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第4章ー6

 そういった動きが、日本国内である間にも、山海関近郊を中心とする満州国と共産中国の事実上の国境地帯の現地情勢は、悪化の一途をたどっていた。

 山海関近郊では、共産中国軍が、数個師団単位で集結し、本格的に事実上の国境線となっていた万里の長城を越える準備に取り掛かっていた。

 また、共産中国軍は、山海関のみならず、喜峰口にも1個師団相当の部隊を集結させ、満州国への助攻を行う態勢を取った。


 言うまでもなく、首都である北京周辺には、首都防衛という名目で、別途、約10個師団の部隊が集まりつつあり、それらが、いざという場合、満州国への攻勢兵力に転じるのは、自明の事柄になりつつあった。

 また、共産中国各地において、治安維持にあたっている部隊を引き抜いて、首都北京方面へと集める動きも顕在化しつつあった。


 前田利為中将は、日本軍情報部の総力を挙げて、そういった情報を収集していた。

 正確な情報を掴むのこそ、勝利への近道である。

 前田中将は、満州国侵攻に使われる共産中国軍の総兵力は、第一次攻勢で約10個師団、その後、約10個師団が、主に補充と再攻勢の為に、更に投入されると試算した。

 更に、その後は、逐次、兵力を投入していくつもりだろう。


 その気になれば、100個師団以上が動員可能な共産中国軍が、それだけしか第一次攻勢で投入できないのは、結局のところ、補給問題があった。

 自動車化がそれなりに進んでいる日本軍ならともかく、共産中国軍は、鉄道と馬車に、侵攻作戦の部隊への補給を基本的に依存せざるを得ない。

 そのために、中国内戦を本格再開し、満州国領内への侵攻作戦を行うのに大兵力を投入できないのだ。

 共産中国各地から首都北京のある河北省へと向かう鉄道網は、それなりに整備されているが、河北省から満州侵攻に使える鉄道網の輸送力では、何十個師団もの兵力を投入しての侵攻作戦を賄う補給を行う能力はとても無かった。


 というか、前田中将以下、日本軍情報部の主な面々が、実際問題として、第一陣として、10個師団もの侵攻作戦を共産中国軍は展開できる補給能力があるのか、疑問を覚える有様だった。

 何しろ、共産中国では、侵攻軍の補給のために、自転車までかき集めようとしているというのだ。

 確かに、自転車を改造し、日本で言うところのリヤカーをけん引させることで、人力での補給もかなり増大することは事実である。

 そこまでして何とか10個師団を投入しての満州国への第一次侵攻作戦が可能ではないか、というのが、前田中将らの見積もりではあった。

 とはいえ、補給面から共産中国軍の侵攻作戦は、かなり苦労するのは間違いなかった。


 これに対処するために満洲国軍も、事実上の国境線である万里の長城へと集結しつつあった。

 とはいえ、そもそもの人口にかなりの差がある以上、満州国軍の兵力はできる限りかき集めても、大したものにはならなかった。

 それにいわゆる満ソ国境をがら空きにする訳にはいかない。

 日本陸軍も、満州国内に展開しているとはいえ、満州国軍は総動員をかけても20個師団を動員するのがやっとの国力しかないのだ。

(当時の満州国の人口は、約4000万人台といったところであり、人口からすれば、もっと動員できそうに見えるが、国土開発にも傾注せねばならず、20個師団以上を動員し、戦争を遂行しては、文字通り国の破綻が目に見える有様だった。)


 こういったことから、とりあえず蒋介石は、予め万里の長城線に展開していた部隊と併せて4個師団を差し向けて遅滞防御に徹し、日本軍の来援を待って、反攻に転ずる計画を立てることにした。

 この蒋介石の動きに、日本の軍部も賛同し、満州へ部隊を送り込もうとしていた。

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