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勘違いですれ違った恋  作者: 柏木紗月
高校生編
12/53

急接近(2)

 緊張して固まってる私に対して佐々木先輩は平然としている。それもそうか。私の方が普通じゃない。どうしてこんなに緊張するんだろう。


「今日はあいつと一緒じゃないんだ」

「あいつ……若菜ですか?部活なので若菜は先に帰ってます。火曜日と木曜日はだいたいそうですよ」

「そっか。じゃあ火曜日と木曜日は2人で話せるチャンスかな」

「え!?いえ、あの……。でも、今日は偶然体育館に寄りましたけど普段はすぐに書道室に行くので……」

「んー……そうだよね。タイミングがなー」


 なんだろう。私は先輩に会えたら嬉しいけど先輩も私に会いたいって思ってるのかな。それともいつもみたいにからかってるのかな。


「あの、からかわないでください」

「え、からかってないよ。いつもあいつがすぐ突っかかってきてゆっくり話せないからね」

「ゆっくり……は話せないかもしれないですけど」

「でしょ。だからせっかくの機会だからゆっくり話そうよ」

「そ、そうですね。……でもなにを話せば」

「んー、じゃあいつも俺が坂下さんに聞いてばかりだから坂下さんが俺になにか聞いてよ」

「え!?なにかって……」

「なんでもいいよ」


 なんでもって言われても……。なにを聞こうか、と悩んでいる私に佐々木先輩は変わらず笑ってる。


「じ、じゃあ休みの日は何をしてますか?」

「バスケかな」

「で、ですよね」


 間違えた……。バスケ部は忙しそうだし、休みなんてないんだろうな。


「でもたまにある休みでは昴と若菜と出掛けるかな」

「へー!!仲が良いんですね」

「そういうのじゃないんだけどね」

「そうなんですか?」

「うん。俺、保護者だから。若菜に海に連れていけだの、テレビで特集してた県外のテーマパークに行きたいだの煩く言われてね」


 若菜らしくて面白い。


「俺の父親が若菜の母親の兄だって聞いてる?それで俺の母親が若菜の母親が学生時代からの親友でね」

「へー!!それは知らなかったです!!」

「で、昴が幼稚園の時に昴の家族が引っ越してきて、若菜の家族と家族ぐるみで付き合うようになった関係で俺の家族とも仲良くなったんだ。若菜と昴だけじゃ出掛けるの心配だって、あ、心配なのは昴じゃなくて若菜だけなんだけど……それで子供だけで出掛けるなら俺も同伴しないと行けないことになっててね。と言っても2人が中学生の時までで今年からは呼び出されなくなったんだけど。でも若菜が坂下さんと出掛けるようになったからみたいだね」

「あ、かもしれません。若菜と海に行ったりこの前話した洋食屋さんも県外でちょっと遠かったです。なんだか先輩に悪い気がしてきました」

「いやいや、こっちは付き合わされなくなって良かったよ。たまの休みくらいゆっくりしたいしね」

「そ、そうですか?それならいいんですけど……」


 佐々木先輩の楽しみを奪っちゃったかと思ったけど大丈夫そうで安心した。


「あ、あの、それじゃあ若菜は先輩のこと嫌ってるわけじゃないんですね。あんなに反発してるから本当は仲が悪いのかと思ってましたけどお休みのたびに遊びに誘うくらいですし」

「え?そう捉えた?違う違う。若菜が遊びたいのは昴とだよ。でも俺がいないと遠出の許可が降りなかったからしぶしぶ呼んでただけ。会えばいつも言い合いだよ。口だけは達者だから、あいつ」


 そうかな。いつもの言い合いもなんだか息ぴったりで楽しそうだけど。


「若菜は主人と仲良くするやつに容赦なく吠えまくる忠犬ってとこだよね。犬の方が数倍可愛いげがあるけど」

「そんな……。若菜が聞いたら怒りますよ……」


 穏やかでいつも優しい佐々木先輩は若菜にはいつも辛辣だ。でも仲が良いからこそのやりとりなんだろうな。なんだか羨ましい。


「あっ、そろそろ戻らないいと。長々とごめんね。部活大丈夫?」

「私は大丈夫です。先輩こそ大丈夫ですか?ゆっくりしすぎちゃいましたね」

「平気平気。じゃあ、行くね。また今度」

「はい!!部活頑張ってください。」


 ありがとう、と言って先輩は体育館に走って行った。

 こんなに長く話したの初めてだったな。最初は緊張してたけどいつの間にか普通に話せてたし、なんだか先輩といると心が温かくなって心地いい感じがする。やっぱり先輩が穏やかでいつも優しく微笑んでいるから私まで穏やかな気持ちになるのかな。


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