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第6章ー15

 共産中国軍の反攻の皮切りが、黄河の堤防の大破壊だった。

 5月15日未明、開封市東部において、黄河の堤防の右岸(南岸)側が、複数の箇所で(なお、流出する水の圧力により、堤防は更に崩れることになる。)、大規模に爆破された。

 これによって、河南省から、安徽省北部、江蘇省北部は、大洪水に見舞われることになった。

 また、これによって、華北方面軍の南下は、この黄河の大洪水によって、機甲軍団を除き、一時的にとん挫することになった。


「しまった」

 華北方面軍の参謀長の山下奉文中将は、黄河の堤防の大破壊の第一報を聞いた時に、そう呻いた。

 色々な面で不味いことが起きるのを、山下中将は即座に察したのだ。

 そして、山下中将の感覚を、多くの日本政府や軍の上層部も共有することになった。


「黄河の堤防破壊は、日本空軍の大空襲によるものである。日本空軍は、未明と同時に黄河の堤防に対する集中爆撃を行い、黄河の堤防を完全に破壊した。これにより、多くの中国人民、数百万人が洪水の犠牲になるだろう。我々は、日本による数百万人もの中国の人民虐殺を断じて許すわけにはいかない」

 共産中国政府は、即座にそう報道し、各国に駐在する共産中国政府の外交官は、各国の政府に対して、日本政府に対して、厳重な抗議を送るように働きかけた。


 それを受けて、独ソ両国政府は、日本に対して、即座に中国からの全面撤兵、共産中国政府に対する多額の賠償金支払いを求めた。

 日本の米内光政首相が、それは事実無根であり、断固、拒否すると声明を発表すると、ここに日本の侵略主義は完全に明白となった、我々は、中国の人民と連帯して、(共産)中国政府に対する大規模な支援を行い、日本の侵略と戦い抜く、と独ソ両国政府は、更に公式に日本政府を非難した。


 日本政府にとって、幸いなことに、この共産中国政府の自作自演の黄河の堤防破壊の謀略は、独ソ両国政府(最も両国政府も、共産中国政府の自作自演なのは、内心では、ほぼ察してはいたのだが。)以外には、通用しなかった。

 英米仏等の日本寄りの各国政府は、日本空軍が、そのような黄河の堤防を意図的に爆破するような作戦を行うはずがない、何故なら、自国の陸軍の進撃を妨害してしまうからだ、と冷たい反応を示し、暗に共産中国政府の自作自演だ、と言外に言った。

 伊政府をはじめとする中立諸国政府の対応も、大同小異だった。


 また、共産中国政府が情報を完全に管制している、と言っても過言ではない共産中国のいわゆる領内の住民は、共産中国政府の報道以外に基本的に触れることは無かったので、黄河の堤防破壊については、共産中国の報道を、基本的に信じた。

(何しろ、折に触れて、共産中国政府は、黄河の堤防破壊を、日本軍の手によるものと報道し、住民に対して、反日報道に努めたのだ。

 嘘も100回言えば、絶対の真実に、聞く人にとっては、成るのである。)


 だが、実際に洪水の被害に遭った黄河下流域の住民にとっては、真実、共産中国による黄河堤防の破壊は間違いのない事実だった。

 何しろ、洪水によって、大量の死傷者を出し、農地も荒れ果てる羽目になったからである。

 また、黄河の流路は完全に変わり、それによっても、農地の復興に苦心する羽目になった。


 そして、洪水により、日満連合軍が苦戦するようになり、徐州作戦終了後に、日満連合軍が、黄河下流域の住民救護等に悪戦苦闘するのを、実見することになったことから、日満側が主張する、黄河の堤防破壊は、共産中国政府による自作自演説を、黄河下流域の住民の多くは、数年後には信じるようになった。


 だが、それはまだ先の話であり、日満連合軍は、黄河の堤防破壊に苦しむことになった。

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