第3章ー4
また、国際的な状況も、共産中国にしてみれば、中国内戦本格再開を目指すのに、有利な状況になっていた。
何故なら、共産中国と友好関係にある独ソも、中国内戦再開を願っていたからである。
1937年7月当時、スペイン内戦は、日英伊等が後押しするフランコ率いるスペイン国民派が完全に有利な状況になっており(1937年5月から6月にかけて行われたスペイン国民派の大攻勢により、スペイン共和派の支配領域は南北に完全に分断される状況になり、年内にはスペイン内戦が終結する、とスペインの国内外の識者は予測する状況になっていた。)、スペイン内戦の混乱に乗じて、欧州で勢力を拡大させようという独ソの思惑は、思い通りにいかなくなっていたのだ。
そして、スペインのこのような状況を見て、仏でも人民戦線政府の足並みは乱れてしまい、仏では中道右派政権が樹立されようとしつつあった。
仏が、このような状況になっては、ベルギーやオランダといった諸国も、独に対抗するために、仏と接近するようになる。
オーストリアを併合し、ズデーデン地方等も自らの領土にしたい独にしてみれば、このような欧州情勢は望ましいものではなかった。
また、ソ連にとっても、昨今の欧州情勢は望ましいとは言えなかった。
仏で人民戦線政府が樹立されている間は、仏を自国の潜在的友好国とみなせていたが、スペイン内戦の影響は、仏に中道右派政権を樹立させ、対独対決姿勢を仏に取らせつつあるのだ。
そして、英仏が、対独ソで、完全に手を組んで当たる状況になっては、バルト三国、ポーランド、フィンランド等を自国領に回復するのが、困難な事態になってしまう。
更に、英仏のバックには、日米もいる。
幾ら独ソの陸軍が強大であっても、日米は海を隔てており、圧倒的なシーパワーを誇る日米は、独ソの陸軍を事実上は無視して、英仏等を支援することが可能だった。
こういった状況を打破する手段を、当時のソ連は模索している状況にあったのである。
こうした中で、中国内戦が再開されることは、独ソにしてみれば、英仏の友好国である日米が、泥沼の戦争、中国内戦に足を踏み入れざるを得なくなることであり、英仏の支援が困難になる事態だった。
何故なら、中国内戦が再開されるということは、満州国が戦乱に巻き込まれるということであり、満州に南満州鉄道や黒竜江油田をはじめとする様々な権益を持つ日米にとって、絶対に看過できない事態だからである。
また、満州国と友好関係にある大韓王国も、中国内戦が再開されれば、これまでの共産中国との行きがかりから当然、本格的に参戦することになり、それも日米にとって、中国内戦介入を促進することになる。
(満州事変以前から、共産中国は、歴史的経緯から言っても、大韓王国の領土は、中華民族主義が及ぶものであり、中国の一部であると主張していた。
それに対し、大韓王国政府は、大韓王国の領土には、中華民族主義は及ばない、と反論し、大韓王国の政治家の一部に至っては、歴史的経緯から言えば、南満州や沿海州は、韓国の一部だと主張する現状があったのである。)
また、中国が再統一され、黒竜江省油田が、共産中国のものになることは、独ソにしてみれば、貴重な石油資源が手に入ることに他ならなかった。
ソ連は、バクー油田等があるので、独と比較して相対的に石油に困ってはいなかったが、独にしてみれば石油資源の確保は重要なことだった。
そして、モータライゼーション化が進みつつある日本にとって、黒竜江省油田は大事な存在であり、手放せない存在だった。
こういった様々な背景からも、中国内戦が本格化した場合、日米は介入せざるを得なかったのである。
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