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第7章ー2

 だが、この韓国軍の出動は、ある意味、韓国がまとまって動きやすい事態だからこそ、出動してしまったという側面があった。

 中国内戦介入による兵力不足に悩む日満両政府から、韓国政府は陸軍派遣を求められていた。

 しかし、韓国の国民にしてみれば、中国内戦等、勝手にやってくれ、自分達には関係ない、という話である。

 韓国の国民の多くが、中国内戦への韓国陸軍派遣に反対しており、それもあって、韓国政府は、対ソ脅威を口実に、中国内戦に陸軍を派遣していなかった。


 そこに張鼓峰山頂の近辺に国境監視哨を、ソ連軍が建設しようとしているという情報が入ったのである。

 更にこの情報が、韓国の右派系大手新聞に載り、韓国国民に広く流出したことが、張鼓峰事件が激化する一因となった。

(この新聞記事だが、韓国政府内に潜んでいた親ソ派の官僚が、右派系の大手新聞に、わざと情報を流したことによって掲載された、という説が歴史学者の間では根強くある。

 ソ連政府としては、韓国を激発させ、国境紛争を本格戦争にすることで、共産中国救援作戦を発動したかったのではないか、というのである。)


 さて、張鼓峰は、満ソ国境の問題であり、韓国が介入する必要はないのでは、という疑問があるだろう。

 だが、張鼓峰自体は、韓国との国境にも程近い、標高が200メートルにも満たない唯の低い山だが、この山頂は、韓国内を走る国境鉄道や、韓国領の羅津港を一望のもとに置くことができる戦術上の要地と言っても過言ではない場所だったのである。

 だからこそ、ソ連軍が張鼓峰の山頂に、国境監視哨を建設するという事は、対韓侵攻作戦の準備の一環ではないか、国防上、断固、予め排除すべし、と対ソ危機を煽る社説が、韓国の右派系大手新聞には、張鼓峰へのソ連軍国境監視哨建設を報じる記事と併せて載る事態になった。


 この右派系大手新聞の記事と社説が、韓国の国民世論を煽る発端となった。

 更に、韓国のこの状況を見た満州国内の親ソ派、共産中国支持者もうごめきだした。

 それまでは、蒋介石率いる満州国政府としては、張鼓峰山頂へのソ連軍国境監視哨建設については、日米等を介した抗議に留める方針であり、日米両国政府からも、それに関する協力を取り付けつつあったのである。

 だが、この方針は、満州国内の対ソ強硬論者には極めて評判が悪かった。


 確かに中国内戦の方が優先、という方針は分かるが、ソ連軍の国境監視哨建設等、ソ連の挑発行為には断固とした対処をしないと、ソ連がますます増長してしまい、国土を削り取られてしまう、と対ソ強硬論者は主張していたのである。

 そこに、韓国内で、張鼓峰へのソ連軍国境監視哨建設について、満州国に味方して協力するという動きがあるという情報が入ったのである。

 対ソ強硬論者は、強気になった。

 満州国内の親ソ派、共産中国支持者は、そう言う状況を見て、対ソ強硬論者を煽り、満州国軍の本格出動をさせよう、と動いたのである。


 満州国内で、韓国軍出動を歓迎する動きがあると知った韓国内の強硬派は強気になった。

 更に、韓国内の国際協調派(対日満穏健派)も、張鼓峰問題解決に協力、派兵することで、満州国に協力するという実績を挙げようと考えた。

 それに、派兵すると言っても、韓国の国境から目と鼻の先と言ってもよい距離である。

 こういった状況から、韓国内は、張鼓峰問題解決のために、韓国軍を派遣することに積極的な世論が高まる一方という事態が発生した。


 だが、この事態は、日米両政府にとっては、極めて困った事態だった。

 この問題を外交交渉で解決する方針だった日米両政府にとって、張鼓峰で満韓ソの軍が衝突というのは、何とが避けたい事態だったのである。

 自称愛国者の暴走により、困った事態が発生します。


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