表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/120

第2章ー4

 仏陸軍と言えど、本来から言えば、新型の二人用砲塔を搭載した戦車を開発、増産したかった。

 だが、時間が余りにもない、と仏陸軍は考えざるを得なかった。

 仏政府が、左右両派の対立等からゴタゴタを繰り返している間に、独は、ヒトラー率いるナチス党の一党独裁体制により、効率的な再軍備を果たしてしまっており、1937年から1938年のこの当時、仏陸軍は弱体極まりない状況に陥っていたのだ。


 後世、21世紀の現在においても、何故に1938年のミュンヘン会談で、英仏は独に対して、宣戦布告を覚悟した強硬外交を行わなかったのだ、という批判が散見される。

 後知恵もあるが、日米が英仏のバックにある以上、1938年時点に、独に対して、英仏が宣戦を布告しろという意見は、当時も全く無かった訳ではない。

 だが、1938年時点では、英仏は共に再軍備を整え出したばかりであり、実際には張子の虎だった、という批判も加えられるが、額面上は独軍に対して、英仏軍が劣勢だったという事実は否定できない。


 更に付け加えるのなら、ポーランドやチェコが、英仏に味方しても、ソ連が独に味方しては、その戦力は、どう見ても独ソが、英仏等に対して優勢である。

 更に、米国内においては、孤立主義が優勢であり、日本は泥沼の中国内戦に介入を余儀なくされていた。

 こういった背景があるから、英仏の国内世論では、(第一次)世界大戦の経験からくる厭戦気分もあり、戦争回避意見が極めて強く、それもあって、ミュンヘン会談が成立したという事実があるのである。


 だから、仏陸軍は、緊急に軍の戦力強化を図る必要があったのだが、新型戦車を開発して、量産体制を整えるには、最低でも2年はかかる。

 だが、その間にも戦力強化は行われねばならない、そういった観点から、現行の戦車を少しでも強化するための方策として、(日本からの情報提供もあり)仏陸軍では、砲戦車の開発が行われることになった。

 後世の言葉で言えば、独の突撃砲と駆逐戦車、両方の性格を持った仏陸軍の砲戦車である。


 仏陸軍としては、来るべき(第二次)世界大戦に備えて歩兵支援用の戦車を少しでも増やしたかった。

 だが、旋回式砲塔、しかも二人用砲塔を搭載した戦車の新開発には時間がかかる。

 そこに、独の突撃砲開発の情報が入ってきた。

 そして、仏陸軍には、(第一次)世界大戦において、サンシャモン突撃戦車を開発した前歴があった。


 固定砲塔を搭載することにより、敵陣を突破して、戦車を縦横に活躍させて勝利を収める、という行動に不向きにはなるが、歩兵を支援し、対戦車戦闘を主に行うのなら充分だろう。

 それに大口径の砲を搭載し、車長、砲手、装填手と3人が入った(固定)砲塔を搭載することができる。

 固定砲塔の欠点は、無線等の通信活用により、ある程度は補えるだろう。


 こういった考えから、仏は既存の戦車を、砲戦車の土台に転用して、量産することにした。

 砲戦車で、当面の戦線を支え、その間に新型戦車の開発、量産体制を整えて、独を打倒しようという計画を立てたのである。


 土台となった戦車によって、様々な呼び名があるが、仏の砲戦車は、基本的にシュナイダー社が量産化した75ミリ砲を主砲としている。

 仏軍の砲戦車は、確かに攻勢には不向きで、仏陸軍の将兵の評判も芳しいとは言い難い。

 だが、1940年春に行われた独軍の大攻勢を粉砕するのに、最も役立った兵器の一つが、仏軍の砲戦車なのは否定できない事実だった。


 日本からの情報提供もあり、砲塔正面等を傾斜80ミリを標準として開発された仏軍の砲戦車は、独軍の戦車部隊にとって、厄介極まりない相手だった。

 独は気が付けば、戦車で不利になっていたのだ。 

これで、フランスの話は終わり、次からポーランドに移ります。

 尚、作中に出てくる75ミリ砲は架空の砲ですが、実質的に90式野砲の親類といえる砲です。

(90式野砲の原設計は、シュナイダー社が行っています。)


 ご意見、ご感想をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ