第41話 『孤独』はどっちだ?
どうも、狼々です!
投稿が遅れてしまい、本当に申し訳ありません。
前回からもわかる通り、シリアス出します。
今回は、その前準備みたいな感じです。
しばらくはストーリーは遅めで進めます。
天君の二つ名は、この話では出しませんが、近い内に出します。
では、本編どうぞ!
部屋から出てしばらく歩き、台所についた。
今度の妖夢は、先に俺に気付いたみたいだ。
「おかえりなさい、天君」
彼女の美麗な笑顔。いつ見ても飽きない。
その優しそうな微笑みに、いつも甘えたくなってしまう。
けれど、甘えていては、ずっと弱いままだ。弱いと思われたくない。
「ただいま、妖夢。手伝うよ」
「いえ、いいんですよ。今日くらいは、ゆっくりしててください」
妖夢は優しい。その優しさが、俺にこう考えさせた。
『この優しさは、俺自身に向けられたものなのだろうか』、と。
『本当は俺に向けていないんじゃないのだろうか』、と。
「……悪いな。そうさせてもらうよ」
「ええ。休んでてくださいね?」
妖夢にそう声をかけてもらい、向かったのは、自室。
――否。外だ。刀を持って、外へ。
一刻も早く、少しでも力をつけないといけない。
俺は、強くならないといけないんだ。
強くならないと、信頼されなくなる。
強くならないと、守りたいものさえ守れなくなる。
『守りたいものは、強いだけでは守れない』、とはよく言う。
しかし――
――力がないと、守れないものも十分にあるんだ。
しばらく修行し続けて、栞に問う。
(なぁ、栞。今の動き、どう思う?)
(……知らない。――まだ、気付かないの?)
怒ってる、のか?
なんで栞が。訳がわからないのだが。
それに、『気付く』の意味もわからない。何に『気付く』というのだろうか。
(『気付く』ってなんだよ。それに、どうして怒ってんだよ?)
(……もういいよ。自分で考えな)
栞は、そう冷たい言葉を出しただけだった。
俺が不思議に思い、栞に呼びかける。
(栞? ……おい、栞?)
(…………)
彼女から、返事が返ってくることがなくなった。
無言を貫いて、俺の呼びかけに答えようとしない。
……いったい、どうしたのだろうか。何か悪いことでもしただろうか。
そんなことを考えつつ、修行を続けて。
「……あ、天君。……ここにいたんですね。探しましたよ?」
「あ……? 妖夢?」
妖夢が玄関から出てきた。何しに……
……あ、『休んでてくださいね』って言われたのに、部屋に戻らず、外に出てしまった。
妖夢には、一声かけるべきだったか。
「もう昼食が出来上がりましたよ。一緒に食べましょう」
「ああ、わかった。ありがとう」
それだけ言って、一緒に玄関へ。
幽々子の部屋に向かって、三人で昼食をとった。
昼食も終わり、修行の時間になった。
俺は妖夢より一足先に、中庭に出て、修行を始めていた。
刀を振っていて、一つ気付いたことがある。
「……あれ? あの桜の木、去年も咲いてなかったよな?」
周りの桜の木よりも一際大きく、目立つ桜の木。
その木には、今年も桜が咲いていなかった。
あの桜が満開になれば、どれだけ綺麗なことだろうか。
少し見てみたい気もするな……
「お待たせしました~……さぁ、始めましょうか――って、どうしました?」
「ああ、いやな? あの桜、昨年も咲いてなかったから、何かあるのかな~って」
追いついてきた妖夢に、その木について尋ねることにした。
二年連続でこの桜だけが咲いていない。他は咲いているのにな。
この一本だけ、っていうのも、不自然に感じたのだ。
「あ~……それは、西行妖っていう桜です。その……以前、それで異変を起こしまして……」
え、異変起こしたの? となると、霊夢とかが動いた訳だよな?
となると、首謀者は妖夢か幽々子のどちらかだ。
自然に考えて、幽々子だろう。従者の妖夢が首謀者だとは、少し考えにくい。
……あれ? それって、妖夢は最低でもそれを許容してるよな?
むしろ、従者の立場上、協力している可能性も高い。
「……それで?」
「その……『春』を、集めてました。幻想郷に春が来るのが、とても遅かった時があったんですよ」
ふ~ん……ずっと寒い春だったのかな?
それで、妖夢の顔が少し曇り始めた。何故かはわからないが。
まぁ少なくとも、聞いてよさそうな内容じゃないようだな。
……もしかして、異変関係者だからだろうか?
「ま、いいや。じゃ、修行を始めようか?」
「……そうですね。始めましょうか!」
妖夢との修行が始まった。
……さて、新技の開発もしていきますかね。
―*―*―*―*―*―*―
天君と修行していた。今は終わって、買い物に来ているところだ。
次のお店に移動している途中、修行の時の天君を思い出していた。
天君が、おかしかった。
今まで、天君は修行を楽しんでた、というか……そんな感じだった。
いくら修行と言っても、笑顔は絶やさない。それが彼だった。
けれど、今日の天君は違った。
笑っていなかった。苦しそうだった。笑顔が乾いていた。
何故かまでは、わからないが。
今日はたまたまかもしれないし、三日の休みで感覚を忘れた分を取り戻すためかもしれない。
修行に限ったことじゃないかもしれない。
そう思いたい。けれど、恐らく違う。
先日の病室でもそうだった。笑顔が少なかったし、笑っても胸を締め付けられた。
彼は言った。『何でもないよ』、と。
私は思った。『嘘を吐いているのは明白だ』、と。
私は何を思って、何が理由でそう思ったんだろうか。
ふと、昨日の会話の一言が頭をよぎった。
『明日から帰って修行だな』
……これだ。恐らく、これ。
私はあの時、明日帰ってくる、としか言っていない。
なのに彼は、修行を話題として挙げたのだ。何かある。
そうなると、原因はこれに関連することにある。
修行に関する何か。
……もう少し、様子を見てみようか。
―*―*―*―*―*―*―
あれから――白玉楼に戻ってから。夏になった。
月は七月。日は一日。ちょうど今日から七月だ。
俺は、相変わらず修行にうちこんでいる。
心なしか、夜の修行の時間が増えた気がする。
まだ、栞は俺と話してくれない。しかし、返事が少しそっけないくらいにはなった。
良かったのか悪かったのかはわからない。
進歩したとは言えるかな? 原因はまだ全くもってわからないが。
「まぁ何にせよ、強くならないと、意味が無いんだ」
独り言の様で、自分に言い聞かせる様な言葉。
今は、朝食を食べ終わり、修行に取り掛かろうとするところだ。
強くなる。それだけを目標に、永遠亭を出てから過ごしていた。
少ない時間でも、暇さえあれば、修行に充てた。
あれだけ気になっていた二つ名も、もうどうでもよく感じてきた。
そんな時。ある日の夜。俺が寝た時にユメを見た。久しぶりに。
――なぁ、俺。最近どうしたよ? やけに力に貪欲じゃねぇか。心変わりか? オレはいつでも用意できてるぜ?
いや。信頼されるには、力が必要なだけだ。それに、皆だって守りたい。
――俺にしては、やけに極論じゃねえか。マジでどうしたよ?
檮杌戦でわかったんだよ。俺が信頼されるには、幻獣に勝つことが一番だって。
――オレがあえて言わせてもらおうか。違うぞ。栞の言葉、もう忘れたか? 『自分で考えな』。
考えた結果がこれだ。そもそも、俺が幻想入りしたのもそのためだ。それをスムーズに進めるのが一番だ。
――やっぱ変わったな。失望しそうだぞ。オレでもわかるくらいなのになぁ?
……何が正解とかの問題じゃないだろ。じゃあな。
そう言って、俺が一方的に去ったのを覚えている。
俺も、しっかり考えているのだ。その上の結果だ。
考えなしに、動いている訳ではないのだ。
今、妖夢は幽々子に呼び出されている。遅れてくるそうだ。
この時間も、無駄にできない。
強くならないといけないんだから。もっと強く、強く。
―*―*―*―*―*―*―
「えっと……その、最近の天君、変ですよね?」
「ええ。私は、彼が帰ってきてすぐに気付いたけどね?」
やはりそうか。感じていたのは、私だけじゃなかった。
今まで、ずっと彼の様子を見てきた。
どうやら、彼は修行熱心どころじゃなく、修行だけを追い求めている様だった。
前は、そんな人じゃなかった。変わったのは、檮杌戦の後。
永遠亭で、何かがあったのだろうか。何か、心を一新させるようなことが。
「幽々子様は、何故かわかるのでしょうか?」
「……さあね、そこまではわからないわ。修行に関すること、ってだけね」
幽々子様は、今までずっと見た私よりも、彼のことをわかっているのだろうか。
少し、嫉妬してしまう。
「私もそうだと思います。ですけど……」
「それだから何だ、って話よねぇ……」
修行が原因なところまではわかっている。けれど、何故そうなのかがわからない。
つまりは、裏に隠された理由が見えない。
見えないから、解決もしにくい。
修行をすること自体に、意味があるかもしれないし、それがあくまでも、副産物であるかもしれない。
とにかく、もどかしい感じだ。
彼のことを、わかっていたいのに。
「じゃあ聞くわ。……妖夢は、どうしたいの? 彼が悩んでるのは、既にわかってるんでしょ?」
どうしたいか、だなんて。そんなの、決まっている。
随分と前から決まっていたし、原因がわかる前にもはっきりしていた。
「勿論、助けたいです。絶対に」
「それがいいでしょうね。ただ……」
「ただ……何でしょうか?」
「……発言には、十分に気を付けてね」
……どういう、意味だろうか。
不思議に思っていると、幽々子様が補足の説明を入れてくださった。
「今まで天が、あんな感じになったの……見たことある?」
「……いえ、ないですね」
彼は一人で背負込む傾向にあるのは。わかっている。
できるだけ自分で解決しようと、頑張っている。
けれど、本当に助けて欲しい時には、すぐに助けを求めていた。
――今の天君と違って。
「いつもとは違う。だから、少し会話の仕方を間違えただけで、爆発する可能性も十分にある」
いつもよりも無理をしている。それはわかる。
だから、その分いつもよりも敏感になってしまっている、ということだろう。
何とはなしに言った言葉でも、彼を傷つけかねない。
それほどまでに、追い詰められているのだろうか。
「わかりました。出来る限りの範囲でやってみます。では、失礼します」
「ええ。早く彼の元に行ってあげなさい。疲労で倒れかねないしね」
幽々子様の言葉に頷いて、外に出る。
彼は案の定、というべきか、いつものように。
……まるで取り憑かれた様に、修行に専念していた。
それに、疲労の色も見える。無理な修行を積んだいるのだ。当然だろう。
その光景は、私の胸を締め付ける。
私が、彼に出来る限りのことをしたい。
――早く、支えたい。助けたい。
その思いで、彼に向かう足が加速した。
―*―*―*―*―*―*―
俺がいなくなった後のユメの中、オレは一人呟いていた。
――あ~あ、ホント、俺は何してんだかな。
当然、ユメの中で声が反響するだけ。
俺に届くことなんてない。俺はもう去ったから。
聞こえるはずがないのだ。
――全く、手間のかかる奴だ。オレには俺の気持ち、わからないでもない。元は一つだからな。
淡々と、響く声。しかし、俺には届かない。
――だからこそ言える。間違っていると。『信頼』の俺が、聞いて呆れるな。
それは、俺に向けられたものである。
――でも、俺自身が気付かないと、意味ねぇんだよ。
そして。
――今、『孤独』なのはどっちだよ、俺。
そう言って、オレはユメの中の闇に消えて。
オレの言葉も、闇へと消えていった。儚く、脆く。しかし、芯の通った言葉は。
――やはり、俺に届くことはなかった。
ありがとうございました!
今回は少し短めになりました。調整のためです。
これからは、活動報告を書く時は、特別な時にします。
基本、平日は午前6時、週末は正午に投稿です。
皆さんは、コーラは好きですか?
私にとってのコーラは、天君にとっての神憑とか妖夢にあたります。
つまりは、必須の存在なわけです。
次回、天君は、そんな必須の存在な妖夢に――!
ではでは!