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第6章ー4

 岸総司少尉が退出した後、土方歳一中佐は、改めて考えを巡らせた。


 5月1日を期して発動される徐州作戦、この作戦が終わった後、少なくとも1年、多分、3年は、日満連合軍が、共産中国軍に対して、攻勢を取ることは無いだろう。

 この作戦を成功させることにより、大雑把に言って、上海から南京を経て、徐州から済南、保定、張家口を結ぶ線を、日満連合軍で確保する。

 省名で言うならば、河北省、山東省、江蘇省、安徽省の4省を、満州国、蒋介石政権の領土として確保しよう、という作戦だった。


 そして、長期不敗戦態勢を、共産中国軍に対して、日満連合軍は確立する。

 その後は、共産中国軍からの寝返りを、日満連合軍は促し続けて、最終的な勝利を収めようという、真っ当と言えば真っ当な作戦が立てられていた。


(なお、この作戦計画に対しては、当時から批判が絶えない。

 そんな長期不敗戦態勢を確立して戦い抜く、というのは、長期戦により、日本の財政を破たんさせる悪手である、短期決戦計画により、中国本土全土を占領する、そういった速やかな勝利を、日本は追い求めるべきではないのか、という批判が絶えないのだ。)


 投入される兵力も、日満連合軍の総力を挙げる、と言ってよい規模だった。

 まず、ハンマーとなる北京方面の部隊は、3個機甲師団を含む日本陸軍12個師団だった。

 鉄床となる南京方面の部隊は、日本海兵隊6個師団である。

 また、その間の後方警備のために、満州国軍6個師団が投入される。

 そして、この作戦が完了した後、海兵隊6個師団は、日本に帰還する予定になっており、陸軍も歩兵師団6個以外は動員を解かれ、帰還する予定だった。


 前述した(日本は短期決戦を目指すべき、という)批判者からすれば、ご都合主義にも程がある発想だ、中国本土全土を占領する計画を、何故に日本陸軍は立てなかったのか、日本と満州国の陸軍を総動員すれば充分可能だった、と言われるが、そんな計画は、そもそも無理、と日本の陸海の軍部の幹部は、判断していたのである。

 現実的かつ、可能な発想として、上記のような戦争計画を、日本の陸海の軍部は立てざるを得なかった。


 だが、その予定通りにはいかない、と中国での戦闘経験が長い土方中佐は予測していた。

 というか、海兵隊の幹部の多くが、そう判断していた。

 陸軍の参謀本部は、この作戦により、共産中国軍に大打撃を与えることができ、日満連合軍12個師団が残れば占領地の確保ができる、と主張している。

 しかし、海兵隊の多数派は、それは楽観し過ぎだ、と考え、意見具申を参謀本部にしていた。


 実際、投入する兵力だけを考えれば、土方中佐ら、海兵隊幹部も負ける、とは微塵も考えてはいない。

 それこそ、例え、共産中国軍が100万の大軍をもって、徐州防衛に当たったとしても、後方部隊を含めれば、日満連合軍は60万もの兵力を持つのだ。

 航空優勢を確保し、陸戦兵力の質的優位にもある日満連合軍に負ける要素は無かった。

 それこそ、共産中国軍が、200万の大軍であっても勝てるとさえ、土方中佐自身が判断していた。


 だが、その後が問題だと、土方中佐をはじめとする海兵隊の多数派は、更に考えていたのである。

 中国の民衆の、日清戦争以来の歴史的経緯からくる反日感情は、極めて根強いものがある。

 占領地を確保イコール、満州国に心服するという事はない、占領地を確保しても、共産中国軍に味方し、抗日戦争に奔る中国の民衆は絶えないだろう、と土方中佐以下の海兵隊の幹部の多くが考えていた。


 そういった昏い予測をしている海兵隊の多くの幹部にしてみれば、徐州会戦で勝利を収めることで、長期不敗戦態勢が確立できる、とは思えなかったのである。

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