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第5章ー2

 とはいえ、日本空軍が、本格的な攻勢に転じるのは、スペインに派遣している将兵達が帰還してからという態度を取っている以上、直接的な地上支援が余り望めない日満連合軍の地上部隊は、じりじりとした前進に徹さざるを得なかった。

 日本陸軍参謀本部としては、直接的な地上支援を積極的に行うように、空軍に対して要請したが、それは航空部隊の被害を続出させる危険性が高いことから、空軍は、山本五十六空軍本部長以下、翌春まで消極的な態度を取り続け、やむを得ないと判断された場合のみ、直接的な地上支援を行った。


 だが、一時は遼河を越えるのではないか、と思われた共産中国軍の進撃が止まり、1937年11月以降は逆に日満連合軍の攻勢の前に、共産中国軍が退却のやむなきに至ったのは事実だった。

 このような状況に陥った共産中国軍は、考えを切り替えることにした。

 日満連合軍を、奥地に引き込み、いわゆる人民の海によって溺れ死にさせようという考えである。

 中国の人民10人で、日満兵1人を殺していけば、最終的には、日満兵の方が先に枯渇してしまう。

 冷徹と言えば、冷徹な作戦だった。


 もっとも、現実的に考えて、それが妥当な判断なのも事実だった。

 万里の長城以北、いわゆる満州国領内の民衆の共産中国軍への敵意は、急激に高まっており、分隊以上で基本的に行動しないと、万里の長城以北では、共産中国軍の将兵は、安心して行動できない状況に、この頃には突入していた。

 夜間に歩哨として立っていると、交代時刻までに狙撃されて戦死するという事態が、稀ではないという事態まで引き起こされている。


 このため、1937年11月末に、万里の長城以北を、日満連合軍は回復することに成功した。

 問題は、更なる前進を試みるか、だった。

 蒋介石としては、この際、中国統一の第一段階として、少しでも領土を確保することを望んだ。

 日本としても、対ソ戦の際の縦深確保のためにも、河北省や山東省、江蘇省等、具体的な線で言えば、上海以北の中国沿岸部を、蒋介石政権に確保させるべきでは、という意見が出た。


 特に、日本海軍が、その意見に積極的だった。

 海軍としては、対ソ戦時に、中国沿岸が、ソ連潜水艦の基地として利用されることを警戒した。

 それを阻止するためにも、予め中国の沿岸部を蒋介石がこの際、確保するようにすべきだ、と堀悌吉海相以下、海軍の多くが主張したのである。


 日満の友好国のこの中国本土進攻への態度だが、米韓は中国市場回復の好機であるとして、日満の中国本土への侵攻を積極的に支持した。

(背景に、中国内戦特需によって、米韓の景気が下支えされているのも大きかった。

 中国内戦が下火になっては、景気が腰折れしてしまう。)


 一方、英仏の態度は、微妙だった。

 中国内戦の激化が、英領インドや、仏領インドシナの民族運動を刺激するのではないか、と懸念した。

(これは、全くの杞憂という訳ではなかった。

 例えば、第二次世界大戦後のインドシナ紛争で、独立戦争を戦ったベトミンが、ソ連や共産中国の支援を受けて活動を始めたのは、この頃だったのだ。)

 また、英国にしてみれば、英領香港が戦禍にさらされることも避けたかった。

 そのために、英仏は、華南方面への日満連合軍の進撃については、消極的ながら反対した。


 こうした外国の反応もあったことから、米内光政首相と蒋介石は、1937年12月初めの会談により、万里の長城を越えた中国本土への日満連合軍の進撃、上海以北の中国沿岸部の制圧を目指す作戦の発動を決断することになった。

 とはいえ、軍の質に差がある以上、日本軍が先鋒を務め、満州国軍が後方に回るのはやむを得ない話で、日本軍は苦闘することになった。

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