第9話 二人の酒豪鬼との交流/霊力
どうも、狼々です!
お待たせしました!
今回も、終わりの方に本編に関わる部分があります。
例のように飛ばしていただいても問題はありません。
では、どうぞ!
文の取材を受けた俺は、次に挨拶をする相手を探していた。
探し始めて1分も経たないうちに、妙に騒がしい所が目に入った。
宴会はもう随分と時間が経っていて、皆落ち着いている頃だ。
まだまだ騒がしいところもあるが、目に入ったところは、他のどこよりも騒がしかった。
俺はそこで何が起きているのか知るため、近づいてみることにした。
そこには、2人の女性の鬼がいた。一目で見て一発で鬼だとわかる。
それは、2人とも頭に角が生えていたからだ。1人は1本、1人は2本生えていた。
向こうの2人も、やってきた俺に気がついた。
「ああ! お前がさっき前に出てた天ってヤツだな!」
身長が高い方の、角が1本の女性の鬼が声を上げる。
腰ぐらいまで伸びている金髪に、額からは、鬼の象徴でもある、赤の角が生えている。
よくよく見ると、その赤い角には、黄色の星のマークが描かている。
瞳の色は赤。ルビーよりも澄んでいて、赤がよく見えている、レッドスピネルの方が近いだろうか。
服は、半袖の白を基調であり、赤の線が入っている体操服によく似ていて、
半透明のスカートを履いている。
手にはとても大きな盃を持っている。
「おい、勇儀。いくらなんでもその言い方は失礼だろう」
と、次はもう1人の、角が2本で、背の低い鬼の方が前に出て、声を上げて注意をする。
薄茶色の、同じく腰ほどまで伸びたロングヘアーを、毛先の方で一つにまとめている。
さらに、霊夢と同じように赤のリボンをつけている。
目の色は髪と同じく薄茶色で、手には瓢箪を持っている。
2本あるうちの、彼女から見て左の角に、青のリボンを巻いている。
服は、白のノースリーブに紫の膝丈のスカート。
髪と両手には3つの飾りがある。右手に赤色の三角錐、左手に黄色の球体、髪に水色の立方体である。
「いや、いいんだよ。改めて、新藤 天だ。できるなら名前で呼んで欲しい」
「わかったよ。私は星熊 勇儀だ。よろしくな!」
と、身長の高い方の鬼が言い、
「私は伊吹 萃香だよ。よろしく」
と、身長の低い方の鬼が言う。
「ああ、勇儀、萃香、二人共よろしくな!」
こうして2人が並んでいるとわかるが、身長の差が大きい。
どのくらいかというと、10歳程の女の子とその保護者に見えるくらいだ。
「宴会は楽しんでくれているか?」
「「ああ、もちろんとも!」」
二人は当然、というように答える。
俺は内心、楽しんでくれている人がいて嬉しかった。
すると、勇儀が、
「なあ、私達の友好の印に、一緒に飲まないかい?」
と、俺を酒に誘ってくれる。
「悪いけど、俺はまだ未成年なんだ。お酒は飲めないし、飲んだこともないんだよ」
俺は今17歳。誕生日は11月の13日。次の誕生日が来ても18なので、未成年。
あと3年ほど待たないといけない。
「あれ、知らないのかい? 幻想郷では、未成年でもお酒飲むんだよ。ほら、霊夢とか……」
と言って萃香は、ある場所を指差す。
俺もその方向を見る。目に入ってきた光景には、酒を思い切り飲んで、酔いつぶれた霊夢がいた。
霊夢の容姿は明らかに未成年。ここでは法律の類はないらしい。
まあ、神社で宴会するぐらいだもんな。
「……わかった。少しだけ飲んでみよう」
「よし、決まりだな! おい、萃香! お前も一緒に飲むぞ!」
「はいよ~」
勇儀、俺、萃香が座って、三人の前に酒が用意できた。
これは……日本酒、だろうか?
香りは嗅いだことがないのでわからないが、お猪口……だっただろうか。
それが俺に用意されているので、恐らくそうだろう。
二人はというと、それぞれ手に持っていた盃と瓢箪に口をつけている。
「……コクッ」
俺は少しだけ日本酒を口の中に流し込み、喉を通した。
瞬間、胸が焼けるような熱さに襲われ、息が苦しくなる。呼吸がままならない。
「カ……ハァッ……!」
「大丈夫かい、天!? ほら、水だよ!」
俺は勇儀の差し出してくれた水を飲む。
……少しだけ、楽になっただろうか。
「ハァ……ハァ……あ、ありがとう、勇儀。すまないな……」
「いいんだよ、無理はするな。最初はそんなもんさね」
「勇儀の言うとおりさ。少しずつ慣れていけばいいよ」
「萃香も、ありがとうな……」
俺は二人に背中をさすってもらっていた。
なんか、俺が情けなく思えてくるな……
「ありがとう、二人共。俺はもう大丈夫だ……」
「そうかい? ならいいんだけどねぇ」
「あんまり無理はするもんじゃないよ」
俺は二人の優しさに触れていた。
何か、勇儀は姐さんの様な感じだな……
ふと、二人がさすってくれていたことを嬉しく感じていたとき、ようやく気づく。
「あれ……? 勇儀、萃香、二人の腕についてるその鎖の腕輪は何なんだ?」
「ああ、これかい? これは、力の抑止の意味でつけているんだよ」
「それは……鬼だから、なのか?」
「ああ、そうだよ。鬼は力が強いことに定評があってね……勇儀とかはもうすごいんだよ?」
「そうなのか、勇儀?」
「ああ。萃香も中々強いが、私の方が強いね。私は『怪力乱神を持つ程度の能力』だからね!」
やはり勇儀も能力持ちなのか……となると、萃香もその可能性は高いな……
力には相当な自信があるんだろうか、勇儀は堂々と胸を張って答えていた。
てか、大きいな……何がとは言わないよ?
「怪力乱神って何なんだ?」
「え、ええっとな……」
勇儀は見た目通り、と言うべきか頭で考えるよりも、行動が先にでるタイプの様だ。
勇儀が言いあぐねていると、萃香が代わって教えてくれる。
「怪異・勇力・悖乱・鬼神のことさ。まぁ平たく言えば、説明できないような不思議な現象のことだよ。」
「ま、具体的にはその能力を持ってる私もわからないんだけどね」
勇儀ははっはっはと愉快に笑う。
さすがにそれはどうかと思うが……
「萃香はどんな能力を持ってるんだ?」
「私かい? 私は、『密と疎を操る程度の能力』を持ってるんだよ」
「具体的には?」
「物質を萃めたり、疎めたりできるのさ。要するに、密度が変えられるんだよ」
「へぇ……」
「実際に見せようか? そっちの方がわかりやすいだろ?」
「ありがとう、そうしてもらえると助かるよ」
「いいよ。今から私は密度を小さくして姿を消すよ。天、目をつぶってて。勇儀、私が消えたら目を開くように言ってくれ」
「わかったよ。」
俺はそう言って目を閉じた。すると、3秒も経っていないうちに、「もういいよ」と勇儀から声がかかった。
目を開く。萃香の姿がない。ホントに消えられんのかよ……
俺は萃香の消えた先を探そうと、辺りを見回していた。
……だめだ、見つからない。
「ここだよ、天」
背後から萃香の声が聞こえる。
振り返ると、見回したときにはいなかった萃香が、最初からそこにいたかのように立っていた。
「驚いたな……まさか本当に消えるとはな」
「嘘は言わないよ。鬼の一番嫌いな物だからね」
「私も嘘は嫌いだよ。鬼の共通の心理さね」
なるほど、そうなのか。
誠実な鬼も居るもんなんだな。この幻想郷は外の、俺の固定観念や先入観、常識を覆してばかりだ。
ある意味では、外の世界よりもずっと面白くていい場所だろう。
「厳密には消えたんじゃなくて、霧状になって見えなくなった、の方が正しいのかな?」
そりゃ見えないわけだ。
「なるほどなぁ……なあ、この幻想郷にいる生き物は、全部能力を持ってるのか?」
「全部かどうかはわからないが、能力持ちは結構な種族がいるよ。人間、妖怪、神、鬼、吸血鬼に亡霊。後は、半分人間半分幽霊とか、半分人間半分白沢とか、不死の人間もいるねぇ」
多すぎだろ……ということは、その数以上の能力があるわけで。
それらの中で俺の能力は……ないよりマシだよな、うん!
「よし、じゃあ酒飲み直すかね!」
「そうしようか、勇儀!」
「俺は話だけしていようかな?」
「いつか一緒に酒を飲めたらいいな!」
俺はそれを実現させるために、酒を飲む練習をしておこうと心に決めた。
「じゃあ、ここらで宴は終わりよ~!」
勇儀、萃香と雑談を初めて1時間ほど経ったとき、霊夢による宴終了の声がかかった。
二人はまだ酒を飲み続けている。飲み過ぎじゃないのか……? 心配になる。
話をしていて知ったが、萃香の持っている瓢箪、『伊吹瓢』には、酒虫という
少しの水から多量の酒をつくる虫の体液が塗られていて、無限に酒が沸くのだという。
さらに勇儀、萃香の飲んでいる酒は、度数がかなり高いものらしい。
外の世界には『スピリタス』というポーランド原産のアルコール度数が、世界最高の96度の酒があるらしい。
これを飲ませても平気な顔して飲んでそうだから、見ているこっちが怖くなってくる。
「あ? もう宴会終わりかい?」
「どうもそうみたいだねぇ」
「そうみたいだな」
「天とは近いうちにまた会いたいな!」
「そうだね、勇儀」
「俺も、二人と会うのを楽しみにしているよ」
「そんじゃ、帰りますか!」
「なあ、二人は何処に住んでいるんだ?」
「私は前は妖怪の山ってとこに、今は地底――旧地獄の旧都に住んでるよ」
勇儀が言う。てか、地獄って……閻魔様とか幻想郷には本当にいそうだな……
地底人とかはよくオカルトの話題になるけど、実際にいそう。
オカルト大好きな人間が幻想入りしたら、目を輝かせるに違いないな。
「私はいつも霧になって寝ているから、そもそも住むって概念自体がないのかもね。ま、どこにでもいるのさ」
萃香が言う。定住することがないのか……
まあ、その分偶然会うことだってあるよな。そう考えると良かったかもしれない。
「わかったよ。またいつか、今度は俺も一緒に酒を飲んでもいいか?」
「当たり前だよ! 今度会ったら、天とは戦ってもみたいな!」
「力比べか……勇儀には勝てる自信がない。けどまあ、ただで負けないように修行はしとくよ。一矢報いるくらいはしたいね」
「楽しみだな! 今度暇があったら地底に遊びに来なよ! 場所は霊夢が知ってるはずだよ」
「わかった、勇儀。いつか遊びに行こう。嘘じゃない、絶対だ。その時は勿論萃香も一緒にな」
「その言葉、鬼に対して言うってことはもし守らなかったらわかっているだろうね?」
「ああ、萃香。約束してなくとも行くよ」
「そこまで言ってくれるとは嬉しいねえ。じゃあ、そろそろ帰るとしますかね」
「じゃあ、私もそろそろ寝るとするかねぇ……」
萃香は酒の効果もあってか、うとうとし始めている。
「じゃあな、勇儀、萃香」
「「じゃあね、天」」
二人は同時にそう言って、萃香は霧状になって見えなく、勇儀は背を向けて歩いて帰っていった。
……じゃあ、霊夢のところに戻るかな。泊めてもらわないと。
「お~い、霊夢~」
「あ、ああ、天。さっき、紫が来たわ。今日は博麗神社に泊まって、明日以降は白玉楼に住むらしいわね」
「白玉楼……?」
「ああ、聞いてなかったのね。明日から天が住むのは、冥界の白玉楼っていうとこよ」
冥界か……まさか、自分が死ぬ前に行くことになるとはな……
霊夢は少し酔いは冷めているようだが、まだ顔色が悪い。
「ああ、泊めてもらえないか?」
「いいわよ、空き部屋なら幾つかあるわ。お風呂もさっき私は入ってきたから、自由に使って頂戴」
「わかった、ありがとう。……水、要るか?」
「ええ……お願いできるかしら……?」
「ああ。泊めてもらうんだから、これくらいのことはしないとな」
「助かるわ……」
俺は台所へ向かった。今に至るまでにわかったことだが、
幻想郷は、外の世界よりも技術面がはるかに遅れている。
水道や下水道が通っているかどうかもわからなかったが、どうやら通っているようだ。
ちゃんと台所もあったし、お手洗いもある。
台所で水を入れ、霊夢のところに戻った俺は、入れてきた水を飲んでいる霊夢に聞いてみることにした。
「……なあ、霊夢。人間が精神的にじゃなく、肉体的な意味で強くなるためにはどうすればいいんだ?」
「そうねえ……それは天へのアドバイス、ってことでいいかしら?」
「ああ。」
「ええと……まずは、霊力の増幅からじゃない?」
「えっと、霊力ってなんだ?」
「ああ、ごめんなさいね。今から説明するわ。霊力っていうのは、自分の持っている力……エネルギーみたいなものよ。ここまでいい?」
「……わかった、それで?」
「霊力は誰でも持っているものなの。けれど、微々たるもので殆ど無いに等しいくらい。稀に霊力が多い人間もいるけど、結局その程度よ」
「その霊力は、どういうときに使うんだ?」
「基本は『弾幕』っていうのを張るときに使うわ。弾幕は、霊力を玉とか針とかの形に圧縮したものを大量に集めたものよ」
「その弾幕はどこで使うんだ?」
「『弾幕ごっこ』っていうのに使うわ。ごっこと言っても殺し合い規模になることもなくはないわ。まぁ、威力はあるから幻獣にも使えると思うわよ」
ふむ……刀で接近戦、弾幕で遠距離戦って感じで使い分けるのがベストみたいだな。
いや、それよりも……
「なあ、霊夢って幻獣を知っていたのか?」
「? ええ、知ってるわ。対幻獣のメンバーだけね。私や魔理沙、咲夜にレミリアとか、勇儀、萃香とかね。一応、メンバーじゃなくても、いざという時のために幻想郷で力が強いメンバーには伝えてあるらしいわ。普通の人間とかには、余計な混乱を招かないためにも言ってないし、例え幻獣を知っている者同士でも、周りに聞かれる可能性があるから、公の場では話さないことが暗黙の了解になってるわ」
「そうなのか……話を脱線させて悪かったな。続けてくれ。」
「ええ。弾幕以外にも武器強化みたいな感じで、武器の周りに霊力を張ったりできるわ。天もいずれ使わなきゃかもしれないから、弾幕はともかく、武器強化の方は覚えた方がいいわね。後は、空飛ぶ時も使うわね、霊力」
結構これから重要なものになりそうだな……より強く、長く飛んだり強化したり弾幕を張るには、霊力強化は必須ってことか……
「わかった、ありがとう。じゃあ、本題の霊力の増やし方は?」
「多分、イメージすることが一番ね」
「イメージ……?」
「ええ。イメージ。霊力っていうのは、自分の肉体じゃなくて、魂そのもののエネルギーのことよ。自分の魂を意識して、自分の体の一部、もしくは全体に纏う感じをイメージするの。つまり、想像力が鍵ね。慣れてきたらイメージしなくても霊力を出せるようになるわ」
「……わかった。気分悪くて遅い時間なのに悪かったな」
「いえ、いいのよ。いつかは説明しないといけないし、霊力の扱いは私が幻想郷一だろうから」
「……ありがとう、霊夢。おやすみ」
「ええ、おやすみ。明日は昼少し前に出発するわ。」
「連れて行ってくれるのか?」
「……天、あなた本当に何も聞いてないのね。冥界ははるか上空よ。私が飛んで連れて行かないと行けないでしょ」
「いや、でも紫のスキマで……」
「そうなったら冥界から地上に戻ってきた時、一人じゃ帰れないでしょ。方向くらいは覚えなさい。いずれ天も空を飛ぶでしょうから」
……え!? 俺空飛べるかもしんないの? 滅茶苦茶練習してでも早く飛べるようになりたいな……!
空飛びたいって何人の人間が願って、叶わないと知って絶望したことか……
「俺、空飛べるようになるの?」
「勘よ、勘。まあ、空飛ぶ種類の幻獣がいる可能性も否定できないから、絶対に覚えてもらわなくちゃいけないのよ。それに、私の勘は結構当たるのよ?」
「……わかった。俺、頑張るよ」
「私は意外にあなたを高く買ってるわ。天は紫に呼ばれたくらいなんだもの。期待しているわ」
「……ああ。期待されちゃあ、応えないわけにはいかないな」
俺はそう言って霊夢の部屋を後にした。
ありがとうございました。
8時間ほどだらだらと書き続けていたので、誤字脱字等があるかもしれません。
見つけた場合はお手数ですが、報告をお願い致します。
次回、とうとうメインヒロインの妖夢と主人公の天が出会います。
そして刀も出す予定です。
ネーミングセンス皆無なので、名前の出来の悪さは目を瞑ってください。
ではでは!