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勘違いですれ違った恋  作者: 柏木紗月
再スタート編
41/53

感じる違和感


 3人で外で待っているとすぐに先輩も出てきた。


「先輩、ごちそうさまでした」

「うん」


 これだけでなんでこんなに嬉しそうなんだろうというくらい先輩は毎回嬉しそうに笑ってくれる。不思議だ……。


「このあとどうする?隼人くんなにも見てないでしょ?」

「いや、良いよ。もう帰らないと時間が」

「え?先輩このあと予定あったんですか?」


 合間に来てくれていたのかと思うと申し訳なくなる。


「ないよ?そうじゃなくて門限があるでしょ」

「……そのことですか」


 ここでも門限適用されるんだ……。子供扱いみたいで若菜たちの前で恥ずかしい。


「出たよ椿の門限……」

「僕たちだけじゃ考えもしなかったね」


 そうだよ、若菜や結城くんと遊ぶ時はもちろん由紀たちと遊ぶ時も終電までに帰れば良いかなって感じなのに社会人になってから門限ができるだなんてわけがわからない。


「今までは今まで。これからは駄目なの。……そうだな、10分くらいなら見ても良いよ。行きたい所ある?」

「短っ!!なにもできないじゃん!!」

「そもそも坂下さん送っていくから2人は電車で帰ればいいでしょ」

「ダメダメ!!椿と一緒に帰るの!!」

「じゃああと9分以内で」

「椿!!そこのお店!!」

「え!?」


 勢いよく腕を引かれて若菜に連れられて正面のお店に入った。


「わー!!綺麗ー!!」


 そのお店は天然石のアクセサリーショップでキラキラと輝くネックレスやピアス、指輪が売られていた。お店に入ってすぐに私から離れて奥へと進んでしまった若菜に苦笑いしつつも私も見ていくことにした。そして綺麗なネックレスがたくさんある中で目を引いた1つのネックレスをじっと見つめる。


「綺麗な色だね」


 思いの外近くで先輩の声がして肩を震わせてしまった。今日はいつもより距離が近いなと思いながらネックレスに意識を戻す。


「綺麗ですねー」

「緑好きなの?」


 それは緑色のしずくの形をした石のシンプルなネックレスだった。


「そうですね。モノトーンが好きなんですけど差し色でとか、なにか色を選ぶ時は緑が多い気がします」


 さっきのパンダのキーホルダーも緑色だった。あまり意識したことはなかったけど自然と選ぶのは緑色が多いと思う。


「そっか。それ買うの?」

「んー……。いえ、大丈夫です。あんまりアクセサリーとか付けないですし」


 ネックレスは2つくらいあったかな?覚えてないくらいめったにアクセサリーを付けない。お店で見ると綺麗だなー、買っちゃおうかなって思う時は何度もあるけど結局付けなさそうだなと思って止めてしまう。今日みたいな服にはすごく合いそうな気がするけどそもそもオフショルダーなんて普段着ないし……。そう言えば先輩服のことをなにも言ってこないな。あんまり好みじゃなかったのかな。でも若菜と結城くんはああ言ってたし……。どうなんだろう。そう考えていると奥から若菜の私を呼ぶ声が聞こえた。


「あ、ちょっと行ってきますね」

「うん」


 先輩に声をかけて私はお店の奥へ行った。






 そしてだいたい10分後若菜と2人でお店の外に出た。入り口のそばで待ってくれていた先輩と結城くんにお礼を言い、車を停めてある駐車場へ向かった。


「「え?」」


 車に乗ろうとしたら先輩と結城くんの声が重なって私は首を傾げて結城くんに聞く。


「どうしたの?」

「いや、なんで後ろに乗ろうとするの?」

「え?なんでって駄目だったの?」


 助手席には結城くんが座るかと思ったから普通に後ろに乗ろうと思ったんだけど。


「坂下さんはこっち」

「え、あ、はい」


 開けた助手席のドアに手を添えた先輩に急かされて私は急いで助手席に乗った。

 運転席の後ろに結城くん、その隣に若菜が座りそして最後に先輩が運転席に座った。


「ここまで車で来たの初めてなんだ。ナビで俺の家まで帰るように設定してくれる?そしたらだいたいわかるから」

「え?えっと……これですか?」


 そんな風に言われたのは初めてでドキッとしてしまった。どれを押せば良いのか、と迷っていると後ろから若菜が左左と声をかけてきた。


「えっと左……」


 次はこう……と言われるままに画面をタッチするけど、これは違うなとすぐに気付く。まあ、良いかと思いながら押していくと若菜が音楽プレーヤーに入れているお気に入りのKポップの音楽が流れてきた。


「そうそう、これこれ」

「若菜、先輩のお家に帰る設定を教えてよ……」


 呆れながら私がそう言ううちに先輩が隣から画面を3回だけタッチしたらナビが開始した。


「ご、ごめんなさい」

「良いよ、気にしなくて」


 なにもできなくて情けなくなったけど先輩はなんでもないようにそう言ってくれた。


「シートベルト大丈夫?」

「大丈夫です」

「そう。……おい」


 前半は私に、後半は後ろを向いてシートベルトに手をかけながら先輩が言った。

 どうしたんだろうと思って私も後ろを見る。


「もー早くしてよね!!」

「お前が邪魔するからだろ」

「私じゃないもん。昴だもん。この席から届かないよ。見てわかんないの?」


 どうやら先輩のシートベルトを若菜が抑えて邪魔してたみたいだ。身を乗り出して斜め前に座る先輩のシートベルトに手をかけていたんだろうと思うと可愛くてクスッと笑ってしまう。先輩はシートベルトを付けて車を発進させてから言う。


「あーあ、恋愛成就の女神様なんて仰々しい異名があるくせに恋のこの字も知らないようなお子さまだな」

「きー!!ムカつく!!そんなことないもん!!昴の彼女だもん!!」

「昴もこんなお子さまと付き合ってなにが楽しいんだ?」

「もう、そんな言い方しないで。楽しいよ、面白くて」

「へへーん!!昴は私の味方だもんね!!」

「はいはい。良かったね、変わり者がいて」

「隼人なんて椿に嫌われちゃえ!!」

「え、私!?」


 気安げな3人の会話を聞いていたら突然私の名前を出されて驚いてしまった。


「椿、隼人のこと嫌いって言って!!」

「えっ!?えっと……」


 後ろから椅子をガタガタと揺らされて困ってしまうけど嫌いだとは言えない。


「えっと……嫌いにはならないよ?」

「ありがとう」

「え?いえ、感謝されることでは……」


 先輩にお礼を言われて戸惑ってしまった。しかしふと気付いた。嫌いじゃないイコール好きって思われたらどうしよう……。そう思って慌てた私は言った。


「き、嫌いじゃないっていうだけですからね!!」 





 静まる車内に、言ってから恥ずかしくなって両手で顔を覆う。


「「……可愛い」」

「か、可愛くないです!!」


 またからかわれたと思って先輩と若菜の言葉に被せるように怒鳴る。


「なんでここでツンデレ……?」


 結城くんの言葉にも否定したかったけど息切れしてしまった私はなにも言えなかった。


「はいはい、隼人くんも若菜も戻ってきてね」

「ハッ!!キュンってしたー……」

「……危なかった」


 結城くんの掛け声に反応した先輩と若菜は別の所に意識を持っていかれてたみたいにハッと気付いた。……2人ともどうしちゃったんだろう。


「隼人のばーか」

「なんでだよ」

「なんとなく」

「殴るよ」

「きゃー暴力反対!!」


 若菜と先輩のやりとりを見ていて少し違和感を感じた。高校生の時もこの2人は気安いやりとりをしていたけど先輩はもっとこう、やんわり答えてたような気がするんだけど。


「坂下さん?どうしたの?」

「い、いえ……なんだか昔と違うなーと」


 考え込む私の様子に気付いた先輩に問いかけられてぼんやりしたまま答える。


「あー!!ほら、猫被ってたからだよ!!」

「え?」


 猫被ってた……?先輩が?


「そんなことないと思うけど……」

「そうなの!!これでわかったでしょー!!隼人は極悪人だって!!」

「そ、そうは思わないけど……」

「椿のわからずやー!!」

「わ、わからずやって……」

「まあまあ。じゃあ坂下さんが思ってる隼人くんはどんな感じなの?」

「え?」


 どんな感じって言われても……なんだろう。


「んー、優しくて笑顔が素敵で……」

「それは幻想なの!!」

「そ、そんな馬鹿な……」


 幻想とまで言う若菜に、改めて思い出すけど先輩はいつも笑顔で優しかったし……。


「隼人は昔から意地悪で人でなしだよ!!」


 若菜は昔からそんな風に言うけど私から見た先輩は全くの別人だ。だけど違和感を感じたのは確かで私の知らない先輩がいると思った。


「でも結城くんは先輩が優しいって思うでしょ?」

「まあ普段が意地悪だからたまの優しさが際立つとも言える」

「言いたい放題だな」


 運転してる先輩は苦笑いしつつも話を止めさせようとはしなかった。


「でも普通にしてる時の隼人くんがどんなかって言うとねー」


 普通にしてる時ってどういうことだろうと心の中だけで思った。


「現実主義でツッコミ気質って感じかな」

「……そうなの?」


 あんまり意識したことのない印象で不思議な感じがした。


「そうだよ。まあ僕たちの中でまともな人って全然いないからね、自然にそうなるんだよ」

「俺と昴と彩華さんくらいしかいないよ。浩一さんは浩一さんでまともじゃないし、一輝さんは天然だし。あ、そういえばまた一輝さんから今日は帰り遅くなりますって連絡がきたよ。彩華さんに教えてあげたけど」

「父さんまた間違えたの……」


 あんまり聞いたことがなかったけど浩一さんは若菜のお父さんで一輝さんは結城くんのお父さんの名前なんだろう。


「若菜のお父さんはどんな人?」

「浩一さんは一番真面目なんだけどずれてるっていうか。会って2回目の女性に結婚してくださいって言われて良いですよ、って本当に結婚しちゃうくらいだから」

「そ、そうなの!?」

「ママが可愛いから!!」

「それはわかるけど……すごいね」

「おじいちゃんの仕事関係で知り合いだったパパがお家に来た時この人だってビビッと来たんだってー」

「それで……。すごいね、若菜のお母さん」


 確かに明るくて元気なお母さんだけど……。


「そういう人ばっかりでまともな人がいないんだよ。だから必然的に僕とか隼人くんはしっかりしなきゃってなるよね。あ、そうそう、そう言えば僕たちが小学生だった時に9人全員で動物園に行ったんだ。その時優菜さんと美香さんがアルパカに夢中になってね、可愛い可愛いってずっと言ってたんだけど琉依さんが美香の方が可愛いよって言って」

「それで美香さんはねー、きゃー琉依さん素敵!!って」


 結城くんが多分先輩のお父さんの物真似をして言うと若菜が先輩のお母さんの真似をして言った。


「それを見た隼人くんがアルパカと比べて可愛いって言われて嬉しいのかって僕に言ってきたからわからないって答えたんだよね」

「べ、別に比べたわけじゃないのでは……?」


 どうだろう、先輩のお母さんってほんわかしてたから動物と比べられてもたとえぬいぐるみと比べられてもすごく喜びそうな気もする。

 3人の家族の賑やかな話を楽しく聞いていて先輩のことも知れたけどやっぱり私が知ってる先輩とあまり変わらない気もする。ロマンチックなことが好きな若菜と違って先輩は現実的だし頭の回転が早くて言葉を拾ってくれるのも上手いし、改めて考えると結城くんが言ってた印象は昔から知っていたということになる。だから私が見ていた先輩が全くの別の顔をしていたというわけではなさそうだ。そしたらやっぱり若菜との関係性が変わったのだろうか。でも若菜は昔からそうだと言うし……結局わからないままだ。



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