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間章2-1 日本陸軍、海兵隊の対戦車戦闘の考え

間章2の始まりになります。


どちらかというと、説明の章になります。


 第一次世界大戦の西部戦線で、戦車についての経験を積んで以来、日本陸軍、海兵隊においても、対戦車戦闘については、ある程度の考慮はなされ続けた。

 自分(日本陸軍、海兵隊)が、第一次世界大戦終結直後には、(併せて数えるならばだが)約300両以上の戦車を保有する、一端の戦車保有国になっており、世界大戦で戦車が大活躍したのを、欧州に派遣された多くの将兵が、文字通り目の前で見ているという現実があった。

 そして、日本陸軍、海兵隊は、戦車について、重大な関心を持ち続けた。


 更に言うならば、日清戦争以降、日本の最大の仮想敵国ともいえる存在となったロシア帝国は、伝統的に陸軍に関しては超大国であり続けていた。

 ロシア帝国が、ロシア革命により崩壊し、ソ連が成立したとはいえ、そのソ連が、戦車等を保有する陸軍の超大国に将来的にならないという保証は無かったし、歴史的経緯からすれば、何れは陸軍の超大国になると日本の陸海(空海兵)軍の幹部の多くが考えざるを得なかった。

 更に、ラパッロ条約により、(隠密裏ではあったが、)独ソが緊密な軍事協力関係を築いたことは、日本軍幹部の警戒心を高めた。

 こういったことから、第一次世界大戦直後から、日本陸軍や海兵隊は、対戦車戦闘をある程度は、ずっと考慮することになったのである。


 では、1920年前後の日本における対戦車戦闘は、どのようなものと考えられていたかだが。

 ある意味、時代に即した平凡なものだった。

 歩兵中隊以下のレベルでは、対戦車ライフルで、それ以上のレベルでは、対戦車砲を投入することで、敵戦車に基本的には対処しようというものだった。

 そういった発想で、各国の対戦車ライフルや対戦車砲を比較検討して、日本に導入しようとした。


 だが、時代が時代である。

(第一次)世界大戦で余りにも血を流してしまった日本に、本格的に対戦車ライフルや対戦車砲を導入するということは、極めて優先順位の低い話だった。

 何しろ、日本の最大の仮想敵国であるソ連でさえ、ロシア革命後の内戦等による国内被害の立て直しを、第一に考えざるを得なかった時代である。

 更に言うならば、大正デモクラシーの下、軍縮の嵐が日本でも吹き荒れていた。

 従って、日本軍の対戦車装備は、比較検討レベルに止まり、本格導入までいかなかった。

 しかし、それが一変する事態が発生する。


 1927年の、いわゆる南京事件に伴う日(英米)中限定戦争の勃発である。

 この戦争自体は、事実上は、日(英米)の大勝利に終わり、蒋介石が日本に亡命し、国共合作が国民党左派と共産党によって継続する(それによって、国民党左派は共産党に乗っ取られ、共産中国が成立する)等の事態をもたらした。

 だが、それと共に、日本軍の対戦車戦闘に与えた影響も大きかった。


 この時、蒋介石率いる国民党軍は、窮余の一策であったが、75ミリ級の野砲を対戦車戦闘に投入し、複数の日本軍戦車を破壊した。

 75ミリ級の野砲を、対戦車戦闘に投入するという事自体は、第一次世界大戦時からある話だったが、改めて国民党軍にもやられてしまった、というのは、日本軍で対戦車戦闘を考慮してきた者達の多くに衝撃を与えた。


 こうしたことから、せめて砲塔正面は75ミリ級の野砲弾の直撃に耐えられること、という要求を出された日本の89式戦車は、砲塔正面装甲が傾斜80ミリという、当時としては化物戦車になった。

(その代償として、側面、後面装甲が極端に薄いのは、ご愛嬌である。)

 だが、その一方で、ソ連が同様の戦車を開発したら、日本軍はどうやって対抗する、という危惧が産まれた。


 そういったことから、日本軍も懸命に対戦車兵器の開発に勤しむことになった。 

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