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第5章ー3

 こうした現状判断を米内光政首相や蒋介石が下したのは、(詳しくは次話以降で描くが)日満側にとって、上海方面の戦況が、かなり好調なのも大きかった。

 日本海兵隊は、4個師団を10月末までに上海方面に展開することに成功し、これまでに培った艦砲射撃や航空支援を活用する戦術により、南京近郊にまで12月初めの時点で逆侵攻に成功していたのである。


(もっとも、兵力が基本的に不足している海兵隊としては、攻撃的な機動防御を展開しないと、共産中国軍の攻勢に耐えられない、というのも、その裏面であった。

 海兵隊としては、ある程度の土地を確保しないと、共産中国軍が本格的な攻勢に転じた際に、後退する余地がなくなってしまうからである。

 この点、満州本土へ後退の余地があった満州方面の方が、完全な守勢に徹するのには向いていた。)


 そういったことから、とりあえず北京と南京を占領するのを、第一段階の目標とすることになった。

 年内に北京と南京を占領し、その後、スペインから帰還してきた将兵を再編成して、編制される部隊を来春に増援部隊として投入し、上海以北の中国沿岸部を制圧するのが、第二段階の目標である。


 なお、蒋介石の本音としては、中国本土全てを占領したかったが、これまでの諜報活動から、中国本土が疲弊の極みに達していることが把握されたことから、少しずつ占領地を増やすしかない、という判断を下さざるを得なかった。

 そして、日満が、中国沿岸部の制圧にこだわったのは、沿岸部ならば、港を活用した物資の輸送が容易であり、住民を支援しやすいという事情もあった。


 現地調達で食料が確保するどころか、現地住民に食料を提供せねばならないのである。

 その話を聞いた日本陸軍の将官の1人が(永田鉄山将軍とする資料が多いが、小畑敏四郎等、別人説をとる資料もある。)、

「我々は、何のために中国内戦に介入したのだろう。中国本土の住民を飢えから救うために、中国内戦に介入したのだろうか」

 と嘆く羽目になる事態であった。


 冬季にも関わらず、満州に展開する日本陸軍は、北京を目指して進撃した。

 その兵力は8個師団と、正面にいる共産中国軍約20個師団の半分以下の劣勢ではあったが、質の面では圧倒しており、その中には急きょ改編が完了した虎の子の機甲師団2個が含まれていた。


(厳密にいうと、第二次世界大戦以降に登場した機甲師団とは異なり、この頃の日本軍の機甲師団は、完全自動車化を完了した歩兵と砲兵部隊に、戦車部隊を加えたものに過ぎない。

 口の悪い海外の軍事研究者に言わせれば、機甲師団の紛い物と呼ばれる代物だった。

 機械化歩兵連隊と自走砲兵連隊等を、日本の機甲師団が編制に含むのは、まだ未来の話である。)

 

 また、後方警備は満州国軍4個師団が当たっており、満州国に協力的な住民の協力もあって、日本軍は側面や後方を気にせずに進軍することができた。


 97式中戦車を事実上の盾に使いつつ、機甲師団を先鋒にして、日本軍は前進し、1937年12月中旬に北京市は、日本軍の包囲下に置かれた。

 北京市に突入しての市街戦が展開されると見る日本国内外の軍事関係者が多かったが、日本軍は北京市を包囲に留め、降伏を勧告した。

 下手に市街戦を展開して、市民虐殺の嫌疑を受けることを、日本軍は嫌ったのである。


 だが、降伏勧告を北京防衛軍は拒否。

 ここに北京包囲戦が開始された。

 しかし、北京防衛軍には、問題があった。

 北京市民を養う食料は、北京市内に1週間分しかない有様だったのである。

 日本軍は、降伏を拒絶した場合、北京市に総攻撃をかけるだろう。

 そうなった場合、北京陥落時に、日本軍に食料を与えることになると考えられたからだった。

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