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第1章ー9

 こうして、いわゆる「ゼロ戦」、99式戦闘機、または零式艦上戦闘機は開発されたのだが、この開発に多大な影響を与えた米国のボーイング製B-17は、日本において、鈴木重工によってライセンス生産されることになり、99式重爆撃機として空軍に制式採用されることになった。

 そして、「ゼロ戦」と99式重爆撃機の連合編隊は、独ソ中にとって悪夢の組み合わせとなった。


 何しろB-17が、そもそも「空の要塞」と謳われた存在である。

 その重爆撃機が、十分な護衛戦闘機と共に戦略爆撃を行ってくるのだ。

 これを迎撃する独ソ中の戦闘機部隊にとっては、この組み合わせは脅威としか言いようがなかった。


 日本の「ゼロ戦」は、空軍仕様と海軍仕様で多少の航続距離の差異がある。

 だが、途中で戦闘を行わないという条件の下でのことになるが、片道1100キロ、約600海里までなら爆撃機の護衛任務を共に遂行することが可能だった。

 1940年の春以降の例になるが、英本土を飛び立った日本空軍の99式重爆撃機隊は、フランスやノルウェーの前進基地に展開した「ゼロ戦」隊と合流して、独本土に対する戦略爆撃等を行っている。

 これの対処に、独ソ中空軍は、苦慮する羽目になった。


 前線部隊の支援を重視すべきか、後方の安全を重視すべきか、というジレンマである。


 例えば、独の西部戦線攻勢は、1940年の春以降に本格化するが、独空軍の戦闘機部隊の主力は、この任務に投入されることが少なかった。

 何故なら、その任務に投入しては、独本土の産業地帯の防空任務が果たせないからである。


 この当時の独空軍の主力戦闘機Bf109は、哀しいまでに航続距離が短かったのだ。

 ベルリン近郊の飛行場に展開して、独仏国境付近の陸軍部隊を支援する等、夢の世界だった。

 こんな航続距離では、独仏国境に展開する部隊は、ベルリン上空の防空任務に投入することはできない。

(ちなみに第二次世界大戦後、それを知った日本空軍の関係者は、信じられない、何でそんな短い航続距離で独空軍は満足していたのだ、と呆れ果てる羽目になった。日本空軍関係者にとっては、ベルリンからロンドンまで往復できない航続距離では短すぎるというのが、この当時の常識の世界だったのである。)


 かといって、99式重爆撃機の脅威を取り除くために、独空軍の爆撃機主力を投入して、英本土の99式重爆撃機の基地を叩く、というのは論外だった。

 それこそ、護衛戦闘機無しで、英本土を爆撃しよう等、独空軍の爆撃隊の指揮官等からすれば、特攻任務に等しい暴挙だった。

 かといって、護衛戦闘機任務に本来充てられる筈のBf110は、鈍重極まりない双発戦闘機で、日本空軍の「ゼロ戦」乗りの多くから、

「Bf110を撃墜するよりも、野鴨撃ちの方が難しい」

 と揶揄される戦闘機だった。

 そして、Bf109では、護衛戦闘機の任務を果たせる航続距離がないのだ。

(こういった事情にも関わらず、1940年の夏に、昼間、爆撃機の密集大編隊により、英本土を爆撃しようとする独空軍の試みは何度か行われているのだが、平均帰還率は2割以下、3度参加したクルーは0(1度目は生還しても、2度目で全員が戦死している。)という大損害を被り、中止せざるを得なかった。)


 1940年春の西部戦線大攻勢に、独軍が失敗したのは、上記のような事情が、大きく足を引っ張っていたからだった。

 独軍の電撃戦の肝の一つが、空軍と地上部隊の密接な連携である。

 それなのに、独軍が航空劣勢で、独軍の地上部隊の支援に苦慮する状況とあっては、攻勢が上手くいくわけがなかった。

 かといって、独空軍としては、ベルリン上空をがら空きにする訳にはいかなかったのだ

「空の要塞」の意味ですが、この世界では、史実とは少し違う意味で呼ばれている、ということでお願いします。

 Bf110の評価が低すぎると言われそうですが、独爆撃機部隊の直接護衛任務を、Bf110が行っている際の評価です。

 バトルオブブリテンの際には、逆に護衛機がいる、とまで言われているらしいです。


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