表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/120

第3章ー3

 しかし、国家、上からの命令は絶対である。

 虚偽の数字に合わせた穀物をはじめとする農産物の供出が、現場に対しては強制され、現場の農民は飢餓に苦しむ羽目になった。

 例えば、1937年に中国内戦が本格的に再開される前年の1936年だけでも、中国本土の共産中国内では、大量の穀物が外国に輸出される一方、農民が餓死するという、一時のソ連国内、ウクライナ等で起きた悲劇が、中国本土内では起きていた。

 この1936年の共産中国国内の餓死者数であるが、飢餓による出生率低下の影響も含めるのならば、中国本土全体では、約1000万人を超えていてもおかしくない、というのが、第二次世界大戦後の調査結果が挙げる数字である(但し、正確な数字は、永久に不明のまま、中国内戦から第二次世界大戦による戦禍の被害等があるので、算出は不可能とされる。)。


 皮肉なのは、ソ連では、ウクライナ人等、ロシア人以外の民族が主に住む地域で、それが起きたのに対して、共産中国では、主にいわゆる漢民族が大量に住む地域で、それが起きたことである。

 第二次世界大戦終結後に、この実態を調査した蒋介石政権は、

「自らの民族を、これ程までに意図的に餓死に追い込んだ民族政権は、共産中国以外に存在し無い」

 と公式の報告書の一節に書いている。

 

 また、工業化にも、共産中国政権は実際には失敗した。

 例えば、鉄鋼を大増産しようとして、土法炉(原始的な溶鉱炉)を各地に大量に作り、素人の農民に作業をさせることで、何とかしようとしたが、鉄製品を溶かして、大量のくず鉄が産まれる始末で、農村からは鉄製の農具がほぼ消えたという惨状を呈す有様となった。

 だが、表面上の工業生産高は、急速に伸び、統計上では、鋼鉄生産量は日本を圧倒する有様となった。

(実際の鋼鉄生産量は、この当時の共産中国国内の正確な統計が無いので不明である。)


 また、鉄を溶かすためには、大量の燃料が必要である。

 そのための石炭等が足りなくなり、森林から木材を切り出して燃料に用いたため、農村部近隣の森林は、ほぼ無くなってしまい、それにより、森林の保水力は急激に低下した。

 それは、洪水を多発させることになり、農地の荒廃をますます深化させ、農産物の生産に多大な悪影響を与えることになった。


 こういった様々な悪政が、共産中国国内では、実際には行われた。

 しかし、表面上、統計上は、共産中国は、共産主義の導入により、日本を圧倒する工業力を持ち、農業生産高も激増したのである。

 こうした表面上の国力増大を頼みにして、共産中国の最高指導部は、中国内戦を再開して、中国再統一を目指すことになった。


 また、政府や軍の中堅幹部も、中国内戦再開を内心では願っていた。

 政府の多くの中堅幹部にしてみれば、戦争が始まれば、これまで糊塗していた虚偽の数字を、戦争による大被害であるとして、有耶無耶にできる絶好機だった。

 また、軍の多くの中堅幹部も、中国内戦が再開されれば、中国再統一によって、自らが出世できる好機になると夢見る者が多数だった。

 何しろ、今や共産中国の国力は、(様々な虚偽報告が積み上げられた結果により作られた、完全な虚像ではあったが、)アジア最強なのだ。


 そして、今や満州国は、黒竜江省油田の商業採掘が始まるようになる等、共産中国にとって、熟柿のように見える存在になっていた。

 更に、ソ連が、共産中国の味方としている以上、満州国は、韓国以外を除いて、四周を敵に包囲された状況に陥っていると言ってもよかった。

 実際にはソ連が軍事介入を行い、満州がソ連領になるのは、共産中国にとって、望むところではなかったので、共産中国は、ソ連に中立を保つように依頼していた。

 幾ら何でも小説過ぎる、と叩かれそうですが、史実の中華人民共和国は、史実でも似たようなことをやっています。

 だから、そうおかしな描写ではない、と私は考えるのですが。


 ご意見、ご感想をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ