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東方魂恋録  作者: 狼々
第5章 現実
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第44話 邂逅

どうも、狼々です!


今回は、前回の最後で若干ヒントのあった者について、大々的に。

妖夢ちゃんって、超可愛い(唐突)。


では、本編どうぞ!

 幽々子に昼食を作るため、妖夢と一緒に台所へ。そういえば、昼食前だったか。すっかり忘れていた。


 二人分の歩行の足音が聞こえる廊下で、栞が俺にも妖夢にも聞こえる声で言う。


「妖夢ちゃん、本当にありがとうね。天が迷ってるのを助けてくれて。ほら、天も妖夢ちゃんにしっかり言う!」

「あ、あぁ……妖夢。本当にありがとう。妖夢が来てくれなかったら、今生きることもできなかった」


 俺が申し訳なさそうに、頭を下げて言う。

 すると妖夢は、少々戸惑いながらも、この言葉を返してくれる。


「あ、えっと……いいんですよ。私達が天君を好きですから。幽々子様や私だけじゃなく、人里の皆も言ってます。あんな二つ名で呼ぶくらいですからね」


 あ、そういえば、まだ知らないんだった。や、やばい、今になると相当気になるんだが。

 恥ずかしいやつだったらどうしよう。中二病的な。


「な、なぁ妖夢。俺ってどんな二つ名で呼ばれてるんだ?」

「あ、知らないんですか。ふふっ、自分で確かめた方がいいですよ。今日は一緒に買い物に行きましょう?」


 言葉を弾ませながら、少し台所へ行くスピードが早くなった。

 ……俺と一緒に、行きたいのだろうか。俺も行きたいのだが。


 (ねえねえ。まだ謝る必要のある人がいるんじゃない? ねえn――)

 (ああぁ、そうだったな栞ありがとううん)

 (私の扱いひどいね!? ……戻ったし、気付けたしでよかったよ)


 栞の、優しげな柔らかい声が頭に響く。

 ……あ~、こういうの苦手なんだよ! 特に栞には何を言われるか!


 (……本当にありがとう。あの時に俺を突き放してくれなかったら、今気付けたかどうかもわからなかった)

 (いいのだよ、そこまで感謝しなくても~。どうしてもというなら貢物をだね~)


 やっぱり俺の気がどうにかなっていただけのようだった。





 さて、昼食も食べ終わり、修行を少しした後、妖夢と一緒に人里へ。

 少しドキドキする。栞には怒気怒気(ドキドキ)してる。

 何が貢物だよ。神様かっての。神様はいるかどうかもわからないのにな。


 ようやく人里に着いた。瞬間。

 人里の皆がわっと声をあげ、騒ぎ始めた。……何事?


「皆、天君と会うのを楽しみにしてたんですよ。行ってきてください」


 ぽん、と背中を押されて、前に。

 そのすぐ後、沢山の人に囲まれた。


「ありがとうございました! 幻獣との戦いでご活躍されたとのことで!」

「かなりのお怪我を負われたらしいですが、大丈夫だったでしょうか!?」


 おお、なんというか、くすぐったい気分だ。

 自然と笑みが溢れてしまう。皆に、ありがとう、とか、大丈夫、とか言っていると。






「皆~! 『努力の英雄・・・・・』がいらっしゃったぞ~!」


 一人の青年が、里の皆に声をかける。

 え、何その二つ名、かっこいい。

 てか、英雄って早くない? まだ幻獣来るんだけど。

 それよか、何で努力がバレてるの? ……ただの人間だったか、俺。そういえば。


「皆、ありがとう。でも、敬語は要らないんだ。あの時の宴みたいに、気軽にしてくれ!」


 皆の笑顔が嬉しい。俺は、この光景を見られてよかった。

 幻獣を倒せてよかった。救われた命と笑顔が、ここにあるから。


「で、皆はそんなに騒いでどうしたんだ?」

「天さんのための、宴を人里で開こうとしているんですが、天さんはご参加いただけますか?」


 え、いいのかよ?

 俺一人のためってのも、何だかおかしい気がするが。


「俺だけじゃなく、皆のための宴なら、参加しようかな?」

「わかりました! ありがとうございます! 夜には、花火もありますよ。日程なのですが、一週間後でもよろしいですか?」


 一週間後か……

 いつでも暇な俺には日程など関係ないのだが、修行がある。


「ようむ~、一週間後に宴だってさ。日程は――」

「行きましょう! ぜひ! 一週間後なら大丈夫です!」

「うわぉい!」


 いきなり大声で迫られて、びっくりした。

 な、何なんだろうか……。


「と、取り敢えず大丈夫らしいから、俺も参加させてもらうよ」


 そう言って、皆がわっと湧き上がる。

 そんなに喜んでもらえると、こちらとしても、照れる。


 そして、一人の人の言葉が、またも俺を驚かせる。
















「この宴は、今日来た・・・・外来人の・・・・宴も兼ねているんですよ!」

「なっ……! 外来人!?」


 俺と同じ境遇で、紫に呼ばれたか、偶然ここに来たか。

 それはわからないが、そいつには共通意識を持つ。


「今、そいつは?」

「えっと……妖怪の山の、守矢神社に預かられてますね」


 妖怪の山の、守矢神社。

 妖怪の山は以前聞いたことがある。が、神社には、博麗神社の方しか知らない。

 同じ幻想郷に二つも神社があって大丈夫なのだろうか?


 そいつのことを知りたいところだが……


「妖夢、今日は守矢神社に行けないか?」

「う~ん……買い物を済ませたら行きましょう。天君も、その人が気になるでしょうし」


 おぉ、やっぱり優しい妖夢。

 俺の境遇を考えてくれている。ありがたい。


 






 皆に別れを告げて、買い物を手短に済ませた後、一旦白玉楼に帰って妖怪の山に。

 妖怪の山にあるらしい守矢神社の場所はわからないので、妖夢に先導してもらっている。

 ここまでしてくれるとは、本当に嬉しい。


 飛行から、とある山の何かの建物の近くに着地。

 ここが妖怪の山で、守矢神社の近くだろう。というか、幻想郷に山自体も少ないのだが。

 むしろこれしかないレベルまである。


 そして、俺達の近くには、箒で境内を掃除する巫女さん。


「……巫女さんがいるな」

「えぇ、正確には、風祝(かぜほうり)らしいですが。今呼びましょうか……早苗(さなえ)~」


 妖夢が声を少し大きくして呼ぶと、その風祝の少女が掃除を一旦止めて、こちらを振り返る。


 特徴的で印象に残るのは、緑のロングヘアーと、頭についている白蛇と蛙のアクセサリー。

 ……白蛇に蛙?

 青の縁取りの白い巫女服に身を包ませ、同じく青いスカート。大きい緑の瞳。

 ……同じような巫女の霊夢よりは、大きいだろうか。何がとは言わない。


「こんにちは、どうしましたか?」

「新しく来た外来人に会いたいのです」

「わかりました……あ、貴方が天さんですか。はじめまして。私は、東風谷(こちや) 早苗(さなえ)です」


 おぉ、なんと礼儀正しい清楚な感じがする。

 建物を見る限り、霊夢の博麗神社よりも裕福なイメージを受ける。

 し、仕方ないよ。参拝しにくいらしいから……


「はじめまして。えっと……早苗は、防衛グループで名前を呼ばれていたよな?」

「ええ。天さんも、幻獣戦闘グループに呼ばれて、大きく活躍したそうで」

「あ~、まぁ大きく活躍したかどうかはわからないが、結構頑張った方かと思うぞ?」

「またまたご謙遜を。……では、その外来人のところに連れていきますので、ついてきて下さい」


 そう言って、早苗が神社の中に入っていく。妖夢と俺は彼女についていく。

 ……あれ、ちょっと妖夢がしおれてる。ホントにちょっとだけど。何故かはわかりません。

 しおれてる妖夢も可愛い。可愛すぎる。しゅんとした儚げな感じもまたいい。


「つきました。この部屋にいますよ」


 早苗がある部屋の前で止まって言う。

 ……誰なんだろうか。同じ外来人である以上、これから関わっていくことになるんだ。


 障子を開ける。すると中にいたのは、黒髪の少年。

 彼もこちらを振り返る。

 中性的な顔立ちに黒髪で、輝きを持つ蒼い目。


 この、容姿は……!

























「か、翔!?」

「あ、天だ。やっほー☆ で、ここどこなの? 天もずっといなかったし」


 そう、相模(さがみ) 翔。俺の外の世界での唯一の友人。親友と言ってもいいくらいの友人。

 もう会うことはないと思って諦めていた、大切な友人。


「「し、知り合いなんですか!?」」


 早苗と妖夢が驚きを見せ、二人の声が重なる。

 それはそうだろう。そもそも幻想郷に来ることが珍しいんだ。知り合い二人が幻想入りというのも、確率は低い。


「あぁ、俺の外の世界での親友だ!」

「お、嬉しいなぁ。ど〜も、同じく天が親友の相模 翔だよ、よろしゅう♪」


 この楽観的な話し方も健在。同じように親友と言ってくれることに、笑顔が隠せない。嬉しい、嬉し過ぎる。


「早苗さんとは知り合いなのか?」

「知り合いもなにも、ここに置いてくれてる人。ここの幻想郷についても、色々教わった」


 やはり早苗は、面倒見がいいというかなんというか。置いてくれるとは。

 こう言っちゃ悪いが、霊夢に丸投げしてもいいのだし。


「で、俺的には、そこの隣でふよふよ浮かせている君に関して知りたいな」


 そう言って、翔が妖夢を指差す。

 確かに、半霊は気になるよなぁ。俺も最初は我慢しきれずに聞いた。今ではそんなに気にならなくなったが。

 慣れって怖い。……妖夢がさっきよりしおれてる。




 妖夢が一通りの説明を終えた。ついでなので俺の修行についても話した。幻獣についても。


「へぇ、色々驚いた。天が刀を使うことも。でもねぇ、一番驚いたのは……」


 そう言って、いつもの笑顔を悪戯に歪めた。もう大体予想がつく。この顔は、どんな時にするか。


「……いや、やめとこう。後で直接聞くよ」


 ほう、何故かは気になるが、聞かれないに越したことはない。

 あの手の顔の人が、からかわないわけがない。

 楽観的な彼の性格なので、こういった面白いことが、彼は何より好きなのだ。


「は~い、皆、こんにちは~」


 そうどこからか聞こえ、すぐにスキマができた。あぁ、紫ね。


「おぉ、久しぶり。で、どうした?」

「翔君について、幽々子に話してきたわ。白玉楼に住まわせるって。置くにも限界があるし、だって」


 ……は?

 翔が、白玉楼に? いや、嬉しいのは嬉しいんだが……


「翔……空、飛べるか?」

「飛べたらいいね」


 ですよねー。そりゃ飛べないわな。

 じゃ、引き連れていきますかね……。






 翔を文字通り引き連れて、空を飛んで白玉楼へ。

 もう夕方を通り越して夜になりそうだ。

 途中、冥界や白玉楼、俺や妖夢、幽々子の説明もしながら。


「おぉ、大きいね、このお屋敷」

「ああ。じゃ、幽々子の部屋に行くか」


 白玉楼について、幽々子の部屋に。

 彼女の部屋の障子を開けて。


「どうもこんにちは、相模 翔、天の親友です、よろしく」

「あら、君が翔なのね。今日からここに住んでちょうだいね。よろしく」

「ありがとうございます。本当に俺はここで住んでも問題無いんですか?」

「えぇ、大丈夫よ。むしろ歓迎するわ。なんたって、天の親友だしね。前の世界の彼の恥ずかしいこととか……」


 と、トントン拍子で話が進んでいき。

 ……おい幽々子。人の弱みを握ろうとするんじゃない。

 何ごく自然に黒歴史を探ろうとしているんだ。


「あ、私もそれ聞きたいな~」


 おい栞。ノるんじゃない。

 ちなみに、栞のことについて翔に話した時、犯罪者認定されかけた。

 全く、変な話だ。幼女の魂が俺の中で住んでるだけだろう?


 ……ホント、変な話でしたね。俺が犯罪者認定されてもおかしくないレベル。

 いや、俺が悪いのか……? 違うよな?


「あ、じゃあ後でいくらでも喋ろっと。天のいいところも含めて」


 その顔をやめろ、翔。

 何でその悪戯顔でこっちを見るんだ。


「あ、私も聞きたいです!」


 妖夢、そんなに目を輝かせないでもいいんだよ?

 世の中には知らなくてもいいことがだね……


「はいはい。先に夜ご飯作ってくるから、待っててくれ」


 皆の返事を待たずに、台所へ。

 妖夢が追おうとするのを手で制止して。


 ―*―*―*―*―*―*―


 天君の親友らしい、相模君が白玉楼にやってきた。

 外来人同士で知り合いとは、少し珍しい。


 話を聞く限りでは、天君と同じように、呼び出されたわけではないらしい。

 それにしても、彼の楽観的な性格には、ある意味“すごみ”がある。

 徹底的に飄々とした態度を見せて、崩さない。


「で、妖夢ちゃん……だっけ? 単刀直入に聞くよ。君は、天が好き?」

「え……えぇぇええ!?」


 天君が台所へ行ったかと思えば、すぐにこれだ。

 それよりも、何でバレたの……?


「そのペアネックレスだよ。天はアクセサリー類を付けたことを見たことなかったから、すぐにわかったんだよ」

 

 な、なるほど……

 にしても、天君と同じくらい、観察眼が鋭い。

 天君と会わないでもう一年以上経つのに、そこに気づく相模君。

 こういうことに限るかもしれないけど。


「で、どうなの? 天のこと、好き? 嫌い?」


 このどこか含みのある笑顔。

 飄々とした態度とセットになる笑顔だ。


「……大好き、です……」

「……幽々子さん、妖夢ちゃんって大胆で正直でめっちゃ可愛いですね」

「えぇ、そうよ? あと、幽々子でいいわよ?」


 こうやってさらりと恥ずかしいことを言う。

 言われるこっちとしては、信じられないのであまり恥ずかしくはない。


 けれど、彼に言われるなら別。誠実さもあるしね。


「いや、さん付けがなんかしっくりくるので。にしても、惚れまくってますねぇ」

「そうなのよ。初恋で溺れまくっちゃってね~……」

「ゆ、幽々子様!」


 この飄々とした態度は、どこか幽々子様と似ているのかもしれない。

ありがとうございました!


ここでまさかの相模くん。

予想できた人は、どれくらいいたのでしょうか。


まぁ、最後に登場したの、第2話ですから……

40話分空いたわけで。


ではでは!

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