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勘違いですれ違った恋  作者: 柏木紗月
再スタート編
32/53

大学生活のこと


 いよいよリベンジの日曜日になった。先週のことを反省し心の準備をしてアパートの前で待つ。どんなにかっこよくても今日は思考を飛ばさないようにする。せっかく会えるんだから気付いたら終わってたってことがないように一分一秒を楽しむ。それが今日の目標。

 そして約束通り11時に先週と同じようにミニバンが走ってきて停まった。


「よし、頑張ろう」


 車に駆け寄っている間に先輩も車から降りてきた。今日の先輩はネイビーのポロシャツにクロップドパンツ。先週と同じで髪を爽やかにかきあげで眼鏡をかけていた。一瞬立ち止まりそうになったけどどうにか持ちこたえた。


「先輩、こんにちは!!」

「こんにちは、元気だね」

「はい!!」


 だって先輩のイケメンオーラに打ち勝ってここまで来れたんだから。今日はなんでもできるような気がする。先輩の車の助手席に乗って私がシートベルトをつけるのを確認した先輩はゆっくり車を発進させた。


「この前も思いましたけど先輩運転上手ですね」

「そう?普通だと思うけど。坂下さんは運転する?」

「友達と遊ぶ時に時々運転するくらいですね。大学の友達で旅行好きな子がいてそれで」

「そうなんだ。大学生活どんな感じだった?」

「えーと、普通ですよ。サークルには入らないでほぼバイトしてました。でも授業で仲良くなった子がサークルの子とか紹介してくれていろんな人と仲良くなりました」

「高校の時は若菜がずっとまとわりついてたけど坂下さんって社交的だもんね」

「ま……若菜とずっと一緒で楽しかったです!!それに高校の時も若菜以外に友達いましたよ!!」


 また先輩にからかわれてペースが乱れそうだったから先手を打って話し続ける。


「あとは先生の研究室によく行っていて、話を聞いて勉強になりました。大学院生もいて……」

「大学院生も……ね」

「先輩……?」


 さ、寒い……。またこの前と同じように鳥肌が立ってきた。とりあえずこの車クーラー効きすぎなんじゃないかな。そう思って慌てて車のクーラーのスイッチを探す。


「どうしたの?」

「寒くないですかね?温度上げませんか?」

「ああ、ここだよ」


 そう言って先輩がスイッチの場所を教えてくれようとした。


「ひゃっ」


 そして私のさまよっていた右手に先輩の左手が触れて悲鳴をあげてしまった。

 触れたことと変な声が出てしまったこととで身体が暑くなってきた。


「や、やっぱりこのままでいいです。暑いので……」

「そう?」


 顔を外に向けてしまったから先輩がどんな顔してるのかわからないけど多分面白がってる気がする。こっちは全然面白くないのに……。でもこんなふてくされてたら駄目だと思って気を取り直した。


「先輩はどうでしたか?大学」

「俺?んー、俺もバイトばっかりだよ。サークルも高校と違って毎日あるわけじゃなかったからね」

「なんのバイトしてたんですか?」

「塾講師と家庭教師の掛け持ち」

「え、すごい!!へー先輩教えるの上手いですもんね!!ぴったりです!!」

「そうかな。ありがとう」

「でも両方だなんて大変そうですね」

「まあ、忙しかったけどね。どうにか調整したらできたよ」

「そうなんですね」


 さすが先輩。先輩は頭が良いだけじゃなくて人に教えるのも上手だった。付き合ってた頃に教えてもらってたから自分の気持ちを抑えながら勉強に集中してるのに教えてくれる先輩との距離が近くて声も心地よくて悩んでいる問題が解けたときに褒めてくれる笑顔が優しかった。……とここでふと思う。

 家庭教師って女の子も教えるのかな……。まさか先輩の元カノさんってその女の子?いや、中学生とか小学生を教えてたとかだったらそんなことない?いやいや、年齢なんて関係ないのでは……?こんなにかっこいい人が先生をしてたらどんな人でもドキドキして好きになっちゃうよね。ど、どうしよう、すごく気になってきた。でも聞いたらショックを受けそう。いや、これも向き合いだから……。そして、気合いを入れて先輩に聞いてみた。


「先輩はロリコンで……きゃ」

「ご、ごめん!!大丈夫?」


 急に車がふらついて身体がよろめいた。一瞬だったから全然平気だったけど先輩は慌てた様子で私に問いかけた。


「大丈夫ですよ、ちゃんとシートベルトしてるんですから」

「ごめんね、気を付けるから」


 そんなに謝らなくてもいいのに。いつも安全運転すぎるくらい丁寧なんだから。


「私が変なこと聞いたせいじゃないですか」

「本当だよ、もう……。で、どういうこと?」

「いえ、あの……。家庭教師は小学生を見てたのかなと」

「高校生だよ。小学生だったとしてもそんなんじゃないから」

「え、高校生なんですか……?」


 そんな馬鹿な。高校生なんて絶対好きになっちゃうじゃない。あ、高校生の男の子かも。……なんだ、なんだ、そういうことか。ふー、安心安心。……ちょっと待って。一応確認を。


「高校生の男の子ですよね?」

「女の子もいたけど?」


 がーん


 もう、じゃあその子で決定だよ。ドラマみたいに一目惚れして徐々に距離が縮まってドキドキして勉強に集中できないってなるんでしょ。


「坂下さん……?それがどうしたの?」

「いえ、もう良いです」


 良いんだ。だって過去のことだし。先輩が誰と付き合っても気にしない。


「もう良いってどういうこと?」

「いや、本当にもう良いんですって」

「だからなにが本当にもう良いの?」


 なんで食い下がってくるのかよくわからない。何度も同じようなやりとりをして私は疲れてしまった。


「もう、なんなんですか?」

「だってこの前言ったでしょ。坂下さんが考えてること知りたいって」

「言わせてくれなかったじゃないですか」

「時と場合によるの」

「そんなのずるいです」

「良いから良いから。それで、高校生の女の子を教えてたらどうなの?」

「……です……」

「なに?」

「だから、その子と付き合ってたんですよね!!」

「……ん?」


 なんで私はこんな逆ギレみたいなことをしてるんだろうと、頭の隅っこで思うのに顔は言葉に合わせて真っ赤に染まる。


「……女の子と2人きりでヤキモチかと思ったんだけど……」

「な!?そんなんじゃないです!!むしろなんでそうなるんですか!?」

「いや、普通の人だと大抵そう思うよ。普通ならね」

「なんですか、私が普通じゃないみたいに」

「坂下さんってほら、変わってるから。……でもそっか。そういう方向になるのか……」


 先輩はそう呟くけどそういう方向とはなんだろう、なにに納得してるんだろう。先輩はちょっと考えて言った。


「あ、さっきのはね、付き合ってないから」

「え!?」


 なんでそんなにさらっと言うの!?

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