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東方魂恋録  作者: 狼々
第6章 理想
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第68話 希望は

どうも、狼々です!


お待たせしましたぁぁぁああ!

遅くなってしまい、すみませんでした!


他作品の投稿に加え、私も一日休んでしまいました。(´・ω・`)


では、本編どうぞ!

 ――終わった。時雨との戦いは、天の勝利で終わった。

 惨状は収まり、やがて収束する。

 けれど、天には反動があった。


 私は、ダメだと言ったのに。

 天は、そういうことをしてしまう人間だと、わかっていたのに。

 ……止められなかった。


「誰か、早く天を運んで! そうじゃないと死んじゃう!!」


 私は、叫んだ。 

 虚しく消失して、欠片だけを残していく。


 そう思われた。私もそう思った。

 一瞬でスキマに攫われた天と一緒に、私もスキマに入り込む。

 大量の目が、天を見る。それが私にも伝わって、私を見ているようだった。

 

 

 スキマにいる時間は本当に一瞬で、すぐに見慣れた永遠亭のベッドの上に光景が変わって。

 先程の大衆の視線が、私を見て、こう言っているようだった。


 『何とかできなかったのか』、と。


 ―*―*―*―*―*―*―


 冬へと入り、寒波が押し寄せる今日このごろ。

 私は今日も、天のために薬を作成していた。


 どうせアイツは、無理をする。

 だったら、その無理をしても大丈夫なようにしてあげよう。

 止めても無駄で、痛いのは天。それを未然に防ぐために、薬の開発。














 ――というのは口実で、ただ私が治療しなくていい分、楽になるから。

 形だけ言っておけば、だいじょう――


「……はい?」


 大丈夫だと、そう思っていたら、再びスキマから天が降ってきた。

 スキマで運ぶということは、それなりの重症のはずだ。

 ただ、そこまで重症ではない。


 いや、怪我は負っていたが、ついこの間のあれよりひどくない。

 極端に言ってしまえば、急ぐ必要のない怪我。誰かが……それこそ、妖夢が運んできてもおかしくない。


 と、いうことは……内部の損傷が激しいということだ。


「鈴仙! 急いで手術よ!」


 天を抱えて、緊急手術。手術室へと向かう。

 内部の傷は、さすがに外の状態を見ただけでは、はっきりと原因はわからない。

 ……なんとなくの予想ならついているのだが。


 霜を履みて堅氷至る、という言葉もあるくらいだ。

 それなりの理由があることに、変わりはないのだから。

 もし命に関わる可能性が少しでもあるのなら、それは急ぐ理由になる。


 そしてその理由は、紫のスキマ使用で運ばれたという事実で補填される。

 ……急がない理由は、ない。


「あぁもう! せっかく貴方のために作った薬、使う前に・・・・こうなってどうするのよ!」


 予想する限りでは、今作成している薬で防ぐことのできる類の怪我だ。

 そうでなければ、内部での致命傷なんて起こらない。

 さらに言うならば、この外部の傷を見ると、戦闘で負った傷である可能性がほぼ百パーセント。

 尚更、予想は当たっていることだろう。


 手術室に運び入れて、ベッドに天を寝かせる。

 完全に意識は刈り取られていて、ほぼ睡眠状態だ。

 霊力を感知しようにも、あと少しで空になりそうな状態。


「栞? 貴方の霊力、天に分けられない?」

「……だめ。私の霊力も、もう底をついてるよ」


 ――どうやら、私の予想は的の中心も中心、ダブルブルの場所を綺麗に射抜いていたようだ。

 栞の莫大な霊力も、天の鍛え上げられた霊力も、合わせてすっからかん。

 この状態が示すことは、やはりそうなのだろう。


 とはいえ、今から急いで手術をしないと間に合わない。

 ただ……天才外科医は、そこまで先が読めないような存在じゃあない。

 こういう、天が早まったこともあろうかと、ちゃんとそれ用の薬は準備してある。

 けれども、薬一つで上手くいくかどうかは試薬なのでわからない。どちらにせよ、手術は避けられない。


 さて……手術を、始めましょうか。





「「あぁぁぁぁあ……」」


 鈴仙と一緒に、呻き声を出す。疲れた。ただひたすらに疲れただけ。

 集中力は切らせないわ、内部の傷だから慎重に慎重を重ねないといけないわ、休む時間がないわ……

 本当に、休みなし。


 手術は一応成功。内蔵ぐちゃぐちゃだったけれども、数日で元に戻るだろう。

 薬も程々に強いもので、副作用とかも出ないギリギリの当たりの効果が限界だ。

 相当に強い薬を使ってしまうと、どういう副作用が出てしまうかわからない。


 ……本当に運が悪ければ、最悪死んでしまう。

 せっかく命を繋いだというのに、処方した薬で死に至るなんて、笑い話にもならない。


 窓に点々と付いた水滴。外と中の温度の差はそれほど大きくないので、数は少ない。

 数少ない一滴は、板面に垂直方向に軌跡を残しながら、ゆっくりと淵をなぞる。

 その様子がとても穏やかに見えて、一層の溜め息を誘われる。


 水滴の残した軌跡の奥で、さらに人影が見えた。

 背中に二人を背負って、何人かがこちらに入ってくる。

 天のことも考えて、戦闘後の搬送なのだろう。誰かまではわからないが。


「はあぁぁあぁあ……」


 休む暇もないのだろうか。私も、少しばかりの休みがほしい。

 しかし、医者である手前、そんなことは口には出せない。思うのはいいにしろ、口にするのはタブーだ。

 だから、何があっても治療の要望を断ることはできないし、するつもりもない。


 霜の降りるこの季節、今日もキリキリと医者の私、永琳は働くのでした。


 ―*―*―*―*―*―*―


「二人共、大丈夫!?」


 私は空から降りて、翔と妖夢の安否を確認する。

 致命傷ではないが、足をあのローブの奴が持っていた槍に貫かれた後がある。

 未だに起き上がることのできていない二人だ。担いで行くべきだろう。


「私は妖夢を担いで行くわ。魔理沙は箒に翔を乗せて、あと何人かこっちに着いてきて。残りは報告に行ってちょうだい」

「「「了解」」」


 皆が私の指示通りになって、隊列を組む。

 隊列と言っても、ただ簡単にグループ分けしたようなだけなのだが。


 伝えた通り、私は妖夢を担いで空へ飛ぶ。

 灰色がかった厚い雲が太陽の光を完全に遮っていて、辺りは暗黒に包まれていた。

 吹き付ける風も冬特有の寒さを孕んでいて、気分を沈ませる。


「あ……すいません、霊夢――」

「いいのよ……あと、天はこの程度じゃ死なないわよ」

「……っ」


 図星だった。気にしていないフリをしているけれど、バレバレだ。

 声に色や力などはなく、天がいるときとは正反対だ。ここまで落ち込まれては、否応なしにわかってしまう。


「アイツは、今までもこうなって生きてきたじゃない。あと黒幕は三人中一人だけ。このタイミングで、アイツが死ぬとは到底思えないわ」

「……そう、ですよね」


 霊力の爆発的な使用が、彼の体を壊したのだろう。さっきの霊力は、リベレーションの何倍も濃かった。

 そんな霊力が体中を循環し続けるなんて、体が保つ方が不思議で仕方がない。


 それにしても、あの天は……強かった。強すぎた。

 私でさえ、ローブの端すら視認できなかったのに、それ以上の速さで迫る槍を受け流していた。

 何度も、何度も、的確に攻撃を神憑で逸していた。


 一方のローブの奴は焦る中、天は焦りの『あ』の字も見せていなかった。

 むしろ、あの状態になる前の天の方が、よっぽど焦っていたに違いない。

 それほどまでに、自分で強さが実感できるまでに飛躍的なパワーアップは、彼自身を蝕んだ。

 強すぎる力故の、引き換えとなる代償が、そこには存在していた。


「そうよ。大体、あんたが生きてるって一番信じなきゃ、生きるものも生きられないわよ」

「……本当に、そうですね。ありがとうございます」


 そうやって背中からかかった声は、先程の声よりも彩りが加えられていた。

 空全体を覆い隠していた黒雲も、いつの間にか晴れて完全になくなっていて、陽光が目に飛び込む。

 凄惨だったこの付近も、その希望に照らされる。



 希望は、前に進む。その希望が途絶えない限り、ずっとずっと、前に。

 そこにある景色は、一体何色に染まっているのかはわからない。

 光り輝く色なのか、漆黒のみを映し出すのか、それは見てみるまではわからない。


 けれど、どの結果になろうとも前に進まなければいけない。

 自分の持つ希望を信じて、進まなければ。

 それが、どんなに難しいことだろうか、本当の意味では私達誰ひとりとして知らないのだろう。

 だからこそ、この状況を打開しなければいけない。


 頑張る人がいて、傷付く人間がいて、死にかける人がいて。

 彼らに支えられているからこそ、私達の希望が存在するのだから。

 希望も、支えられてから希望として初めて成り立つものだ。

 だから、忘れてはならないのだろう。


 ――忘却の彼方へ追いやることは、許されないのだろう。

ありがとうございました!


今回は短いです。あれだけ待たせてしまったのに、申し訳ありません……

次からは、もっと近いうちに……(´;ω;`)


ではでは!

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