表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/120

第6章ー20

 6月7日、徐州作戦の終結を、華北方面軍司令部と華中方面軍は、共同で発表した。

 この時点で、徐州方面にいた共産中国軍は、表立った組織としては消滅しており、共産中国軍の兵は、住民に紛れ込むか、死ぬか、日満連合軍の捕虜となっていた。

 この発表を受けて、日満連合軍は守勢に転じることになった。


 土方中佐は、合肥に置かれた第3海兵師団司令部において、情報収集に努めていた。

 この徐州作戦によって、日満連合軍は、当初の構想通り、江蘇省等の4省を確保することに成功した。

 また、徐州方面に展開していた共産中国軍は、民兵隊を含む約100万人と推定されていたが、日満連合軍によって、捕虜となったり、遺体が確認されたりした人数は、約40万人に達しようとしていた。

 これに対して、この時点で、徐州作戦に参加した日満連合軍の損害は、戦死者約1万人(戦病死者や住民救護の際の犠牲者等も含む数字)、戦傷者(戦病者も含む)約3万人といったところで、表面上は、日満連合軍が大勝利を収めたことは間違いなかった。

 だが、と土方中佐は、昏い予測を立てざるを得なかった。


 裏返せば、民兵隊も含めれば、約60万人もの兵が、徐州方面に潜伏しているということだった。

 彼らを武装解除し、善良な住民にするのは、大変な手間がかかることになるだろう。

 治安を維持するために、大量の兵を徐州方面に展開するのはやむを得ない話だ。

 実際、海兵隊にしても、4個師団の引き上げが決まったが、その4個師団にしても、交替で中国に派遣されるために、動員体制の事実上の維持が決まろうとしている。

 海兵隊2個師団が、揚子江(長江)以南の南京、上海方面に駐屯して、この方面の防衛、治安維持に当たることが、先日、東京で参謀本部と海軍軍令部の協議により決まったのだ。


 これまでも上海に2個海兵連隊を基幹とする部隊を駐屯していたことを考えれば、それが拡充されただけとも言えるが、どちらにしても海兵隊自身にとっても、日本にとっても重い負担になるのは間違いない。

 陸軍も12個師団の内6個師団が、そのまま徐州方面に展開して治安維持に当たることになっている。

 また、海兵隊と同様に、国内の一部の師団については、万が一に備えて、動員体制が維持されるらしい。

 最も、陸軍としては、動員体制を執るよりも、新設師団等によって、治安維持任務等を行いたいらしく、米内内閣に対して、そのように梅津陸相が訴えているらしい。

 新設部隊を作るのも、元々の基盤が小さいことから、中々ままならない海兵隊の自分からしてみれば、うらやましいとしか、言いようのない話だ、と土方中佐は考えていた。


 それにしても、6個師団程を現地に残し、それ以外は動員解除を行う予定だったのが、それどころではない動員体制の維持である。

 日本にとって、重い負担になると、土方中佐は考えざるを得なかった。

 更に、この状況には問題が付け加わっていた。

 黄河の堤防破壊の後始末という問題である。


 黄河の堤防破壊によって、黄河の下流域全体で、溺死者やそれに伴う疫病の流行等により、どう少なく見積もっても100万人以上の中国人住民の死者が出ていた。

 共産中国政府は、徐州大虐殺と、これを命名し、抗日運動のために利用していた。

 日本は、黄河の堤防を破壊することで、中国の人民を無残にも大量に虐殺した、という宣伝である。

 独のゲッペルス宣伝相等は、これを嬉々として、反日報道に利用して大量に垂れ流す始末だった。


 取り合えず、黄河の堤防破壊は共産中国によると、日本政府は繰り返し主張しているが、占領下にある以上、黄河下流域の住民救護は、日満側が行うしかない。

 この負担も、日本にとっては重いものだった。 

 ご意見、ご感想をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ