗賊や探索者なのであろう。


 魔女の話でも『古代遺跡を探索していた時に、魔女のネックレスも発見した』と聞いていたのだ。


「なるほど、本業か。先ほどの隠密といい、かなりの腕前だな」


「そう? まぁ、東の方でも、そこそこ名は知れていかからね、私も」


 カスミは謙遜しているが、彼女の隠密術はかなりのもの。

 立ち振る舞いを見ているだけで、凄腕だと推測できる。


 特に印象深いのは、黒髪の魔女として戦った時。

 オレとガラハッドを出し抜いて、肉体の技術……つまりカスミの技術で、ネックレスを移動したのだ。


 おそらく戦闘能力も高いはず。

 ロキと同等クラスの腕前の持ち主であろう。


「その様子だと少しは落ち着いたか?」


「そうね。空中遺跡を逃げ出した後、……あれから、ずっと一人でいたから、少しは心の整理が出来たわ……」


 意識を取り戻した直後、カスミはかなり動揺していた。

 あの時の態度から、魔女の時の記憶が、あったのであろう。

 だから突然、姿をくらましてしまったのだ。


(それも仕方がないな……)


 オレが知った限り、カスミの人生は壮絶なもの。


 魔女のあの話では……今から九年以上前が、全てのことの始まり。


 探索者カスミがまだ少女の年頃の時、古代遺跡で魔女のネックレスを発見という。

 直後、魔女に身体を乗っ取られてしまう。


 その後は身体の全てを奪われてしまう。

 “魔女”という別人格で、この九年間は不遇な人生を過ごしてきたのだ。


「あっ、でも、勘違いしないでよ、オードル!」


 オレの心情を察したのであろう。

 カスミ慌てて自分の心境を訂正してくる。


「私は幼い時から腕一本で生きたのよ。あんな古代の魔女に人格を乗っ取られても、探索者として後悔なんてしていないわ! だから同情も不要よ」


「そうか、わかった」


 カスミは強い女であった。

 自分の人生の魔女の乗っ取られたことを、後悔していない。

 むしろ危険と常に背中合わせの探索者。

 職業としての誇りさえもっていた。


「まぁ、でも、今回の場合は、さすがの私の少し動揺して、あの時は逃げ出しちゃったけどね……だって魔女だなんて……」


 治療してやった直後、カスミは酷く動揺していた。

 事情を聞きだす前に、彼女はどこかに姿を消してしまったのだ。


「やっぱり魔女の時の記憶は、残っていたのか?」


「そうね。薄暗いもやの中で、夢を見ていた感覚だけど、魔女の時の記憶はハッキリと覚えているわ。あと魔女の思考も……」


 やはり、そうだったか。

 マリアに聞いた時と、同じ答えだった。


 だが、時間が短かったお蔭もあったのであろう。

 マリアには魔女の記憶はほとんど無かった。


「一つ聞く。あの魔女は何が目的だったんだ?」


「魔女の目的はただ一つ……あの空中遺跡を完全に起動させること。ただ、それだけよ」


「何だと、そのためにマリアやニースを?」


 信じられない話であった。

 オレの予想では、遺跡を起動させて古代文明の復権。

 もしくは大陸の征服や破壊……その辺りの最終的な目標はあるのかと思っていたのだ。


「あの魔女……あの女は古代文明が栄えていた時は、天才的な賢者だったみたい。でもある日突然、文明が謎の崩壊をして、咄嗟とっさに自分の魂を、ネックレスに封じ込めたの……」


 カスミは魔女の古代の記憶を語り出す。


「彼女がその時、記憶と共に一緒に封じ込めたキーワードが“あの空中遺跡”の場所……あそこは彼女の研究所であり、家族との憩いの屋敷だったみたいなの……」


 乗っ取られていた時に、断片的に古代の記憶も共有しているのだ。


「つまり魔女は自分の“家”と再建しようとしたのか?」


「簡単に言うと、そうね。たぶん彼女は寂しかったのかもね……何しろ目を覚ましたら気の遠くなるような後世。しかも家族はおろか、古代文明人は誰も残っていない。だから思い出の家を再起動しとしたのかもね?」


 アイナの憐れむように、魔女のことを話す。

 精神が同化していた彼女にとって、魔女に共感しているのかもしれない。


「あっ、だからと言って、魔女に同情する必要はないから、オードル! いくら自分の“家”を再建するためだって言っても、やったことは行き過ぎだったし」


「そうだな。どこかで道を誤ったんだろうな」


「そうね……きっとネックレスに記憶を封印する時に、人としての感情を残せなかったのかもね……」


 たしかに魔女の言動には、人としての感情が欠落していた。

 機械の様に冷徹だったと思えば、窮地に陥ると激怒して錯乱。

 まるで幼い子どものような感情の起伏だった。


「ところでオードルたちは空中遺跡を、あの後どうしたの?」


「地上の方の転移装置を破壊して、上の遺跡は、あのままにしておいた」


 リッチモンドと話し合った結果、空中遺跡は破壊しないことにした。

 あれだけの質量の浮遊物を破壊した時、大陸に致命的なダメージが広がる可能性があるという。


 だから唯一の登り口である、地上の転移装置を完全に破壊。

 二度と誰も上に行けないようにしたのだ。


「それは賢明な判断だったかも。魔女の記憶でも、空中遺跡もあのままだと無害。未来永劫ずっと、同じように空中を漂っているだけみたいだし」


 カスミの知識を聞いて安心する。

 リッチモンドとオレの決断は正解だった。


 転移装置も無しに、あの高さにある遺跡には到達することは、今の文明では不可能。

 つまり空中遺跡は無害の景色と化したのだ。


「ちなみに、同じ様に危険な古代遺跡は、他にはないのか?」


「うーん、魔女の把握していた範囲だと、今のところは無さそうな感じ。でも古代文明の遺跡は大陸中に散らばっているから、もしかしたら知らない場所にも……」


 魔女は古代文明人の一人の賢人にしか過ぎない。

 他の古代文明人が残した遺跡が、地中や別の空域にあるかもしれないのだ。


「そうか。他の物が見つかった時は、その時に考えればいいだけ」


「そうね」


 今のところ王国近隣の遺跡に危険はない。

 しばらくは安心して暮らしていけるであろう。


「とこでカスミ、お前はこれからどうするつもりだ?」


「前に住んでた場所……私の故郷は、ここから帰るにも少し大変なのよね」


 黒髪のアイナの故郷は、大陸の極東だという。

 反対側の王国から、足の速いカスミでも急いでも一年以上はかかる。


 魔女の乗っ取られた時は、転移の術で一気に、この地域まで移動してきたという。


「とりあえず、しばらくは、この辺でゆっくり暮らしていく予定……かな」


「そうか。それもいいかもしれないな」


 魔女に九年間を奪われたとはいえ、カスミはまだ若い年代。

 彼女ほどの腕があれば、どこでも暮らしていける。

 これからの人生を、自分のために生きていくのも良策であろう。


「まぁ、こっちに残るのは……気になることがあるのが、一番の理由なんだけど……」


「マリアのことか?」


「そう……ね。ほら、一応、私が産んだみたいだから……」


 カスミは自分の腹を触り、複雑な表情を浮かべる。


 彼女とマリア、魔女の関係は複雑を極める。


 今から約九年前、カスミの身体を乗っ取った魔女は、空中遺跡を起動するため“鍵”を欲した。


 そのため必要だったのは古代文明の王“稀代なる王”の魂を継ぐ者……オレの血液を極秘に入手。

 おそらく傭兵時代のオレを、戦場で見張っていたのであろう。


 血を入手後は自分の身体……カスミの身体を使って、赤子を妊娠。

 産まれたのがマリアなのだ。


「率直に聞く。今カスミはマリアに対して“母親としの感情”はあるのか?」


「うんうん……正直なところ今はまだ無い。だって、産んだ後に直接世話していたのは、魔女の精神の方だったし。それに彼女は“人としての感情”が欠落していた……だから……」


「そうか」


 魔女はマリアのことを道具として扱っていた。

 産んで育てていたのも、鍵として覚醒させるため。

 だから精神を共有していたカスミにも、母親としての感情、母性が湧かないのだ。


「それにホラ、あの子は……マリアは“今”が幸せそうだし?」


 ちょうど奥の部屋から、マリアの笑い声が聞こえてきた。

 おそらくニースとフェンと遊んでいるのであろう。

 無邪気で本当に楽しそうな笑い声だ。


「運よく、母親……魔女と私の記憶も、薄れているみたいだし……」


 マリアの幼い時記憶は、魔女によって消されていた。

 魔女に乗っ取られた後にも、記憶の消去はあった。

 黒髪のカスミのことを、今のマリアはまるで覚えていないのだ。


「だから“こんな私”が近くにいない方が、あの子も幸せなのよ、きっと……」


 だからカスミは決意していた。

 母親としてマリアには名乗り出ないとを。


 黒髪の魔女として行ったことに対して、彼女なりの責任を取ったのだ。


「そうか。決意は分かった。だが気が向いたら、いつもで我が家に遊びに来い、カスミ」


「えっ⁉ でも、私は……」


「もちろん“マリアの生みの親”としでない。そうだな……オレの客人“カスミ”として、たまに我が家に遊びにこい」


 マリアに対して愛情が皆無というのは、カスミの嘘であろう。


 何しろ魔女に乗っ取られていたとはいえ、自分の腹を痛めて産んだ実の娘。

 娘の成長を見たくない親は、この世にはいないはずなのだ。


 それに客人として我が家に来たのなら、マリアも気が付ない。

 これは誰もが幸せになる提案なのだ。


「でも、マリア以外の皆が……」


「大丈夫。我が家の女衆は、ああ見えてタフだ。お前が遊びに来ることは、間違いなく大歓迎だ。約束する」


「うん……そう……それなら、たまに遊びに来るは。客人としてね」


 カスミは吹っ切れた顔になる。

 きっと彼女の中でマリアのことは、一番悩んでいた問題だったのであろう。

 無事に解決して清々しい顔になる。


「ふう……これで、本当の意味で、私も再スタートできるわ」


 カスミは笑みを浮かべる。

 先ほどのまでの表面的な笑顔ではない。

 初めて見せる、カスミという本当の笑顔であった。


 さて、これで大きな問題も解決できた。

 あとは、マリア以外の家族にも説明しておかないとな。




「ねえ、オードル!」


 そんな時である。

 エリザベスの声が近づいてきた。


「もしかして、誰かと話しているの? さっきから……」


 勘のいいエリザベスは、カスミの微妙な気配に気がついたのであろう。

 不思議そうに部屋に入ってきた。


「……って、アナタは⁉」


 そしてカスミの顔を見て、腰の剣に手をやる。

 何しろ前に顔を合わせたのは、黒髪の魔女と対峙した時。


 今は安全だと分かっていても、エリザベスは身体が反応してしまったのだ。


「あら、こんにちは。エリザベスさんだったかしら?」


 一方ではカスミの方は余裕の態度。

 年齢が上なことに加えて、探索者として修羅場をくぐって来た経験があるのだ。


「ちょ、ちょっと、オードル。どうして、この女……彼女がここにいるのよ? それにいつの間に?」


 エリザベスが驚くのも無理はない。

 カスミは空中遺跡で急に姿を消して、今も急に姿を現したのだ。

 状況がつかめていない。


「説明は後でゆっくりしてやる。簡単に言うと、この女……カスミは今後、客人として、我が家にたまに遊びに来ることになった」


 今のカスミが無害なことは、エリザベスも知っている。

 今後はゆっくりと友好を深めていけばいいであろう。


「客人としてウチに……オードルが許したのなら、それは別にいいけど。ん⁉ ちょっと、待って! まさか、アナタもオードルのことを狙って⁉ もしかして、押しかけ女房としてオードルに⁉」


 エリザベスは突然、いつもの妄想モードに突入。

 顔を真っ赤にして、何やらよく分からないこと口走り始める。


「あら、それもいいアイデアね? 私がお嫁さんになったら、全てが丸く収まるわよね。ねぇ、オードルも、そう思わない?」


 カスミは悪ふざけで、エリザベスの話に乗っかる。

 オレの身体を寄せて、妖艶な笑みを浮かべる。


 元のカスミは明るく、軽い性格なのであろう。

 横で聞いているオレも、冗談だと分かる。


「オ、オ、オードルのお嫁さんに、なる……ですって⁉ 聞き捨てならないわね! この女狐め!」


 だが妄想モードのエリザベスは、冗談を本気で受け取る。


「私だけ負けてらないわ! そうだわ! 聞きなさい! なんと私はオードルの婚約者だったこともあるんだから! それに実質的には一家の長女! そうよ! 貴方よりもずっと太い絆で結ばれているのよ、私とオードルとは!」


 エリザベスは顔を真っ赤にしながら大興奮。

 手をバタバタさせながら、オレからカスミを突き放す。


「あら? 一家の長女ということは、もしも私がオードルのお嫁さんになったら、義理の娘になるわね。よろしく、エリザベスさん」


「あなたの娘ですって⁉ 聞き捨てならないわ! こうなったら勝負よ! 表に出なさい! 前に私に言ったわ! オードルは強い女が好きなのよ!」


 妄想を突き進むエリザベスと、冗談で返すカスミ。

 二人のやり取りはどんどんエスカレート。

 エリザベスはついに剣を抜いて、決闘を申し込む。


「オードルは強い女が好きなの? それなら話が早いわ。決闘はすぐ終わっちゃうかもよ。だって今の貴女のレベルじゃ、私に触ることすら出来ないと思うわ?」


 対するカスミも、どこからともなくナイフを取り出す。

 腕に自信があるのであろう。

 エリザベス相手に余裕の態度だ。


「むっきー! 頭にきたわ! こうなったら私の最強の奥義で、あんたを後悔させてやるわ!」


「早くきなさい、お嬢ちゃん。望むところよ」


 二人は剣先を向け合う。

 狭い部屋で、女同士の決闘が幕を上げようとしていた。


 だが、このままでは部屋がメチャメチャになってしまう。


「ふう……いい加減にしろ、お前たち!」


 被害が出る前に、二人の頭の上に、ゲンコツを落とす。

 闘気を込めたかなりの威力。


 突然のことに、二人は失神寸前。

 目の前に星が飛び、その場に座り込んでしまう。


「さて、これで大人しくなるな」


 仲良くなるのは良いが、家の中を壊すのはダメだ。


「パパー? 今のなんの音?」


 そんな時である。

 マリアの声が近づいてきた。

 騒ぎを耳にして、確認にくるのであろう。


「はっ! マリア⁉」


 マリアの声を耳にして、先にカスミが我に返る。


「まずい……じゃあ、今日のところ私は消えるわ、オードル!」


 そして気まずそうに、窓の外に身を乗り出す。

 マリアに見つかる前に脱出するつもりなのだ。


「マリアに会わなくていいのか?」


「今はまだ我慢しておくわ。それに私も九年間の青春を、取り戻さないとね!」


 強がっているが、カスミはケジメをつけているのであろう。

 自分を戒めているのだ。

 大人の女として恥ずかしくない自分になってから、マリアと顔を会わせることを。


「そうか。元気になったら、いつでも遊びに来い」


「しばらく王都にいるから、そうさせてもらうわ!」


 そう言い残してカスミは窓の外に姿を消していく。

 去り際も見事な隠密術だった。


「はっ、オードル⁉ あの女は⁉」


 直後、エリザベスが我に返る。

 消えたカスミを探して周囲を見渡す。


「あいつは先に帰ったぞ」


「なんですって⁉ それなら私の勝利ということね! あっ、でも、あの女狐のことだから油断は出来ないわ! きっと、またオードルのことを誘惑に来るはず⁉ よし、こうなったらこの家中の窓に、頑丈な柵を取りてやるわ! そうしたら、あの女も忍び込めないはずよ!」


 エリザベスは相変わらず元気だった。

 何やら叫びながら、部屋から飛び出していく。


 すれ違いでマリアが入ってくる。


「ねぇ、パパ。さっきの音は何だったの? 誰かいたみたいだけど?」


 誰もいなくなった室内を見回し、マリアは首を傾げている。


「さっきの音か。あれは……パパの友だちが遊びに来ていた。もう帰ったがな」


「パパのお友だち⁉ 今度、マリアも会ってみたい!」


「そうだな。今度な。ところでマリア、母親がいなくて寂しくないか?」


 母親のこと……今まであえて聞かなかった話題に触れる。

 タブーとして、オレの方が避けていた話題。


 だが今はカスミの存在もある。

 どうしても確認しておく必要があるのだ。


「ママのこと? うーん、あんまり覚えてないから、よく分からないけど……マリアは寂しくないよ! だって大好きなパパがいるから! あと大好きなエリザベスお姉ちゃんとリリィお姉ちゃん。それに妹のフェンとニースもいるから!」


 マリアは満面の笑みで、大好きな家族の名前を上げていく。


「あとリッチモンド先生も好きだし、クラウディアちゃんたちお友だちも大好きだし、パパのお友だちのピエールおじさんやロキお兄ちゃんも好きだよ!」


 そして、これまで出会ってきた者たちの名を。

 本当に満面の笑みで答えてきた。


(そうか……)


 どうやらオレの杞憂きゆうだったようだ。

 実の母親がいなくても、マリアは真っ直ぐに成長しているのだ。


「そうか、マリアは偉いな」


「偉いかな? あっ、そういえば、ニースとフェンと遊んでいる途中だった! じゃあ、またねパパ!」


 遊びの用事を思い出して、マリアは元気よく部屋を飛び出していく。

 本当に元気で可愛らしい後ろ姿だ。


「ふう……さて、オレも頑張るとするか」


 長い旅から戻ってきたばかり。

 片付ける物は、まだある。

 感傷に浸っている暇はないのだ。


 こうして一つの問題を解決して、我が家に平穏な日々が戻るのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ