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第5章ー5

 そして、1937年12月半ばには、南京市も日本海兵隊の包囲下に落ちた。

 長江(揚子江)上には、日本海軍の砲艦や二等駆逐艦が展開することで、日本軍は、水も漏らさないような包囲網を築き上げ、一粒の米粒も南京市には届かない、と謳われる状況に陥った。

 この時、南京市も、北京市と同様の事情から、1週間分しか食料がなかった。


 1937年の年末には、北京市、南京市共に、市民の間に飢餓が蔓延しだした。

 独ソを中心とする赤十字の面々は、北京市民、南京市民のために、食料の搬入を認めるべきだと、日本政府に訴えたが、日本政府は拒否した。

 北京防衛軍、南京防衛軍が、武装解除の上、投降することが、北京市や南京市への食料搬入の条件だ、と日本政府は主張した。


 進退窮まった北京防衛軍司令部や、南京防衛司令部は、成都に移転した共産中国政府に対して、降伏許可を求めたが、共産中国政府は、全滅するまで戦い抜け、と命じ、日本政府に対して、非人道的な対応を非難し、北京市や南京市に食料の搬入を認めるように主張した。

 だが、その食料が、北京防衛軍や南京防衛軍の食料に転用されることが自明である以上、日本政府の対応は変わらなかった。

 日本政府に言わせれば、北京市民や南京市民を避難させなかった共産中国政府が、北京市民や南京市民に蔓延する飢餓の責任を負うべきだった。


 北京市民や南京市民の中には、闇等に乗じて、それぞれの市からの脱出を図ろうとする者も出たが、その中に北京防衛軍や南京防衛軍は、少しでも包囲網を破ろうと、便衣兵を紛れ込ませ、日本軍に攻撃を行ったことから、日本軍は、脱出しようとする者を攻撃せざるを得なくなった。

 そのため、脱出者はいなくなり、飢餓は深刻化する一方となった。

 なお、共産中国政府は、便衣兵は一人もおらず、日本軍のでっち上げだと主張した。

 負傷して捕虜となった者が便衣兵だと証言しても、生命と引き換えにでっち上げの証言を、日本軍に強要された、として逆に日本政府や軍を、共産中国政府は非難する有様だった。


 1938年2月末頃には、北京市、南京市共に、末期的な状況に陥り、市民に餓死者が続出しだした。

 このような状況を見て、日本軍は、それぞれの市の防衛軍に、最終の投降勧告を行ったが、共産中国政府は、将兵が全滅するまで戦い抜くことを、それぞれの市の防衛軍に命じ、それぞれの市の防衛軍も、政府命令に従うことを宣明したことから、日本軍は、両市に対して、総攻撃を開始した。


 とはいえ、3か月近い飢餓に苦しんでいた北京、南京両市の防衛軍の将兵は、まともに銃を撃つことができる将兵が稀な有様で、両市共に丸3日程で、日本軍の占領下に置かれた。


 そして、飢餓に苦しんでいた北京、南京両市民に対しては、日本軍によって、食料が提供されたのだが。

 予め対策を十分に練っていた海兵隊が対処した南京市では、リフィーディング症候群が、そう発生することがなかったが(その代り、海兵隊は、不人情から、不味くて少量の食料を、南京市民に提供したという悪名を長く被った。)、陸軍が対処した北京市では、リフィーディング症候群が、大量に発生してしまい、一説によれば、餓死者も合わせると北京市全体で数十万人の死者を出す大惨事となった。


 かくして、北京市と南京市は、日本軍(及び満州国軍)の制圧下に置かれたが、これは、まだ中国内戦全体から言えば、まだまだ序盤に過ぎなかった。

 そして、海兵隊をはじめとする日本軍は、中国内戦にのめりこまざるを得ず、日本から動員された将兵は中国に赴くことになった。

 その中には、海軍兵学校を卒業したばかりの岸三郎提督の実の孫にして養子の岸総司海兵隊少尉の姿もあった。

 第5章の終わりです。

 次から第6章、徐州会戦の話になります。


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