第61話 妖夢は甘味―休暇 天、妖夢side
どうも、狼々です!
前回、色々な意味でヤらかしました。色んな意味で。
今回は、エロ要素は、紳士の方々にとっては残念なことに、ありません。
悶える……かどうかはわかりませんが、個人的には甘い話を用意できたと思います。
では、本編どうぞ!
朝の日差しを眩しく思いつつ、起床する。
隣には、俺の天使がいる。うん、天使。この優しそうな自然な笑顔とかたまらない。
俺も微笑みながら、妖夢の頭を撫でる。
「ふぁ……」
声を漏らしながら、身を少しだけよじる。可愛い。
不意に、昨日の夜のことがフラッシュバックした。
『んぁっ! もう、らめれしゅ! あ、きて――んあぁぁぁああぁ!』
『しょらぁ……だいしゅきぃ……』
心臓が跳ねる。血液の循環が早まる。
あの惚けた顔、幸せに満ちた顔、ひどく淫らになっている顔。
その……あまりいい表現ではないが……雌の顔になっていたと思う。
彼女の表情に、最高の興奮を覚える自分は、異常なのだろうか?
あの顔をもっと見たいと、そう思う俺は、異常なのだろうか?
「ん、ぁ……天君。私は、あぁ、あの後……そっか……」
妖夢が起きて、俺に抱きついて、俺の胸に顔を押し付ける。
ふんわりと爽やかな匂いが、俺の鼻腔を刺激する。
それだけでも、若干の興奮が。
「……え、っと、その……気持ち良かったですよ」
「そ、そうか。俺も、まぁ、気持ち良かった……」
「そ、その! 誰にしてもらっても気持ち良いというわけではなくてですね……《《天君に》》、シてもらえたのが、気持ち良かったのですよ……?」
うぁ……その上目遣いと言葉に、俺の頭がぐちゃぐちゃにされそうになる。
朝だというのに、盛ってしまいそうになる。
俺もその、まぁ? 健全な思春期男子の一人だし? ……ん? 今、俺いくつだ?
「あ、あぁ、俺もだよ、妖夢。妖夢だからこそ、気持ち良かった」
「その、言いにくいのですが……また今度、お願いできますか……?」
んん? まさか――
――妖夢って、意外に性欲強いのか?
朝食を食べている途中、幽々子に、
「今日は、修行は休みなさい。二人で人里でゆっくりしてきていいわよ?」
と、すごく優しそうな笑顔で言われた。すごく、優しそうに。
明らかに何かがある。そもそも、今まで妖夢に休暇はなかったらしいし。大丈夫なのか、心配になる。
で、今はそのことについて問い詰めようとしている真っ最中。
「おい、幽々子。これはどういうことだ」
「んえ? いやいや、私からの気遣い、っていうことよ? 翔も了承してくれてるわ。大丈夫、翔と私は将棋して待ってるから」
将棋なのか。翔、かなり強そうだけど。
あいつの能力で、最善手ばっかり打ってきそうだけどな。
それはどうでもいいとして、気遣いというワードが気になる。
「これのどこが気遣いだよ。どう考えても――」
「いやぁ~……だって、ねぇ?」
いや、ねぇ? ってこっちを向かれても。
反応に困るのだが。
俺がわけが分からないで座っていると、こほん、とわざとらしく咳をして、こう言う。
それも、声を低くして。まるで――俺の声を真似るように。
「……結局妖夢も、抵抗してねぇじゃねぇかよ。気持ちいいのか……?」
瞬間、俺の腕が閃いた。
「きゃっ……!」
幽々子を後ろに倒し、妖夢の時と同じように拘束する。
笑顔が引きつるのを感じながら、言う。
「お、おおいい幽々子ぉ~……何を言っているんだよ~」
「へ、へぇ、こうやって押し倒して、何を聞くつもりなのかしらね?」
どうしよう、幽々子のこの微笑が今、途轍もなく腹が立つのだが。
完全に、おちょくられている。
あの時はあんな状況だったし、障子の奥に隠れた人物に気付かなかった、ということもありえる。
今の言葉を知っている、ということは……確実に聞いている。
「だってあれ、完全にヤっちゃってるじゃない! もっとはっきり言ったら、セッ――」
「違ぁぁぁあう! そこまでやってない! 確かにそんな感じにはなってたけど、断じて違う!」
「完全に喘いでいたじゃないの! 妖夢に至っては、ぜっち――」
「おいぃぃぃい! 自重しろ!」
なんだよ、この歩く十八禁。
ド変態なのは、まさかの幽々子。今朝を見ると、妖夢も中々だが。
ふと、幽々子の顔が笑顔になった。
――ただし、意地悪な方の笑顔に。
幽々子の腕が俺の腕を掴み、お互いに動けない状態になる。
そして、幽々子がすぅ~……と、息を大きく吸って。
「……妖夢~! 天が浮気してるわよ~!」
「口を縫い合わせてやろうかぁぁぁぁあ!」
そしてすぐ、ドタドタと廊下を走る音が聞こえる。
腕は掴まれて動けない、今の状況は幽々子を押し倒している。
……あっ。
「浮気!? 天君、何、して……」
数秒後、妖夢が部屋の障子を開け放った。タァン! と音を部屋に鳴り響かせて。
この状況が目に飛び出してきて、目を見開く。
ですよね~……はぁっ。
妖夢はペタン、とその場に座り込んだ。
「ぅぇ、天君が、幽々子様に~……ぇ、ぅ」
「あ~あ。彼女泣かせた~。天君は何して――」
「お前が言うな」
幽々子の手は離されていて、俺は妖夢に近づく。
妖夢は目元に手をやって、泣いている。
「あ、あ~……そのこれには訳が――」
「はい、捕まえました」
そう言って、妖夢は俺の腕を掴んだ。
……ゑ?
「私がこれくらいで泣くと思いましたか? ふふふふ……じっくりと、言い訳を聞かせてくださいね?」
「いや違うんだよ妖夢。俺達は全てを間違えているんだよ」
そこから小一時間、妖夢にお説教みたいな何かをされたことは、言うまでもない。
お説教みたいな何かを終えた後、俺と妖夢は人里に遊びに行った。
俺が姿を現すと、皆からの心配の声が上がった。
霊夢が昨日、伝えてくれたのだろう。
今は、妖夢とどこに行こうか決めている最中。
事前に決めていないのが悔やまれるが、なにせいきなりだったから、決められなかった。
「ん~……どうしようか」
「ん~……あ、あそこに行きたいです! えっと、ええと……あまみしょ?」
「あ、あまみしょ?」
なんだろうか。この可愛い感じは。素で言っている表情がたまらない。
惜しい。惜しいのだが、かすってるのだが。
いや、もう大半が当たっているのだが。
「甘味処か。行くか」
「そうです、多分そこです! ……天君。あれはですね、普段行かないですし、読み方があれなんですよ」
目を逸らしながら、頬を掻く妖夢も可愛い。
暫く甘味処へ歩いていると、彼女から手を繋がれる。
しっかりと指を絡ませて繋ぎ、彼女の顔を見る。
彼女は、とても嬉しそうに笑って、俺と彼女の繋がれた手を見つめていた。
……あのさぁ、甘味処、もうここにあるんじゃねぇかな?
もう既に甘い味が口の中に広がっているのですが。
甘味処に入って、若い女性の店員さんが出迎えでくれる。
「いらっしゃいませ~……ふふふ、熱々ですね?」
手を思い切り繋いだところを見られ、二人で恥ずかしがる。
けれど、手は離さない。
「あ……す、すみません」
「いえいえ、見ていて目の保養になりますし、むしろもっと見せてほしいですね~。こちらのお席にどうぞ?」
て、店員さん、こういうの好きなのか……
まぁでも、俺はこういう軽い感じの店員さんの方が、話しやすい。
接客云々がどうこう、とかは別に。俺はこっちの方がいい。
妖夢を左側、俺が右側に座り、メニューを開く。
俺は白玉栗あんみつを、妖夢は白玉クリームあんみつを注文する。
先程の店員さんがメニューを取り、奥へ。
それと同時に、左側から肩に軽い重みが。
ふとそちらを見ると、彼女が頭を預けて、気持ち良さそうに笑っている。
「ごめんなさい。これ、すっごく落ち着くんです。はわぁ~……」
なんだろう、これ。
俺も落ち着くんだが。やっぱり天使は妖夢だったんだな。
手を恋人繋ぎで繋いだままなので、さらに密着度が上がる。
あっという間にあんみつが運ばれてくる。
途中、あの店員さんにニヤニヤされてこっちを見られていた気もするが、気のせいだろう。
小豆にアイスクリーム、白玉に、栗とクリーム。
スプーンにそれらを掬い、食べる。
幻想郷にも、スプーンはあるんだな。
基本和食しか食べないので、あまりわからなかったが。
「ん~! おいひいれふ~!」
おぉ、彼女が頬に手を当てて喜んでいる。隣の半霊も嬉々としてふよふよしている。可愛い。
「ん、こっちも美味しいぞ。……ほら」
スプーンで掬い、妖夢に差し出す。
「あ……こ、これ、間接……はむ」
一瞬彼女が呆けて、スプーンにかぷっと。
「んくっ……美味しいですね。……はい、え、と……あ~ん?」
「がはぁっ!」
「そ、天君!?」
俺には、耐えられなかった。愛くるしいにもほどがある。
なんだ、この可愛すぎる生き物は。あ、俺の彼女じゃん。幸せだな、俺。
この、スプーンを差し出して、疑問形の如く首を傾げるあたり、超かわいい。
瀕死になりながらも、食いつく。
甘い味が広がっていく。ただ、ひたすらに甘かった。
妖夢も甘い。うん、甘いな。
「……妖夢も食べちゃいたいくらい可愛いな」
「ふぇっ!? え、えっと、食べ、たべ……る……」
顔を紅潮させて、恥ずかしがっている。
あたふたしていて、小動物をさらに庇護欲を増幅させた生き物みたいになっている。
自分の中で膨れ上がる庇護欲に負けて、妖夢の頭をくしゃっと撫でる。
「ふぁ……えへへ……うみゅぅ……」
可愛らしさ溢れる声をあげて、俺の胸に抱きつく。
こんなに可愛らしい生き物がいたとは。
「……天君の匂い、いい匂いです~……はあ~……」
……うん、もう、何かな。
耐えられないよね、これ。耐えろって言う方が無理だよ。
姿勢を戻して、再び食べ初めた。
暫く食べて、妖夢の口元にクリームがついているのが見えた。
……ふむう。ここは、紙か何かで拭き取るのがいいのだろう。
が、しかし。ここでカウンターをしないわけにはいかない。何に対してのだよ。
「ここ、クリームついてる……んっ、うん、美味しい」
「あ、え、や、それ……!」
クリームを指で拭き取り、クリームを舐める。
当の彼女は顔を赤くして、口を忙しなく動かしている。
どうやら、成功のようだ。……けれど、その様子でまた俺がやられる。意味ないな、これ。
……ちょっと、妖夢さん?
自分でわざとクリームつけてませんか?
付け終わったら付け終わったで、こちらをちらちら見ている。
……あ~かわいい。
さっきと同じようにして、クリームを味わう。
妖夢自身がクリームみたいなところもあるな。だったら、半霊は白玉か。頭大丈夫か、俺。
まぁでも、味は……気になる。
「妖夢、その半霊ちょっとこっちに来れない?」
「えぇ、いいですけど……どうするんですか?」
ふわふわと、俺の目の前にやってくる。
取り敢えず、最初に抱きしめるとしよう。
おぉ、やわらかい。マシュマロみたい。
「わぁ~……やっぱり天君は暖かいですね……ふひゅぅ~」
「……へぇ、感覚が繋がっているのか」
「えぇ、そうですよ。ちなみに、半霊から弾幕も出せます」
そりゃすごい。近接攻撃しながら、半霊の遠距離バックアップもできるのか。
さて、味の方は……舌を出し、ペロリっと。
「わひゃあ! い、いきなりどうしたんですか!」
「ん? 味が知りたかった。無味なんだな、これ」
残念。でも、食感は……やめておこう。
噛んだりしたら、その感覚が妖夢に伝わるわけだしな。
……店員さんが、血を吐いて倒れてない? あれ大丈夫なの?
「「ご馳走様でした」」
二人で手を合わせて、勘定に。先程の若い女性が受けてくれる。
「……はい、こちらがお釣りとなります。いやぁ~、いいものを見せてもらいました、ありがとうございました!」
「い、いいものって……はぁ、それは良かったです……?」
良かった、と言うべきなのか、これは?
「優しいんですね、天さんは」
「いや、そんなことはないですよ……」
「いえいえ、それこそ謙遜ですよ。いつも私達を守っていただき、ありがとうございます」
……そう、か。
俺は、いつも守られる側の声を聞いていなかったんだな。
ありがとうございます、か。それを聞いて、自然と笑みが浮かぶ。
「ホント、優しいですよね。……私も、惚れてしまいそうになりますね」
「あ、あはは……え? い、いや、惚れそうって――」
「そのままの意味ですよ~。魅力溢れる若人ですからね~」
「……!」
満面の笑顔を浮かべた店員さん。それに対して、戸惑いしか見せられない俺。
初対面の人から、いきなりこんなことを言われるとは、思わなかった。
まぁ、この人のふざけた柔らかい笑みのことだから、本気ではないんだろう。
そんなことを思っていると、隣の妖夢に腕を引かれる。
引かれた俺の腕は、抱き枕のように抱かれる。
「……ん!」
頬を膨らませて、真っ直ぐと店員さんを見つめている。
まるで、自分のものだと言わんばかりに。不機嫌だと言わんばかりに。
……可愛すぎる。
「あらあら、妖夢ちゃんには勝てないわね~。とったりしないから、大丈夫よ?」
「……ん。んむゅ……」
腕に頬ずりしてきた。なにこの生き物。可愛さ溢れすぎだろ。
俺の精神がゴリゴリ削られるんだが。
「じゃ、じゃあ、ありがとうございました。また来ます」
「えぇ、またのお越しを、お待ちしております」
妖夢と腕を組んだまま、外に出る。
「……浮気はダメですよ。今日で二回目ですからね」
「いやあれはノーカウントだろ。あれは幽々子が――」
「じゃあさっきのはカウントなんですね?」
「んなわけないだろ。俺は妖夢一筋だ。妖夢が大好きなんだ」
「え、あ、あぅ……」
ふふふ、俺が妖夢の弱点を知らないわけがないだろう。
不意の告白。これが弱い。今までの経験だ。
しかし、これは諸刃の剣だ。
恥ずかしがったり、照れたりする妖夢のカウンターに耐えられるかどうか。
「がはぁっ!」
「そ、天君!?」
……耐えられるわけないじゃないですかやだー!
ありがとうございました!
妖夢ちゃんこそ甘味である。
今回、天・妖夢sideとタイトルにありますが、
次回は幽々子・翔sideプラスαです。
αが何になるかわかりませんが。
ではでは!