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東方魂恋録  作者: 狼々
最終章 希望の道筋
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第73話 雪バトル

どうも、狼々です!


今話を投稿するのが、前回の一週間ちょっと後という。

いやぁ、申し訳ない(´・ω・`)


雪を使うバトルといったら……?


では、本編どうぞ!

 今年も終盤に差し掛かり。

 どこかで氷の妖精が騒いでいそうな、今日このごろ。

 十二月最大のイベントといえば、なんだろうか。


 ――そう、クリスマス。


 ここに来る前は、そうでもなかった。

 いや、むしろ嫌いだったと言っても過言ではない。

 リア充がそこら中で、『私達幸せですアッピル』をしている厄日としか。

 目に毒だったな、うん。


 まぁ、彼女どころか恋愛経験もなかった俺。

 勉強だけをしていた俺は、文房具を買いに行こうと寒々しい風に身を、肌を晒したあの日。

 それはもうイチャコライチャコラと。


 一つのマフラーを一緒に巻いて手を繋ぐ。

 ……ちっ。


 それでさぁ……今の俺が言える立場でもないのよ。


「そっらく~ん!」

「はいはい、クリスマスだね~」


 幻想郷にクリスマスの行事が存在しえるかどうかも不明だった。

 この時期、年末年始は紅魔館で過ごしていた。

 なので、クリスマスはあったのだが、それが幻想郷全土に言えるのかどうかは未だに謎だった。


 が、どうやらある程度だがあるらしい。

 ただ、ちょっと伝わっていないところも。チキンとか。

 そもそも、どうしてクリスマスにチキンを食べる変な、根拠なしの風習ができたのだろうか。


「妖夢、あんまりはしゃいじゃダメよ?」

「はい、幽々子様!」


 四人皆で、外に出た今日。

 いつもの人里から、さらに一つ離れた人里。

 たまには、ということで四人で出かけている。


「……妖夢ちゃん、今日はすっごくはしゃいでるね」

「あぁ。雪、積もってるし」


 翔の楽しそうな囁き声に、俺も笑って返す。

 あの妖夢のはしゃぎようは、やはり見ていて目の保養になる。

 眼福、眼福。やっぱ可愛いな。


 皆、防寒具は着けた。

 さすがに手袋は、売っているようで安心。


 いつも防寒具はつけないのだけれども。

 今日は、特別なのですよ、へっへっへ。



「ふ~、着いたな……ほら、皆いるぞ」

「み~んな~!」


 妖夢が、小走りで皆の方へ。

 やはりはしゃぐのは、やめられないようで。

 

 さて、ここでスターティングメンバーの発表だ。控えはいないのだが。

 霊夢、魔理沙、咲夜、レミリア、早苗。なんだよ、野球できんじゃねぇかよ。ぴったり九人だわ。


 この広い平野。積雪のお陰で、草一本も見えやしないのだが。


 ……檮杌との、戦闘場所。

 丁度良い広さだ。まさか、こんな形でこの場所に戻ることになろうとは、思っていなかった。


 どうして、この場所にこの九人が集まったのか。

 人数に関しては、この時期に忙しくなる人が多いから。

 神社の方はそうでもなく、忙しくのはこれからだそうだ。


 ――霊夢はともかく。


「ねぇ、あんた。お賽銭入れるって約束、結構前にしたわよねぇ……?」

「あっ」


 あれは確か――そう。

 俺が目覚めて、霊夢達に報告せずに帰って、添い寝するのか、って腹パンされて怒られたやつだ。

 その後に、妖夢が裸エプロンやってたんだよね。カオスだな。


 目の前に一瞬で詰め寄られ、胸倉を掴まれる俺。

 可哀想、俺。女の子にこんな暴力団じみたことをされるとも思わなかった。

 さらに、笑顔に深い闇を感じるのが怖いところだ。


「い、いつか行く。初詣には……早苗んとこと一緒に行くよ」

「わ~、ありがとうございますね~」


 隣に、いつの間にか寄っていた早苗の間の抜けた声。

 あ~、いい声だな~。どこかの男の胸倉掴む暴力巫女とは大違いだ。

 まぁ、博麗神社の場所を考えても、参拝しにくいのはわかる。

 初詣に二箇所の神社を回る、というのもいいのかどうかわからないが、そうしようか。


 まだまだ朝の陽光が収まらない今、ようやく太陽の光が全て地に注がれる。

 数センチもの厚さで積もった雪の結晶の大群は、陽光を反射して光り輝いていた。

 ざく、ざくという雪を踏みしめる音が、妙に気持ちがよくなる。


「よ~し、じゃあ、そろそろやるか!」


 俺の大きな掛け声に、皆が一斉にこちらを向く。

 満面の笑顔を携えながら、大きく返事をするのだ。




「「「お~! 雪合戦だ~!」」」


 束となった返事が、青空に響いた。

 まだまだ青白い光の中、皆の吐息が白く染め上げられる。


 それも束の間、皆はしゃがんで雪をかき集め始めた。

 辺りの雪を楽しそうに掻き、一つの球形に押し固めていく。


 先手を仕掛けるのは――やはりというべきか、霊夢。

 性格が出ているというかなんというか。

 様子を見ることはなく、先手必勝を掲げるようだ。


「ほらっ、紅霧異変の分を今返してあげる、わっ!」

「そんなの随分前でしょ!」


 と叫び、手に持っていた日傘で飛んできた雪玉をガード。

 やはり吸血鬼だからか、朝とはいえ日光はダメなのだろうか。


 すると、何を思いついたのか、光った電球が頭に浮かびそうなにっこりとした表情。

 そして、しゃがんで、地面に置いた日傘で全身を守るようにした。

 四方は傘で守られていて、死角なし。


「ふっふっふ! これが最強の構えよ! 絶対に当たらないわ!」


 ……なんだろう、微笑ましいね。

 カリスマがないよ、皆無だわ。これじゃあ『かりちゅま』だわ。


 ……ん? こっそり音を最小限にして、翔が近寄って――あっ。


「ちょっと入れてね~、レミリアちゃん」

「だから『ちゃん』って――ひぁぁあああ!?」


 パラボラの傘の中で響いた声を追いかけるように、レミリアが傘から飛び出した。

 しゃがんでいた翔はというと、くすくすと笑っている。


「冷たい! 背中冷たいぃぃいぃい!」


 小さな背中に、懸命に短い腕を動かしている。届いてないけども。

 ……あぁ、なるほど。翔に雪、入れられたのね。

 そりゃ冷たいわな。それで笑う翔も、中々に良い性格をしているようだ。


 小さな争いが面白い結末を迎えた頃、別所ではまた別の対決が。


 ほう、早苗と咲夜。見たことがない組み合わせだが。


「いきますよ!」

「…………」


 無言のまま、早苗の投げた雪玉を見つめ、一弾指。

 ――消えた。綺麗さっぱり。


 雲散霧消。消失。虚無。まるで泡沫(うたかた)のように。


「……えっ?」

「ここよ、ここ」

「え? ひぁっ、つめたぁっ!」


 おぉ、早苗も結構かわいゲフンゲフン。妖夢ちゃんに怒られちまう。

 マイエンジェルの妖夢にね。……うわぁ。マイエンジェル、さすがにねぇな。


 何もないところから、タネ無し手品。

 本当にマジックショーのように、虚構から湧いて出た。

 言い方があれだが、本当に湧いて出た。すげぇよ。


「勝てないじゃないですか! ずるいですよ、こんなの!」

「霊夢よりマシな巫女かと思ったらそうでも無いのですね」


 瀟洒(しょうしゃ)なメイドは、どうやら最強になれそうだ。

 ことスポーツにおいては、特に最強じゃないのか?


 さて、そろそろこちらも戦闘が始まりそうだ。


 幽々子、俺、妖夢、そして魔理沙。

 一対一ではなく、一対一対一対一になりそうだ。

 バトルロワイヤル、みたいな感じだろう。


 お互いがお互いに睨みをきかせ、案外ガチになっている。

 全力で楽しむためにも、全力でやろうか。


「――よし、三人で天を狙うわよ!」

「きたねぇ! きたねぇぞ、幽々子ぉぉおお!」


 どうしよう、皆こっちに向いているよあはは。

 一対一対一対一とは。一対三だったわ。


 ……いや、体や外見は一対三だな。

 しかし、精神的には二対三だ。


「し、栞! 俺どうすれば――」


「あっ、そうそう! 前に天がねぇ! 妖夢ちゃんの胸を揉んだんだよ~!」


 ――凍りついた。

 俺も、周りも、空気全体が。

 揉んだ、ということによって、不慮の事故という線も消していくという。

 取り敢えず、これだけはわかった。


 ――まずい。


「あ、あんた、変態……?」

「いや違うんだよ霊夢話を落ち着いて聞いてくれ」

「う、うっわぁぁ……」

「そんなに露骨に引かないでくれよ魔理沙」


 早苗は顔を赤くしながら、口元を手で隠すかなり可愛らしい行動に。

 残念だが、咲夜に至っては俺にゴミを見る目線を向けている。


 何よりも見るのが、怖かった。

 肝心の妖夢を見るのが、恐怖で仕方がなかった。


 ガタガタと物理的ではないような寒さで震え上がっていると。

 とすん、と背中に重みがかかった。

 腕は俺に回され、後ろから抱き締められている。

 ……まぁ、身長や腕から、振り向かなくとも誰かわかる。


「あ、あぁ~……その、妖夢?」


 恥ずかしいのか、声を全く出さない。

 その代わりに、回された腕の強さが一層に強くなった。

 ぎゅっと、顔が見えない状態で抱かれると、やっぱりドキドキして――


「みなさ~ん! 今なら天になんだってできますよ~!」

「おいぃぃいい! 妖夢ぅぅうう! ちょっと待て、待つんだ皆! そのサイズの雪玉はまずいって!」

「うるさ~い! 弾幕はパワーなんだぜ!」

「わー! やめろ! やめろおぉぉぉおお!」


 各々が雪玉を大きくして、投げつける姿勢に。

 ここで腕を払って避けても、妖夢に当たる。

 ……当たるしか、ないのかなぁ……?





 ――ちょっと、咲夜さん? 大きめの石、わざと雪玉に入れてるよね?

 危ないよ、それ。今すぐに取り除きましょうね?


「待って本当に危ない――投げんなぁぁぁあああ!」


 皆の雪玉が気体の微粒子の如く動き回る。

 が、向いた方向は俺一点のみ。


 ……はぁっ。

 仕返しくらいは、してもいいよな?







「あ~、遊んだ遊んだ~!」

「ホントですね~!」

「あ~あ、私もこんなにはしゃいじゃうとはね~……」


 巫女も、魔法使いも、風祝(かぜほうり)も、メイドもお嬢様もご満悦の様子。

 地面の白を跳ね除け、そこに手を後ろにして体を支えて座っている。

 クリスマスとはなんだったのかわからないくらい、雪合戦に年甲斐もなくはしゃいだ。


 もう見飽きた雪は、今度は小さく結晶となって降ってきた。

 音もなく緩やかに上から下へと、そして積雪と同化する。

 体に篭った熱とは裏腹に、今の季節を体感的に感じた。


 交錯する温度は、直下。

 正誤怪しく、定義怪しく直下。

 不安定な正解と定義は、須らく終わってしまう。


 ……今、それがこの平穏なのだろう。

 楽しめる瞬間(とき)が今だからこそ、我も時間も状況も忘れて楽しむ。


 小さく不幸を積み、紡ぎ、反転させることとは訳が違う。

 だからこそ、こんな時くらいは楽しんでも、いいと思うんだ。


「……そんなに、重く考えても変わらないですよ」

「やっぱり、俺の考えることは(わか)るのか?」

「えぇ、判りますよ。(わか)りたいですし」


 隣で笑う彼女は、解ってくれている。

 どんな考えも、見通したかのように判ってくれる。


「今から気にしていたら、いざという時に本当の力は出せませんよ? 今は、目の前のことでいいんです」

「……そう、だな」

「ですから、今日は……ね?」


 静かに白肌の手を、俺の手へ。

 潔白の上に、また潔白が重なった。

 しかし一点、温度の差は如実にあり、暖かみに身を寄せる。


 半人半霊は、常人よりも体温が低いのだという。

 が、俺にはどうも 納得が出来なかった。


 この温度は、人肌の温もりほど暖かなものはないと、確信したから。





 皆と別れてから、買い物、食事。

 ついでに夕食分も買っておいたので、もう一度冥界から降りる必要もなし。

 せっかくのクリスマスとのことなので、修行は全員休み。


 四人で居間に集まって、炬燵(こたつ)に入るというなんとも平和チックな光景。

 足元に異様な暖かさを感じたが最後、取り憑かれたように出られなくなるという。

 炬燵とは、どの世界でも人をダメにするようだ。そんなソファーもあったらしいけどね。


「……クリスマス、ですね」

「すごく今更だな」


 そりゃそうだ。もう昼も回っているんだから。

 もう一週間後には年明けなのだが。


 それと幽々子、俺の服に大量の雪を詰めたことは忘れていないからな。

 凍え死ぬかと思ったぞ。冷えすぎて感覚がなくなるとこだったんだぞ。


 俺と妖夢、翔と幽々子で、二人一組で向かい合って炬燵に。

 まぁ、うん。大体わかっていたよ、こういうの。

 こうやって暖かくても……炬燵の中で手、繋ぐんだね。嬉しいけどさ。


「はいはい、嘘ね。そうやって炬燵の中で手を繋いでクリスマス満喫しているじゃない」

「いや何でわかったんですか」

「っていうか、二人が揃ったら大概イチャイチャしてますし、ねぇ~?」

「ホントよ! ねぇ~?」


 そういう貴方達も息ピッタリじゃないですかやだー。

 なんだかんだ言いつつも、こいつらはいつも息が合う。

 特に、俺の妖夢のイチャつきに関しては食いつき方が違う。


 粘着物質かと思うほどにね。


「いいだろ、別に。いつものことだ」

「そ~です。私と天君、いつものことです」

「もう開き直ったのね」


 当たり前だ。そりゃそうだ。

 もう開き直るくらいじゃないと、俺と妖夢はやっていけないと思う。

 イチャつきが足りなくなって。すげぇな。


「えぇ、だって私達――」


 そこで言葉を途切らせ、こちらを向いた妖夢。

 近くに置いてあった長いマフラーを手に取り、俺にかけた。

 当然長いわけなので、余りがでる。

 その余りを妖夢も首にかけた。


 そして。


「――恋人、ですから!」


 俺の頬にキスをしてから、満面の笑みを浮かべていた。


 ……頬のキスも、悪くないものだ。

ありがとうございました!


次回はもう察しがつくでしょう。

えぇ、お正月回です。

それが終わったら……不知火が、すぐ。


不知火戦、少し時が飛ぶかもです。

ご了承を。


ではでは!

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