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第5章ー4

 1937年12月初め、第3海兵師団の作戦参謀を務める土方歳一中佐は、南京市を望見していた。

 かなりの悪戦苦闘を強いられたが、何とかなった、という想いを、土方中佐は噛みしめていた。

 1937年9月初め、神州丸に乗って、第3海兵師団の一部の将兵と共に、上海港に降り立った時に土方中佐は、よくもまあ、という想いをしてしまったくらいだ。

 この時、上海防衛のために展開していた日本海兵隊は、海兵2個連隊を基幹とする部隊に過ぎず、共産中国軍5個師団の攻勢に悪戦苦闘を強いられていた。


 それこそ、「伊勢」、「日向」を中心とする第一航空戦隊による直接航空支援と、揚子江河口近辺で座礁するリスクを冒して行われた日本海軍の諸艦艇による艦砲射撃によって、1937年9月初めの時点では、何とか上海防衛に当たる日本海兵隊の防衛線は守り抜かれていた現状にあったのだ。

 本来なら、河川用の砲艦なり、精々、二等駆逐艦なりが行うべき河川での艦砲射撃任務に、一等駆逐艦の「吹雪」級どころか、軽巡洋艦である「夕張」や「湧別」まで、日本海軍が投入せざるを得ないまでに、上海防衛に当たる海兵隊は追い詰められていた。


 この苦境は、日本空軍も把握しており、本来なら、上海近郊に整備された空港に、航空隊を展開すべき状況にも関わらず、その余裕がないとして、敢えて、台北等からの渡洋爆撃が敢行された程だった。

(最も、渡洋爆撃自体は、結局、3日間、延べ5回行われただけだった。

 スペインに派遣された最精鋭の搭乗員がいない、という事情もあったのだろうが、5回の爆撃を行った後に遺された軍用機は、出撃前と比して半数以下になる、という大損害を被っては、日本空軍としては、これ以上の損害を避けるために、渡洋爆撃を中止せざるを得なかった。)


 だが、第1海兵師団と第3海兵師団が、上海防衛に駆けつけたことで、日本海兵隊の防衛線は、格段に強化されることになった。

 更に、第2海兵師団と第4海兵師団が、1937年10月初めに上海に駆けつけたことで、日本海兵隊は、兵力に余裕ができ、損耗していた当初、上海防衛の任に当たっていた2個海兵連隊等を、第5、第6海兵師団に改編するために、本土に帰還させることができた。


 この時点でも、日本海兵隊の猛烈な反撃により、2個師団全滅と判定される大損害を受けつつ、後方からの増援により、5個師団相当の兵力を、共産中国軍は、上海攻略のために展開していたが、日本海兵隊は、4個師団が揃ったのを機会に、完全な攻勢防御に転じることにした。


 各師団付属の1個戦車大隊、合計すれば、4個戦車大隊、200両以上を支援に投入し、完全自動車化された4個海兵(歩兵)師団による攻勢防御である。

 準備に多少、手間取ったが、10月半ばに開始された日本海兵隊の攻勢は、ろくな対戦車兵器を持たない共産中国軍5個師団を壊走のやむなきに至らせることになった。

(独製Pak36を、共産中国軍は保有していたが、97式中戦車どころか、旧式の89式中戦車の正面装甲(傾斜80ミリ)でさえ、この対戦車砲では貫通不可能であり、当時の共産中国軍は、独は旧式の不良対戦車砲を中国に提供した、Flak18を我が国に提供すべきだった、と非難している。)


 そして、上海を拠点とする日本海兵隊の攻勢防御は、1937年12月初めの時点で、南京市をうかがうまでの戦果を挙げたという訳だった。

 勿論、この間に、日本海兵隊が死傷者を出さなかったわけではない。

 中国内戦再開から4か月余りの戦闘による損害を補充する必要性が生じ、海軍兵学校第65期の卒業が止む無く約3か月繰り上がり、1937年12月末の卒業になったくらいだった。 

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