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第1章ー8

 さて、こうして日本空軍は、12試戦闘機に12.7ミリ機関砲4挺の装備を、急きょ求めることになったのだが、このことは、鈴木の小山悌のチームに致命傷を与えることになった。

 小山らは、12.7ミリ機関銃2挺の装備を要求されていたことから、胴体銃で充分と判断し、翼内銃装備が事実上不可能になる主翼を三本桁構造で設計していたのである。

 慌てて、小山らは、主翼の再設計を行うことにしたが、それによって、試作機の製造等も遅れてしまい、空軍が要求する期日までに、試作機が完成しないという事態が引き起こされてしまった。


 これは、明らかに空軍の当初の要求が誤りだったことによるもので(最初から、武装の増備に対応可能等の要求にしておけば、小山らも主翼の設計をそれに合わせてしていたろう。)、このために空軍は、鈴木に対する詫びの意味もあり、14試重戦闘機の開発を鈴木単独で命ずることになる。


 これに対し、三菱の堀越二郎のチームは、海軍の12試艦上戦闘機の要求が、7,7ミリ機関銃2挺に加えて、20ミリ機関砲2挺という要求だったことから、最初から翼内銃を搭載可能にしており、空軍の新たな要求に対応することができた。


 だが、そうは言っても、やはり要求変更は、堀越にとってもきつい話で、空軍と海軍、どちらの要求を優先すべきか、双方の上層部を巻き込んで、大揉めに揉めた末に、堀悌吉と山本五十六という双方の事実上のトップ会談の末に、帝都防空任務を持つ空軍優先という政治的決着が付けられるという結果となった。


 そして、エンジンについても政治的妥協が行われたという説がある。

 12試艦上戦闘機は、当初、それぞれの自社エンジンを使うことになっており、三菱は「瑞星」で、鈴木は「栄」で開発を試みていた。

 だが、この事態を受けて、三菱の12試艦上戦闘機には、試作機は「瑞星」のままとするが、量産機については「栄」を搭載することになったというのだ。

 最も、通説は、この説に対して否定的である。

「瑞星」よりも「栄」の方が、エンジン出力が大きいことから、海軍と空軍は、三菱に対して、12試戦闘機について、「栄」の搭載を命じたというのが通説である。


 こうして、空軍では99式戦闘機、海軍では零式艦上戦闘機が開発、装備されることになった。

 ちなみに空軍仕様では12.7ミリ機関砲4挺装備、海軍仕様では7.7ミリ機関銃2挺、20ミリ機関砲2挺装備と武装が異なるのは、先述のように三菱が12試艦上戦闘機を、陸上戦闘機に転用することで12試戦闘機に対応したという事情からである。

 そして、空軍でも海軍航空隊でも、この戦闘機は共に活躍することになる。

 ちなみに、愛称として一般に広まっているのが、「ゼロ戦」であり、空軍関係者でも「ゼロ戦」なり、「零戦」と呼ぶことが多い。


 何故、そうなったかだが、第二次世界大戦で欧州戦線に先に赴いたのが、海軍航空隊であり、その実力に驚嘆した英軍関係者によって、零式艦上戦闘機に、「ゼロファイター」という異名が付けられ、それが事実上訳されて、「ゼロ戦」という愛称となり、それが空軍にも広まった、というのが通説である。

 それに99式戦闘機と呼ぶよりも、ゼロ戦と呼ぶ方が呼びやすい、という事情があった。

 また、関係者のゲン担ぎもあったという説がある。

「ゼロ戦」と呼ぶことで、損害無しで帰ってくることを願ったというのである。


 99式戦闘機、零式艦上戦闘機は、第二次世界大戦初期は、傑作戦闘機として名をはせたが、後継機の「疾風」、「烈風」の登場等によって、徐々に二線級に下げられることになった。

 とはいえ、最後まで、独のBf109等の好敵手だった存在なのは間違いない。


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