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第6章ー8

 だが、山下中将にしてみれば、勝算が十分に立つ作戦であった。

 まず、第一に、スペイン内戦で戦い抜いた日本空軍の精鋭の搭乗員達が、続々と帰国を果たしており、その戦訓を周囲に伝えると共に、自らも中国内戦に参加するために派遣されてきていることだった。

 言うまでもなく、これまで守勢に徹していたことで確保されていた教官が、順調に人材の育成を続けていたことから、日本空軍の人材も順調に増えつつあった。

 更に、日本空軍の軍用機は、これまでの大量生産体制の蓄積もあり、速やかに増産体制が整いつつある。

 こうして、日本空軍の人員、機材共に充実しつつある現実があった。


 その一方で、哀しいことに、この当時の共産中国には、航空機、軍用機を大量に国産化する工業基盤が(共産中国の自己宣伝とは裏腹に、)、全く無いといっても過言ではなかった。

 そのために、日本空軍と戦うための共産中国空軍の建設に際しては、独ソからの軍用機の供給に、共産中国は頼らざるを得なかったのだが、独ソから供給される軍用機は、往々にして旧式化した代物だった。


(独ソの弁護を敢えてするならば、それこそ、自国のための軍用機製造が最優先であり、共産中国空軍のために、最新鋭の軍用機を供給する余裕は、この当時の独ソには無かった、というのが現実だった。

 それ程のことをしたにも関わらず、独ソは、日英米に対して、質量共に劣る空軍力をもって、第二次世界大戦中は戦わざるを得なかった。)


 このようにして、日満連合軍は、徐州作戦において、航空優勢を完全確保できるめどを立てつつあった。

 更に、この航空優勢は、敵である共産中国軍の最前線から後方までを、存分に叩ける程の優位に立てる、と考えられるものでもあった。

 最前線が突破された際、後方の部隊が対応して駆けつけようにも、空襲によって移動がままならないようでは、どうにもならない、というのが現実である。

 こうしたことからも、山下中将以下の日満連合軍は、優位を確信できた。


 なお、当時の日本の軍用機に搭載された無線機等では、地上と充分な意思疎通等ができるのには、技術的にいろいろ困難だった、という指摘もあるが、それこそ、航空部隊と地上部隊の直協任務というのは、第一次世界大戦から試行錯誤が繰り返されてきた分野である。

 確かに、当時の技術では、打てば響くような地上部隊と航空隊との連携は不可能ではあったが、だからといって、地上部隊と航空隊の連携が全くできない、という訳ではなく、それなりに効果的な連携が、当時から可能だったのである。


 こういった背景から、山下中将が立案した徐州作戦の作戦計画は、華北方面に展開する日満連合軍司令部の会議において最終的には採用され、更に、(土方歳一中佐のように、難色を示す声もあったが)華中方面軍司令部でも了承されることになった。

 徐州作戦の発動は、両司令部が協議した結果、最終的に5月1日を期して、ということになった。


 この作戦計画は、細部は言うまでもなく秘められたままであったが、徐々に末端にまで、骨子は水がしみわたるように広まっていった。

 作戦秘匿を幾ら心がけようとも、約60万人もの部隊が再展開していくのである。

 骨子を隠しぬくのは、不可能な話だった。


 実際、徐州作戦が終わった後、共産中国軍の捕虜を尋問したところ、捕虜の一部は、日満連合軍の攻勢近し、という情報を、徐州作戦開始前に把握していたことが判明している。

 とはいえ、大規模な作戦開始が近づいていることが幾ら分かっていても、その作戦の詳細が分からねば、迎え撃つ方は効果的な迎撃ができない。


 日満連合軍の徐州作戦発動の際、共産中国軍の防戦は効果的とは言えないものとなった。

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