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第7章ー1 張鼓峰事件とズデーデン危機の勃発

 第7章の始まりです。

 張鼓峰事件、当時、事実上は満州国とソ連の国境線となっていた地域において発生した国境紛争である。

(事実上は、という枕詞が付くのは、ソ連は満州国の存在を公式には認めておらず、共産中国を唯一正当な中国政府と認めていたためである。

 そして、共産中国は、張鼓峰における国境線については、当時、勃発していた中国内戦の影響から、自らの最大の支援国の一つであるソ連の意向に従わざるを得ず、ソ連の国境線の主張を丸呑みしているという状況にあった。)

 

 ちなみに、ソ連政府の主張によれば、張鼓峰の山頂の線上が、中国(満州国)とソ連の国境になっていた。

 その一方、満州国政府、蒋介石政権の主張によれば、張鼓峰の頂上一帯は、明らかに自国領(中国、満州国領)だと主張していた。

 とはいえ、満州国政府、蒋介石政権は、張鼓峰を始めとする中ソ国境線で事実上不明確になっている一帯については、ソ連政府の主張を基本的に黙認し、外交上、抗議を行うに止めるという態度に、1938年当時は徹しているという状況にあった。


 これについては、幾つか事情がある。

 まず第一に、1938年当時、満州国政府とソ連政府の間に、正式の国交は存在していなかった。

 これは、ある意味、当然の話で、蒋介石政権(満州国政府)は、中国全土が自国政府の統治下にあると宣言しているのに対し、ソ連政府は、蒋介石政権を否認する共産中国政府を、中国全土を統治する正統政府と承認していた。

 従って、こういった状況下で、ソ連政府と満州国政府が正式の国交を持つ、ということは、両国政府の外交の大前提を崩すという事態を引き起こしかねない話だった。

 正式の国交が無い状況で、国境紛争解決の話し合いが、当事国間だけでできる訳が無かった。


 第二に、1938年当時、満州国と共産中国は、中国内戦を繰り広げている真っ最中だったことである。

 満州国側には、日本が正式に味方して正規軍を派遣しており、更に米韓等が物資援助をしていた。

 共産中国側には、独ソが物資援助を行うと共に、軍事顧問団を派遣していた。

 更に言うならば、満州国は、国の総力を挙げて、対共産中国との内戦勝利、解決を目指しているという現状があった。

 こういった現状にあっては、満州国は、ソ連との国境紛争等、後回しにせざるを得なかった。


 第三に、1938年当時、満州国の支援国の一角を占める日米が、共にソ連との紛争を引き起こすことに極めて消極的な態度を示していたことがある。

 日本にしてみれば、中国内戦について満州国側への支援を行うだけで、文字通り、国を傾けかねない事態が引き起こされていて、対ソ戦等、国が破たんする事態を引き起こすと、米内光政首相以下の日本政府要人の多くが考えているという現状があった。

 米国にしても、世界大恐慌による大打撃に、自国の国民のほとんどが喘いでいるという現状があった。

 ニューディール政策の実施により、何とか世界大恐慌からの脱却をしようとしてはいるものの、米国の現状は、まだまだ脱却から程遠いという現状があったのである。


 だが、こういった満日米の思惑、空気を全く読めない国があった。

 それは韓国だった。


 韓国政府の一部の要人は、大韓国主義を唱えており、その主張によれば、南満州や沿海州全ては、本来から言えば韓国領だった。

(大韓国主義、朝鮮民族の国家である高句麗や渤海の故地までが韓国領であるという主張、主義)

 そして、張鼓峰は、大韓国主義に従えば、明らかに韓国領だった。


 そういったことから、大韓国主義者は、張鼓峰事件が勃発するとすぐに、対ソ強硬主義をぶち上げ、ソ連の主張を認めるな、と叫び出した。

 更に、その声に押されて、韓国軍も出動する事態が起きた。 

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