表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/120

第2章ー5

1937年春現在のポーランドの現状になります。

 このように悪戦苦闘しながらも、戦力を仏は強化していたが、それどころではなく、どうにもならないと半ば達観していた国も幾つかあった。

 その一つが、ポーランドだった。


「独ソが手を組んでは、どうにもならないか、君の才能をもってしても」

「私の才能を高く評価してくださっておられることには、心から感謝いたしますが」

 レヴィンスキー将軍は、そこで言葉を切って、相手、ボック将軍の目を改めて見据えた。

「勝てないものは勝てません。最終的には勝てない、とは申しません。ですが、それは、ポーランドの国土や国民が、独ソによって蹂躙された後の話です」


 レヴィンスキー将軍自身が、自分自身の言葉については、今の自らの祖国ポーランドへの冷たさを感じざるを得ない状況だった。

 だが、これは、全くの事実で、どうにもならない話なのも事実だった。

 実際、ポーランド軍参謀本部の一室で、この会話は行われているのだが、会議を主宰しているボック将軍を含め、会議に参加している全員が、レヴィンスキー将軍の言葉に反論しようとせず、基本的に肯く者ばかりとなっているのだ。


 独の再軍備以来、ポーランドを取り巻く情勢は悪化する一方だった。

 ポーランドとしては、できる限りの軍拡に励んでいる。

 だが、独一国だけでも、ポーランドをしのぐ国力を持っているのだ。

 そこに、ソ連が加わっては、ポーランドに独ソに対抗できるだけの軍事力を保有できる訳がなかった。

 更に問題があった。


 ポーランドの国土は、基本的に平原地帯である。

 北はバルト海に面し、南はカルパチア山脈があるとはいえ、東西に関しては、河川以外に障害物がないと言っても過言ではない。

 そういった地形のポーランドにとって、東のソ連、西の独双方と敵対関係に陥るというのは、歴史から言っても厳に避けなければならない状況の筈である。

 だが、今のポーランドは、そういう状況にあった。


 レヴィンスキー将軍は、想いを巡らせた。

 そもそも、ソ連にとって、ポーランドは自国の一部だ。

 実際、ロシア領になっていた時代、ポーランドという名前は、完全に消え去っていたことさえある。

 それを想えば、ソ連がポーランドは自国の領土だと主張するのも仕方のない話だ。


 そして、独。

 独のヒトラー率いるナチス党は、一党独裁体制を築いており、東方生存圏を主張しているらしい。

 その東方生存圏が、どこを指しているのか。

 普通に考える限り、それはポーランドをはじめとする東欧諸国の領土しかありえなかった。


 こういった状況に置かれては、ポーランドは、独とも、ソ連とも友好関係を築ける訳がなかった。

 両国ともに、ポーランドの国土、国民を自国の意のままにしようと策しているのだ。

 こういう状況に陥っては、ポーランドとしては、古典的な遠交近攻精神で、問題に対処せざるを得ない。

 ポーランドが、独対策の一環として、英仏と友好関係を深め、ソ連対策の一環として、日本と友好関係を深めたのは、そのためだった。

 それに幸いなことに、日英仏は、第一次世界大戦の因縁もあり、直接的にも友好関係にあった。

 だが、それにも限界がある。


 レヴィンスキー将軍が見る限り、日本は対(共産)中国関係から、第一次世界大戦後も、(英仏とは異なり)間断なく軍備の整備に気を配り続け、本格的な実戦も経験していた。

 そのために、1937年現在の日本軍の(質的)実力について、レヴィンスキー将軍は、疑う余地は無いと言っても良かった。

 だが、現在の英仏軍は、第一次世界大戦による疲弊、世界大恐慌による軍改革の遅れにより、ボロボロの状態だった。

 英仏両国共に、慌てて軍備強化を図ってはいるが、ポーランドをとても救える状況にあるとは言えない有様だったのだ。

 ご意見、ご感想をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ