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第7章ー8

 だが、1938年の春から夏にかけての状況において、チェコスロバキア政府が、建国以来、ずっと講じていた様々な外交上の諸施策は、ヒトラー率いるドイツ政府の行動以前に、効力を失いつつある、と言っても過言ではなかった。


 チェコスロバキアの友好国の現状であるが、まず、英仏は、独の再軍備に慌てふためいて、軍拡を策している真っ最中という有様だった。

 仏に至っては、それに加えて、スペイン内戦によって生じた難民問題から、人民戦線政権が崩壊し、中道右派政権が成立する、という政権交代が引き起こされている有様で、尚更、当てにならなかった。

 ルーマニアにしても、ベッサラビア問題からくるソ連の圧力に苦しんでいた。

 ユーゴスラビアも、世界大恐慌からくる国内不況のために、国内の民族、宗教対立(1つの国家と王室、2つの文字、3つの宗教、4つの言語、5つの民族と、外国人の間でさえ、謳われていた程の多宗教、多民族国家だった)が激化しつつある現状とあっては、チェコスロバキアを援けることは思いもよらないこと、と言っても間違いではない有様だった。


 では、それ以外のチェコスロバキアを取り巻く周辺国の状況はどうだったのか。

 まず、オーストリアは、既にドイツに併合されている有様だった。

 ポーランドにしても、チェシン問題から冷たい関係になっていた。

 ハンガリーに至っては、ルテニア問題等から宿敵と言っても過言ではなかった。

 ソ連は、表向きは反共を唱えているドイツの最大の友邦と言っても間違いではなかった。

 つまり、気が付いた時には、チェコスロバキアは、外交的に完全な孤立状態に陥っていたのである。


 1938年4月、同年3月のいわゆるアンシュルス(独のオーストリア併合)を受けて、強気になったズデーデン・ドイツ人党は、ズデーデン地方に対して、自治権を認めるように、チェコスロバキア政府に対して要求した。

 これに対し、(対独戦争に備えた再軍備真っ最中だった)英仏両国政府は、(時間稼ぎのために)チェコスロバキア政府に対して、ズデーデン・ドイツ人党の要求を丸呑みするように勧告したが、当事国であるチェコスロバキア政府は、自治権をズデーデン地方に認めることは、自国チェコスロバキアの解体につながる、として、断固、拒否を表明した。

 更に、万が一の対独戦争に備えての、予備役軍人の一部動員も、チェコスロバキア政府は発表した。


 こうした状況を見て、ベック陸軍参謀総長ら、独軍の一部は、ズデーデン問題で、独政府が強硬姿勢を貫くことは、二度目の欧州大戦を招きかねない、として慎重論を唱えた。

 ベック陸軍参謀総長らからすれば、確かに英仏両国政府は、ズデーデン問題で弱腰だが、実際に武力衝突に至った場合、チェコスロバキアは、それなりに抗戦し、その間に英仏両国軍の攻勢により、独が最終的には敗北するのではないか、という危惧の念を抱いたのである。

 この時には、ヒトラーは、ベック陸軍参謀総長らの意見に同意し、ズデーデン問題は収まった。


 だが、この独政府の態度を、チェコスロバキア国内の新聞等が、

「チェコスロバキアの断固たる態度が、独を怯ませた。これは小国の大国に対する勝利である」

 等と取り上げたことが、ヒトラーの激怒を招いた(と言われている。)。

 ヒトラーは、同年8月に、ベック陸軍参謀総長を半ば辞職に追い込む等して、ズデーデン問題について、独軍内部の慎重派を粛清し、本格的なチェコスロバキア侵攻作戦の準備を、独軍に対して命じた。

 その命令に従い、独軍はチェコスロバキア侵攻作戦の準備を整え、同年9月初めには、独軍の侵攻作戦の準備が事実上整った。

 ここに、欧州に重大な危機が引き起こされた。

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