第四十六話
第四回戦。
俺の対戦する場所は実況台だった。
実況台では、一応ネット配信がされているらしい。
そして、対戦相手は――
「よろしくお願いします。"カケル"さん……だよね?」
「はい。こちらこそお願いします、"KANA"さん」
第三十二位。
"反射する魔球キッカー"という二つ名を持つ人物だ。
どうしてこのような二つ名が付けられたのかは、戦ってみればわかる。
「ふぅ……」
俺は、深呼吸をした。
というか、"KANA"さんってちゃんと女の子だったのか……。
見たところ、俺よりも年上……大学生っぽいな。
ゲームをするという人は、だいたい男性が多いだろう。
その理由もあり、ゲームの上位に立つのも男性の方が多い。
そして、女性のプレイヤーは、主観ではあるが、独特のプレイをしてくる人が多い。
これが、男には思いつかない行動なのだろう。
そこがすごいところであり、対戦する場合には、怖いところにもなる。
俺は、伸びをすると、しっかりと椅子に座った。
「さぁ四回戦になります!こちら実況台では、四十二位の"カケル"選手VS三十二位の"KANA"選手の試合をお送りしていきます!」
「順位持ちの選手同士の対戦再びですね」
俺の方が下の順位なので、俺が最初にゲームを選ぶことになる。
選ぶゲームはもちろんコール〇ブデュー〇ィー。
これは絶対に負けられない……!
「さぁゲームが始まりました!」
まずは相手に見つかるより先に相手を見つけ出す!
隙を晒さないように注意しながら動く。
それと同時に周囲をよく確認する。
角なんかは特に注意だ。
確認しないで飛び出しなんてしたらすぐに撃ち抜かれてしまう。
「ふぅ……」
緊張するな。
いつも通り勝てばいいんだ。
その時、俺の耳に届いた音は、最悪のスタートを切るものだった。
スパンッ。
「なっ……!?」
「えへっ。まず一回取ったよ!」
先に撃ち抜かれた!?
ダメだ!
焦ったらいけない!
落ち着こう……。
スパンッ。
「えっ……」
「えへっ。二回目~」
俺は完全に焦り始めていた。
「どうすれば……どうしよう……!」
「えへっ。焦ってる焦ってる」
ここで負けたら、俺より順位が上の人になんて勝てるわけない!
まずい……!
ここは……負けられない!
「えへっ。三回目~」
くそっ!
ダメだ!これじゃあ負ける!
「四回目~。えへっあと一回倒せば勝てるわけだ」
やばいやばいやばいやばいやばいやばい。
「追い詰められた"カケル"選手ですが、ここでようやく"KANA"選手を倒すことに成功しました!」
「"KANA"選手はすでに王手ですが、ここから逆転できるのかが注目です」
落ち着け……。
今一回倒したじゃないか。
まだ逆転できる可能性はある。
スパンッ。
「……えっ?」
「えへっ。やったね!」
まさか……。
「決まった~!勝者は"KANA"選手!」
「一本先に取りましたね」
俺の一番得意なジャンルのゲームが……先に取られた?
俺が……負けたのか……?
「っ……」
大会とは恐ろしいものだ。
いつもだって人が見ているはずなのに、今回はその人たちが俺にも見える。
観客。
それが目に見えているだけでこうも緊張してしまう。
一セット目のゲームを取られたこの瞬間。
その圧は、さらに重く俺の肩に圧し掛かったのだった。
※※※
問題はそれだけじゃなかった。
相手は"KANA"選手。
さっきから言っているが、俺よりも上の順位を持つプレイヤーだ。
そして、この人の得意なゲームというのが――
「ウ〇ニング〇レブンでお願いします」
俺の苦手なスポーツゲームなのだ。
ウイニ〇グイレブ〇はサッカーのゲームで、実際に存在する人がモデルとなってゲーム内でサッカーをする。
プレイヤーはそのキャラクター達を操作して現実のサッカーと同じルールのもと対戦をするというものだ。
「二戦目が始まりました。"KANA"選手の二つ名である"反射する魔球キッカー"はこのゲームをする"KANA"選手を見て付けられたものです」
「現状を見てもらえばわかると思われますね」
なんだこれ……。
ボールがどこに向かうのかまったくわからない!
こっちにパス?
いやあっちだ!
と気づいてももうそこにボールはない。
「パス回しが上手く、ボールが消え、人と人とを反射するように移動するように見えることから付けられたんでしたね」
こんなの勝てるわけ……!
「えへっ。一点もらい~」
「くっ……」
このまま負けるのか!?
俺は……まだ負けたくない!
――ビリッ。
その時、俺の頭に電流が走るような衝撃が訪れた。
「なっ!?」
相手のパス中にボールを奪い取った俺は、そのままシュートを決めた。
「おっと"カケル"選手!まさかまさかのパスを回しているところを割り込んでボールを奪い、そのままシュートを決めた!」
「う~ん……よくあのパスに反応できましたね……」
よしっ!
一点!
これで同点だ。
まだ勝ち目はある……!
相手のパス回しをよく見る。
リズミカルとは言えないそのパス回しは捉えることが難しいだろう。
でも!
――ビリッ。
「なっ!?また!?」
二点目。
「なんとまたしてもボールを奪い取った!」
「おぉ……」
観客も盛り上がっている雰囲気がひしひしと伝わってくる。
「絶対に負けない!!」
「えへっ……困ったなぁ……」
ゲーム内はそのまま後半戦に突入した。
相手側からスタートする。
あれ……?
「パス回しがなんか変わってる……?」
なんだかさっきとはパス回しの感じが変わっている気がした。
実際に何度も奪おうとするが、こちらが割り込むところにパスが転がってこない。
読まれてる?
そのまま相手側にシュートを決められてしまう。
「えへっ。負けないから」
もっと集中しないと!
「おっとこれはすごい!」
「なんなんでしょうねこれは……」
「パスとパスカットの応酬だ!」
まずい……!時間がない!
「えへっ。チャンス!」
「しまった!」
一瞬の隙を突いた"KANA"さん側にボールが渡ってしまう。
これを入れられたら負ける……!
ここで終わるわけにはいかない!!
――ビリッ。
ここで再び、俺の衝撃が走った。
「一度パスを回す……」
そう感じた俺は、急いでパスカットのために神経を集中させる。
今。
「なっ!なんで!?」
相手のシュートに見せかけたフェイントのパスをカットし、ボールを奪った俺は相手のゴールに向かって走り出す。
「いっけぇぇぇ!!」
ゴールが入り、同時にタイプアップにもなった。
「よっしゃぁ!」
「なんということだ!まさかの"カケル"選手の勝利!勝敗は最終戦にまで持ち越されました!」
観客が凄まじい歓声を上げる。
「ふぅ……」
その中で俺は、次の対戦に向けて、息を整えるのだった。
※※※
最後のゲームを決めるのは俺。
そして内容はスト〇ートファ〇ター。
格闘ゲームだ。
FPSで負けたんだ。これだって負ける可能性は大いにある。
「絶対に負けたくない!」
「えへっ。それはこっちの台詞!」
対戦が始まった。
やはり牽制から始まったこの試合。
相手の隙を伺いながら攻撃を出す。
一試合目はお互いの牽制をお互いに喰らいあって体力が減少していった。
最後に隙を突いた俺がそのセットをもらう。
「よしっ!」
「あちゃ~……」
あと一勝……あと一勝で準決勝に進出できる!
二セット目。
これを俺が取れば勝ち。
負ければ最終セットに持ち越し。
とりあえず深呼吸をする。
「ふぅ……」
お互いに牽制をし、隙ができたらそこにコンボを叩き込む。
体力はお互いに残り半分以下。
あともう二回くらいコンボを決めれば勝てるくらいだ。
「ここで"カケル"選手が勝つのか!それとももう一セット続くのか!」
「我々も言葉を失ってしまうくらい熱い戦いですね……!」
お互いにもう一度ずつコンボを喰らい、残り体力もわずか。
先にコンボを入れたほうが勝つ。
――ビリッ。
「今だ!」
「負けないもん!」
お互いに動いたそして、勝負が決まった。
歓声がわっと声を上げる。
勝ったのは――
「勝ったのはなんと"カケル"選手だ!」
俺だった。
「よっしゃ~……」
一気に体の力が抜けていくのを感じる。
「えへっ。負けちゃったか~……。"カケル"さん、おめでとう!」
「ありがとうございます!」
すごい強かったな……。
「これで次のトーナメントが決まりました!」
実況の声が聞こえる。
「次の試合からは準決勝となります!ここからはすべて配信台の対戦になりますので、反対のカードは休憩になります!」
なるほど。
「最初に二人が決まった方を先にします!まず最初のカードは十五位の"アリス"選手VS五十九位の"サーシャ"選手です!」
じゃあ俺は休憩か。
あれ?待てよ?
次の俺の相手って……。
「次の対戦カードは四十二位の"カケル"選手VS十七位の"ユキザクラ"選手です!」




