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第6章ー6

 同じ頃、北京でも日満連合軍によって、最終的な作戦計画案を討議する会議が開かれていた。

 日本から派遣された部隊、華北派遣軍の総司令官は、寺内寿一大将が務めており、満州国軍の総司令官は、李宗仁将軍が務めていた。

 最も、李将軍が見るところ、寺内大将は、完全にお飾りで、実際に華北派遣軍を握っているのは、華北派遣軍参謀長の山下奉文中将だった。


 ま、仕方あるまい。

 李将軍は、内心で思った。

 寺内大将は、(第一次)世界大戦で、欧州に赴いていない。

 山下中将以下、世界大戦の際に、欧州で血を流し、戦車と航空機の組み合わせによる戦場を実見した面々からしてみれば、寺内大将の考える作戦等は古臭いのだろう。

 寺内大将自身も、それを痛感しているようで、山下中将らに、実際の作戦立案を任せ、自らは華北派遣軍司令部の内外との折衝役に専念している。


 山下中将は、張り切って作戦を立案していた。

 日本陸軍が主力となって戦うとなると、日露戦争以来のこととなる。

(日露戦争より後の戦争、(第一次)世界大戦や、日(英米)中限定戦争、満州事変等は、どうのこうの言っても、日本では、陸軍よりも、海兵隊が主力となって戦っていた。)

 そして、華中派遣軍を含めれば、800両以上の戦車を投入され、多数の航空機も支援に当たり、後方警備の満州国軍も含めるならば、20個師団以上の兵力が、徐州会戦に投入されるという大作戦なのだ。

 作戦立案者として、これ程の晴れ舞台は無かった。


「奉天会戦時の満州軍の作戦を立案した児玉源太郎将軍よりも、自分が作戦を立案しないといけない戦域は広大で、かつ兵力も多い。これ程の大作戦の計画を立てられるとは、我が生涯の誉れだ」

 山下中将は、内心の滾りを迎えきれずに、そう呟いた。

「更に言えば、それから30年程しか経っていないのに、新兵器が数多、誕生している」

 日露戦争時には、影も形も無かった戦車や航空機等々が、この戦場には投入されるのだ。

 しかも、試作品ではなく、通常の兵器として。


「児玉閣下が、この光景を見たら、腰を抜かすかな」

 山下中将は、更に呟いたが、その後で、自分で自分の首を横に振りながら言った。

「いや、それより年上の将帥が、存分に使いこなしたではないか。児玉閣下が生きておられたら、腰を抜かすどころか、わしなら、あいつより、もっと上手く活用する、と呟かれそうだな」


 山下中将は、林忠崇侯爵の顔を思い浮かべた。

 もし、(第一次)世界大戦時に、児玉閣下が、生きておられたら、そして、林侯爵の代わりに、日本から欧州へ派遣された部隊の指揮を執られていたら、どんな戦果を挙げておられただろうか。

 山下中将は、ふと、考えざるを得なかった。


 ちなみに、山下中将の立てた作戦は、基本に忠実な作戦と言っても、過言ではなかった。

 華北派遣軍に所属する日本の3個機甲師団を、まとめて投入し、強力な槍の穂先として、作戦区域の最西端を急進させて、共産中国軍の戦線を突破させて南下させる。

 残りの日本の華北派遣軍所属の9個師団は、徒歩の歩兵師団であることから、ゆっくりと南下していき、共産中国軍に圧力をかける助攻を行う。


 そして、それに協力する華中派遣軍、6個海兵師団に対して、山下中将から与えられた任務は、常識から考えれば、無理としか言いようがないものだった。

 海兵師団が、いわゆる自動車化歩兵師団になっていることから、山下中将は、華中派遣軍に対し、機動力を駆使した急進撃を行い、速やかに華北派遣軍の機甲師団と合流し、徐州方面に展開している共産中国軍の西方への脱出を阻止し、包囲殲滅することを求めていた。


 この任務を最初に聞いた際、土方歳一中佐が、無理だ、と即断したほどだった。

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