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第7章ー7

 こういったズデーデン地方を始めとするチェコスロバキアの状況は、ドイツ国内のドイツ人達にしてみれば、とても黙ってはいられない酷い状況に他ならなかった。

 何しろ、ドイツ語教育を抑圧し、ドイツ民族を半ば否定することが、チェコスロバキアでは行われていると言っても、間違いではなかったからだ。


 チェコスロバキアで行われていることは、チェコスロバキア国内から、ドイツ民族を消滅させることである、という主張が、ドイツ国内の多くのドイツ人の間で受けいれられ、その人たちの間で憤りを呼び、迫害に苦しむチェコスロバキア領内の同胞を救え、という声が高まるのも、ある意味で当然と言える話だった。

 ヒトラー率いるドイツ政府が、ズデーデン問題に介入したのは、こういったドイツ国内の反応から、ドイツ国内世論の大幅な後押しがあったからだった。


 こういった状況は、チェコスロバキア領内のドイツ人にとっては、より深刻な問題であった。

 ドイツ民族至上主義の過激派政党と言っても過言ではない、ズデーデン・ドイツ人党への支持が、チェコスロバキア領内のドイツ人の間で高まるのも、極めて当然の話と言えた。

 実際、1935年のチェコスロバキア領内の国政選挙において、もっともチェコスロバキア領内のドイツ人の間で、最も票を獲得したのは、ズデーデン・ドイツ人党である。


 ズデーデン・ドイツ人党内でも、結党当初は、チェコスロバキア領内での自治権獲得を目指すか、ドイツへの帰属を目指すか、路線対立があったが、1937年頃には、ドイツへの帰属を目指すという事で、党の意見は統一されていた。

 こういったズデーデン・ドイツ人党の動きも、ヒトラー率いるドイツ政府の、ズデーデン問題に介入しようという動きを後押しすることになった。


 こういった状況に対し、チェコスロバキア政府は、周辺諸国の政府と協力することによって、ドイツに対抗しようと考えたが、それはチェコスロバキア建国の経緯から言って、中々困難な道のりだった。

 英仏両国政府が、最終的にミュンヘン会談で、チェコスロバキア解体を半ば是認した(更に、日米両国政府もそれに同意することになった)のは、チェコスロバキアが周辺諸国から孤立していたのも一因だった。


 ズデーデン問題等、中東欧においては、民族が複雑に入り乱れて、混住しているところが多い。

 更に様々な歴史的経緯から、民族間の対立も珍しくない。

 オーストリア=ハンガリー帝国が、意外と安定していたのは、多くの民族が、いわゆる「ハプスブルクの傘」に入ることにより、ドイツ人、ハンガリー人が支配階層という現実はあったが、民族間の深刻な対立抗争を避けて、安心して暮らせるという側面があったのは、否定できない話だった。

 だが、第一次世界大戦は、その民族間の対立という、ある意味、パンドラの箱を開けることになった。


 第一次世界大戦が終結した後、オーストリア=ハンガリー帝国は崩壊し、ハンガリーやチェコスロバキア等は、オーストリア=ハンガリー帝国からの分離独立を宣言した。

 だが、早速、こういった国々は、どこまでが自国領かということでお互いの国境紛争を引き起こした。

 チェコスロバキアは、この点に関し、周辺諸国全てと国境紛争(しかも、建国当初に武力衝突まで行ったという)を抱え込んでいた、と言っても間違いではなかった。


 ドイツとの間には、ズデーデン問題があった。

 ハンガリーとの間には、ルテニア問題等を抱えていた。

 ポーランドとの間には、チェシン問題があった。

 これに対処するために、チェコスロバキアは、ルーマニアやユーゴスラビアと「小協商」を形成し、英仏と連携する等、建国当初から様々な外交努力を払っていた。

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