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第4章ー7

 こういった動きに大韓王国やソ連といった周辺諸国が動かない訳がなかった。

 また、満州に利権を持つ米国が動かない訳もなかった。


 とはいえ、ソ連の場合、赤軍こそトハチェフスキー元帥が自死を選んだことで、そんなに被害が出なかったものの、それ以外では、いわゆる大粛清による社会全体の混乱、被害が大きかった頃であり、派手に動けるような状況ではなかった。

 そのために、間接的な支援を共産中国に行うに止まっている。

 具体的には、軍事顧問団の派遣、武器等の援助といった行為である。

 また、満ソ国境に大規模な部隊を展開することで、日満韓の三国の軍の牽制もしている。


 複雑なのが韓国だった。

 本音を言えば、中国内戦再開の暁には、満州国に対して、軍隊を派遣する等の援助を行わねばならない立場なのが、韓国政府上層部にも分かってはいた。

 だが、ソ連と韓国が国境を接し、ソ連軍の脅威に直接、自国が晒されている以上、軍隊の派遣等は躊躇われるものがあった。

(実際、後述するが、ソ連と韓国との間には、張鼓峰事件が翌年に起こっている。)


 また、軍隊の指揮権の問題からも、韓国は軍隊の派遣に消極だった。

(これまでの様々な経緯から、満州国は、韓国軍が援軍としてきた場合には、韓国軍に対して、自国軍の指揮下に入ることを求めていた。

 ちなみに、日本軍は独自に指揮権を保持した。)

 そのため、日米からの要請もあり、満州国への物資等の援助に、中国内戦の間は、結果的に韓国は徹することになるのである。


 米国政府の立場も複雑だった。

 いわゆる南満州鉄道や黒竜江省油田等、満州の地に米国は様々な利権を持っていた。

 そして、それが脅かされた場合、米国政府としては、介入しないといけないのは明らかだった。

 だが、(第一次)世界大戦の被害の結果、米国民の多くが内向きな考えになっていた。

 そして、皮肉なことに、日本という同盟国が、満州利権に関しては、米国にとっては存在しているという現状があったのである。


 更に言うならば、米国政府が状況を分析する限り、ソ連が参戦しないならば、中国内戦に、米国が軍隊を派遣せずとも、日本が介入してくれるならば、満州国は健在である、と考えられた。

 そういった現状からすれば、米国政府が軍事介入しないといけない必然性は低かった。

 また、軍事介入を、米国が、中国内戦に対して行った場合、米軍に死傷者、乃至は捕虜が出るのは、必然的な話である。

 そうなった場合、米国世論は、中国内戦介入反対に大きくぶれる可能性があった。


 こういった諸々の事情を考え合わせた結果、ルーズヴェルト大統領率いる米国政府は、中国内戦再開に際して、日本や満州に対して、武器輸出等の様々な援助行為は行うが、実動兵力の派遣は断固拒否した。

 こういったことから、中国内戦再開に際して、軍事兵力の派遣を行った外国は、事実上、日本だけ、という事態が引き起こされるのである。


 勿論、独ソ共に、軍事顧問団の派遣や武器輸出等を、共産中国に対して行ってはいる。

 だが、実戦兵力の派遣まで行った日本と比較した場合、明らかに中国内戦介入の度合いに差があると言われても仕方のない事態ではあった。

 更に言うならば、日本の場合、国内で動員体制まで取っているのである。

 韓国でさえ、平時体制を維持したことを考えれば、日本の行動は、諸外国と比して、突出していると非難されても仕方のない話だった。


 なお、英仏等は、目の前の対独戦準備が精一杯で、中国内戦に対して、徹底的な厳正中立という態度を崩さないまま、第二次世界大戦開戦という事態にまで至ることになる。

 こうしたことからも、中国内戦は、共産中国対満州国+日本、という様相を呈することになるのである。

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