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東方魂恋録  作者: 狼々
第6章 理想
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第58話 目覚めて、救って

どうも、狼々です!


前々回の後書きで、第5章が終わると書いたのにもかかわらず、

第5章のままでした。すみません。

後に、第6章として章を作りました。


そして、重ねてなのですが、今回文字数が少なくなってます。

すみません。私がそうとうきているんです。


では、本編どうぞ!

 永遠亭に戻り、永琳のところに連れて行く。お姫様抱っこのままで。

 扉を開けて、治療室へ。

 ……あ、絶対に何か言われるだろ、俺。


「あら、おかえりなさい。治療の用意はできてるわ」

「……え? いや、なんで……」

「抜け出したの、バレてないとでも思った? 怪我は完治してるから、止めなかっただけよ」


 永琳さんすごいです。

 こうも見透かされると、不気味な感じもする。


 準備はできているとのことなので、ベッドに妖夢を寝かせる。


「ぁ……」


 そう声を漏らして、こちらに両手を伸ばす彼女。

 物欲しそうな顔をしている。口は半開き、目はトロンとしている。

 可愛すぎて、胸が締め付けられる。


 取り敢えず、両手で彼女の手を握る。

 そうしたら、妖夢の顔が緩んだ。心地よさそうだ。


「はいは~い、ここは恋の病は治せませんからね~。治療するわよ~」


 完全に二人の世界に入っていた俺と彼女は、一気に顔を紅潮させて、一瞬で手を戻す。

 永琳が溜め息を吐きながら、妖夢の治療を始める。


 塗り薬やら飲み薬やらを事前に持ち込み、服を脱がしにかかる。

 雪のように白い肌が(あら)わになり、咄嗟に目を背ける。


 しかし、思春期男子というものは、欲望に非常に忠実な生き物なのである。

 見ていないふりをしながら、目の端で視界に入れる。

 目の保養にしかならない。


 そう思ったが、傷がひどかった。

 沢山の刺し傷が、俺の怒りを再び沸々とさせる。

 あの女は、どうにも許せそうにない。


「はい、これでよし。この塗り薬と飲み薬を毎日一回塗って飲んで頂戴」

「わかりました、ありがとうございました」


 妖夢の治療が終わり、妖夢が立ち上がる。

 が、ふらふらとした足取りでいる、心配になる。

 

「あっ……!」


 俺の心配は現実となり、彼女の足がもつれて崩れる。

 事態の予測がある程度できていた俺は、素早く前に入って受け止める。


「あ、ありがとう……」

「あぁ、それはいいんだ。大丈夫か?」

「はいは~い。ここでは恋の病は治せませんからね~。二度目よ〜。天、貴方が運びなさい。入院するような容態じゃないから、帰っても大丈夫よ。貴方の傷も一つでしょうし、同じ薬を使えばいいわ」


 あれだけ刺突の傷があって、大丈夫だったのかと驚く。

 それだけ永琳の薬が効く、ということなのだろう。

 自分も、思い切り一突きされて大丈夫なことに、今更ながら驚く。


 妖夢をもう一度お姫様抱っこしようとした時。


「あ、ちょ、ちょっと待って下さい!」


 否定されました。拒絶されました。

 少しだけだが、悲しくなってくる。


「あ……嫌だったか。悪かったな」

「そうじゃなくて~! その……おんぶがいいです! おんぶしてください!」


 彼女がきらきらとした目でこちらを見つめてくる。

 そんな妖夢も可愛い。

 彼女の希望通り、背中に抱える。


 そして、おんぶした時、彼女の軽さにまたも驚く。

 背中から、小さく彼女の声が聞こえる。


「そ、その……重くないですか?」

「全っ然。軽すぎてびっくりなくらいだ」

「はいは~い。小声でイチャイチャしてても、聞こえてるわよ~」


 どうやら、バレていたらしい。永琳、恐るべし。

 しらを切るように、妖夢がわざとらしく別の話をする。

 

「お、おぉ~……高いですね。肩車はもっと高くなるんでしょうかね?」

「ん? やってみようか? 俺はいいぞ」

「はいは~い。怪我人は肩車より、おんぶで運ぶのがいいわよ~。イチャイチャしても傷は治らないからね~」


 永琳に、呆れを前面に出した表情で見送られ、白玉楼に戻る。


 三ヶ月ぶりの帰還だが、幽々子と翔はどんな顔をするのだろうか……?


 ―*―*―*―*―*―*―


 白玉楼に戻っている途中、私は彼の背中に乗って運ばれていた。


「ひろ~い。あったか~い。そらくんだいすき~」

「そう言われると照れるだろ。恋人同士なんだから、俺も大好きだよ」


 そうやって、不意の告白。こういうところは、やっぱりズルい。

 彼にしかない魅力に惹かれて、本当によかった。


「いえいえ、私の天君が大好きな気持ちには負けませんよ。絶対です」

「いやいや、それこそないな。俺が妖夢を想う気持ちは、誰にも負ける気がしない」


 彼はそう言っているが、絶対にない。

 何故なら――


「天君が眠っている間、私はどうにかなっていましたから。あまりにも辛くて、幻聴や幻視、めまいまでしてましたから」


 辛かった。もう少し帰還が遅かったら、私は本当に人形になってしまうかと思った。

 涙も枯れたかと思ったあたりから、少し諦め始めていた。

 けれど、天君が起きてくれた。こうして、私をおぶってくれている。


「あ~……ホントにごめんな、妖夢」


 彼が悲しそうな顔をする。やっぱり、この悲しい笑顔を見ることが、一番辛いのかもしれない。

 私だけが辛いならいい。けれど、この顔をする天君も同じく悲しいのだ。

 そんな彼の顔は、辛い。


「そうじゃ、ないんですよ。それだけ私が、貴方を大好きだってことですよ。……察して下さい」


 どうしても、顔が赤くなってしまう。

 おんぶしてもらっている時点で既に赤くなっているのだが、告白はもっと恥ずかしい。

 恥ずかしいのだけれど、甘酸っぱい感覚が、たまらなく好き。

 そうやって、また一層と好きな人に溺れて、酔いしれる。


「そうか……俺も大好きだからな、妖夢。本当に、すまなかった」


 彼はいつも、悪いと思ったらすぐに謝るし、嘘を吐かない。

 私の大好きな人は、いつも誠実である!


「そうやって謝るなら、これからは三ヶ月分、甘えさせてくださいね……?」

「……そうやって耳元で囁かれるの、弱いからやめてくれ。あと、今回と言わず、三ヶ月分と言わず、いつでもどれだけでも甘えてくれ」


 私の大好きな人は、いつも誠実で優しくもある!

 その誠実さと優しさに、惹かれてよかった。


 ふぅん……耳元、弱いのかぁ……

 自分でもわかる。今の私は、とっても意地悪な笑みを浮かべている。

 今まで眠っていた分のおしおき、ということにしておこう。


「へぇ……こういうの、弱いんですねぇ……?」


 わざと淫猥な声で、誘うように言う。


「ぅ、ぁっ……いや、マジで弱いから止めてくれ……!」


 反応が可愛い。いじりがいがある。

 私の笑顔が、また一層と意地悪になるのがわかる。


「へぇぇ……かっこいい天君もいいですけど、可愛い天君も最高ですね……」

「や、やめ……今おぶってるんだぞ! こんなとこで理性飛ばそうすんな!」


 あ、ちょっと怒った。怒った彼も素敵だ。

 ちょっとだけで、本気で怒っているわけじゃないところが、なんとも彼らしい。


「じゃあ、甘える分はいつでもどれだけでもいいって言いましたよね!」


 そう言ってすぐに、私は天君に思い切り抱きついた。

 おんぶで既に抱きついているが、もっと力を入れて密着する。


「ぎゅ~!」

「え、なにそれ可愛い。俺もそれしたいんだけど」


 つまりは、抱き合いたい、と。

 私もそう思っているので、二人の考えは同じ。

 通い合う考えって、なんだか恋人同士の証のようで、嬉しくなってしまう。


「帰ってからですね。それまで私が堪能しますよ~……ふへへぇ~……」


 つい、笑顔で顔が緩み、だらしない声を漏らしてしまう。

 どうやら、私には彼が必要不可欠の存在みたいだ。前々からわかってはいたのだが。

 天君欠乏症になってしまうし。今思えば、本当にひどかった。


 彼の成分が足りないと、幻視・幻聴、めまいの症状が起きてしまう。


「俺も妖夢を堪能したいんだが」

「ふぇっ!? た、たた、堪能……?」


 ど、どんな意味の堪能なんだろうか……?


 ―*―*―*―*―*―*―


 少しからかって言ってみた。そらの からかうこうげき! こうかは ばつぐんだ!

 ただし、妖夢に限る。しかし、こちらも妖夢が弱点。

 なんだ、俺と妖夢はドラゴンタイプだったのか。

 どちらかというと、妖夢はゴーストな気もするな。半霊だし。


 そんな下らないことを考えていると、すぐに白玉楼に着いた。

 妖夢をおんぶしたまま、中に入って幽々子と翔に報告に行く。

 幽々子の部屋に行くと、二人が揃ってぼーっとしていた。


「よう、二人共。ただいま」

「天! お帰り!」

「本当に、心配したわよ?」


 やはり、待ってくれている人・心配してくれる人がいるというのは、嬉しいことだ。

 三ヶ月も待たせて、心配させたことに、大きな罪悪感を感じる。


「ごめんな。お待たせ」

「いいのよ、それよりも、私達が聞きたいのは、後ろに背負っている妖夢よ。ねぇ~?」

「ねぇ~?」


 こいつらは、いつになっても意気投合しているんだな。

 変わらない様子で安心したよ。

 ……安心したよ。


「あぁ、妖夢をお姫様抱っこしたら、二回目を嫌がられて、『おんぶがいいです!』って言ってたからな」

「ちょっと、天君! なんで言うんですか! 幽々子様と相模君も、静かに笑わないでください! お、おろして下さい!」


 俺をポカポカと叩いているが、全然痛くない。

 むしろ可愛い。超可愛い。

 三ヶ月眠っていた分、俺は妖夢の成分が足りないんじゃないだろうか?

 今すぐにでも抱き締めたい。


 意地悪しておろさない、という手もあったが、素直におろす。

 おろした時に見えた顔が、真っ赤に染まっている。

 妖夢は可愛い。異論は認めない。


「あ、それでだが……黒幕の一人と戦って、勝ってきた」


 そう俺が告げると、二人の顔が一気に強張り、引き締まる。

 それを聞く準備ができたと解釈し、事の経緯を説明する。


「まず、妖夢が一人でそいつと戦っていた。そっちのそれまでの状況は?」

「はい、まずローブを着た人に、魔法の森の奥に呼び出され、そこに行きました。そこには、叢雲という名の女がいて、私を攻撃しま、した……」

「じゃ、じゃあ――!」

「妖夢ちゃんは、既に黒幕の二人と・・・・・・接触している・・・・・・ってことだね」


 そう、そういうことになる。

 自分が気付かぬ内に、黒幕の一人と会話したと考えると、恐ろしい。


 呼び出したのは男なので、その叢雲、というあの女とは別人。

 二人目であることは、確定だ。


「その叢雲との戦闘中に、俺が目覚めた。すぐにそこに向かって、叢雲に勝ったってわけだ」

「で、その叢雲って女は今どうなったの? 死んだ?」

「いや、今は紫に預かってもらっている。情報を吐かせるって言ってたな」


 あの女のことだから、どうせ吐かないだろうが。


「ま、それはいいとして。二人は大丈夫なの? 妖夢が一人で戦ったのと、呼び出しを考えると、敵はあの時の妖夢一人なら勝てると踏んだんでしょう?」

「そうですよね。ということは妖夢ちゃんはかなり危なかったんじゃない?」


 そう、そこまでは俺も考えが行き着いた。二人も当然気付く。二人は案外、理解が早い。


「えぇ、もう少しで死にそうでした。でも……このペンダントと、天君が救ってくれたんです」


 そう言うと、妖夢がペンダントを握りしめる。

 目からは涙が流れ、頬を伝っている。


「あの剣を止めてくれたのは、このペンダント。もうダメだと諦めて、死ぬ寸前だった時に助けてくれたのは、天君。天君が、二回も私を救ってくれたんです」


 そう……だったのか。本当に、あの時ペンダントを買ってよかった。

 俺の気持ちが妖夢を救えたと考えると、俺まで泣きそうになってくる。


「本当に、よかったよ、妖夢」

「こちらこそ、貴方が目覚めてくれて、本当によかったです。そして、私を救ってくれて、ありがとうございます!」


 彼女の涙を携えた笑顔は、思わず見惚れるくらい、可愛く、綺麗なものだった。

ありがとうございました!


最近、私が肉体的にも精神的にも壊れかけています。

妖夢ちゃん可愛い。妖夢ちゃん甘くておいしい。


ではでは!

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