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間章2-2

 厳密にいうと、史実では89式重擲弾筒が量産開始となったのは、1932年以降なのですが、この世界では第一次世界大戦で欧州に海兵隊等を派遣した影響で、89式重擲弾筒の開発に注力した結果、1929年から89式重擲弾筒は、量産可能兵器になっています。

 とはいえ、日本には、幸か不幸か、それなりに役立ちそうな武器を、89式戦車と共に手にしていた。

 89式重擲弾筒である。


 擲弾筒は、当初は、第一次世界大戦の経験から、歩兵の近接化力強化の一環として、軽迫撃砲と同様の考えから開発されたものだった。

 だが、軽迫撃砲だと間接射撃しかできない、という苦情が、軽迫撃砲の開発検討段階で出たことから、擲弾筒の開発強化の方向に、日本軍は奔った。


 当初、日本軍の手で開発された十年式擲弾筒は、現場では景気づけの花火とまで酷評される代物(射程の調整は複雑だわ、発射された擲弾の弾道性能が劣悪だわで、訓練で撃ってみると、さっぱり当たらない事態が多発した)だった。

 その経験を十二分に踏まえて開発された89式重擲弾筒は、軽迫撃砲の代替役を務められる上、いざとなれば水平撃ちも可能(不可能ではない、というレベルの話ではあったが)という性能を持ち、命中率も格段に向上した(当時の日本軍にとっては、という但し書きが付くが)優秀な兵器だった。


 更にほぼ同時に、37ミリ対戦車砲の開発、量産化に成功した日本軍は、取り合えずはこれらを活用する対戦車戦術を向上させることで、ソ連等の戦車部隊に対抗しようと考えた。

 歩兵(海兵)大隊レベル以上では、各大隊に対戦車砲小隊を配置して、それによって敵戦車に対処する。

 それ以下のレベルでは、個人で携帯可能な対戦車兵器(言うまでもなく、擲弾筒等)によって敵戦車に対抗しよう、と日本軍は考えたのである。


 それなら、個人で携帯可能な対戦車兵器として、対戦車ライフルを導入しようという主張もあったが、この当時、1930年代前半の日本軍の主流の主張にはならなかった。

 何故なら、対戦車ライフルは、当時の日本軍の目から見る限り、早晩、戦車に対抗不可能な、陳腐化した兵器になると考えられたからである。

(最も、後知恵からすれば、これは早まった考えで、第二次世界大戦中、ソ連軍等の対戦車ライフルは、日英米仏の戦車部隊に対して善戦しており、何故に、日本軍は対戦車ライフルに冷淡だったのか、という批判を、第二次世界大戦後、日本軍は浴びることになる。)


 1930年代前半の日本軍の対戦車戦術は、上記のようなものだった。

 最も、あくまでも暫定的なもので、例えば、37ミリ対戦車砲は、47ミリ対戦車砲の開発が完了次第、47ミリ対戦車砲に切り替えられる予定だった。

 さっさと高射砲を転用するなり、野砲を改造するなりして、75ミリ対戦車砲を実用化しても良かったのでは、という疑問が呈されるだろうが、当時の日本軍(というか、各国の軍隊全てに共通)の問題点から、その方向には進まなかった。

 それは、対戦車砲の機動力の問題だった。


 何しろ、時代が時代である。

 対戦車砲の自走化が、日本を含む各国の軍隊によって図られるのは、まだまだ先の話だった。

 従って、いざという場合、対戦車砲を人力で、(短距離)移動させたり、砲の向きを変換させたり、することを考慮せざるを得ないのである。

 75ミリ級以上の対戦車砲が、そういったことが不可能な重い代物になるのは、当時の軍人からしてみれば自明の理だった。


 そのため、日本軍は苦肉の策として、携帯式の対戦車兵器の強化を、次に考えた。

 それに、これはいざという場合、前線の歩兵が、敵戦車に対処する際の士気向上につながるとも、日本軍の上層部に考えられた。

 いざという場合に、敵戦車に十二分に対抗可能な兵器が手元にあるのと、手元に全く無いのでは、前線の歩兵に与える影響が全く異なってくる。


 こうしたことから、日本軍は携帯式の対戦車兵器として、火炎瓶や対戦車ロケット砲開発に血道をあげることになった。 

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