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東方魂恋録  作者: 狼々
第4章 幻獣
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第39話 入院二日目

どうも、狼々です!


しばらく……と言っても、あと一、二話、永遠亭のところを少し書きます。

前回書けなかったので。

ですが、その割に永琳と鈴仙の出番が……


今回は、あのキャラ再登場!

交流編を見ていないことも考えて、少し説明的になってます。


では、本編どうぞ!

俺が入院一日目を終えて、二日目の朝。

大体8時少し前くらいだろうか。


俺は目を覚ました。

だが、特にやることがない。暇。最大級の暇人だ。

もう一眠りしようと、瞼を開くこともなく寝ようとして、栞に引き止められる。


(ねえ、寝ないでよ天。この女の人、誰なの?)


……は? おんなの、ひと?

それも、栞の知らない人間。人間かどうかも怪しいが。


どうにも気になるので、仕方がなく瞼を開く。




「あ、起きましたか。おはよーございまーす!」


「……おい、文。何で人の寝顔勝手に撮ってんだよ」


目を開けると、射命丸 文がいた。俺の顔を覗き込んで。

文とは、宴会で知り合って、取材を受けた時以来だ。


取材の内容で、少し俺の社会的抹殺が計画されていたが、無事阻止できた。

人里へ買い物に行った時に何も言われなかったから、恐らく記事には載ってない。

新聞読まないからわからないが。


で、その内容が、『スカート覗く外来人、天。変態か!?』である。

あながち間違っていないから困るのだが。

文が飛んでいるところを下から『無意識に』覗いた。他意もない。

なのに、そのことを記事に載せられかけて、俺の第一印象が最悪になるところだったのだ。

まぁ、『色を暴露するぞ』、と脅しをかけたら引き下がってくれたのだ。


……やべ、何か俺がヤバイ奴みたいに聞こえるな。

で、でも、文がああやって脅しをかけるからだ。

仕方なく、仕方がなく、良心が痛む中で、泣く泣く言っただけ、うん。

俺に非はないはずだ。


「いや~、この寝顔、意外に可愛いですねぇ……載せますね♪」

「俺のプライバシーはどこに行ったよ!? 載せんな!」

「……仕方ないですね。わかりました――」


あ、あれ? 今回は意外とあっさりだな。

やっぱり文も、一年ちょっとの間で少しは変わって――






「個人的に楽しませてもらいますね!」

「変わったと思った俺の気持ち返せ! 少しでも見直した俺が馬鹿だったよ!」


訂正。ちっとも変わっていなかった。全く。完璧に。


「で、何しに来た? 俺が永遠亭にいることを知ってまで来たんだから、何かあるんだろ?」

「さすが天さん、話が早い。この度は、幻獣、檮杌撃破の(かなめ)となった天さんに取材しに参りました!」


……だと思ったよ。どうせ取材だろうとは思っていた。

俺のことを取材するとしたら、間違いなく檮杌撃破について。

そこまでは予想はついていたのだ。だが。


「いや、まずいだろ。幻獣知らない人里に新聞配っちゃ、知らせた人を限定させた意味がなくなる」

「そこまで頭が回るとは。ええ、確かにそうです。が、幻獣との戦闘が終わった後、もう隠しても不安を煽るだけ、との判断で、霊夢さん達が、人里の皆さんに公開したのです」


へぇ、かなり思い切ったな。

今まで隠していた分、自分達に返ってくるのは、明白だろうに。


いや、今の内に公開した方が、後を考えるといいのかもな。

後になって幻獣が直接人里を襲い始めたら、『何で教えなかった』、と責め立てられることだろう。

そうなると、人里の皆の避難も遅れ、被害が大きくなる可能性がある。


幻想郷を守るために被害が大きくなったら、元も子もない。

妥当っちゃ妥当か。


「了解。ま、プライバシー侵害にならない程度には答えるよ」

「ありがとうございます。では、早速……白黒の霊力の柱は、天さんのものですか?」


ほ、ホントにいきなりだな……

ストレートに聞いてくるところが、新聞記者らしいというか、文らしいというか。


「……ああ、そうだ。宴会でのときとは比べ物にならないくらい強くなってるだろ?」

「ええ、それはもう。別人ですね。空も飛べ、刀も使うようですし、一年しか経ってないのが嘘に思えてくる程です」


……今思えば、一年前の俺は、刀なんて持ったこと無い、霊力も使えない。

さらには、空も飛べない。こんな状況だったわけだ。

成長の幅に関しては誇ってもいいくらいだろう。


「次です。檮杌戦で、かなりの重症を負ったようですが、その時の状況と、怪我の具合を詳しく」

「ええっと……俺が檮杌に攻撃に行って、あいつの牙でお腹を貫かれた。出血多量で死んでもおかしくなかった。もっと言うと、臓器を負傷する可能性だって高かった。けど、臓器には傷はなかったし、血もすぐに止めてもらった」

「ほぇ~……それはまた大怪我にも程がありますね……」


それには全力で同意したい。うん。

今生きてるのが不思議なくらいなのだ。もうあの感覚を味わうのはごめんだ。

まあ、味わう機会もないくらい珍しいだろうが。

普通一回も経験しないからな。二回目とか堪ったものではない。

珍しいと言っても、いいことでは決してないのが、たちが悪いというか。


「では、途中で霊力の感じが強くなりましたが、あれは何ですか? やはり、天さんに関係が?」

「ご名答。『リベレーション』っていうんだ。栞の霊力を体の表面に纏って、身体能力を高めるんだ」

「え、ええっと……その、『栞』、とは?」


あぁ、そうか。

文は栞の存在を知らなかったのだった。

栞も文を知らなかったし、気付くべきだったか。

遅まきながら、俺は栞の紹介を文に。


「紹介するよ。俺の中に住んでる魂幼女、栞だ。……じゃあ、栞、文に挨拶して」

「は~い、初めまして。私は栞。よろしくね! 今の天の説明で大体合ってるよ」


そう栞が言った瞬間、文が怪訝な顔になった。

……ん? この顔は……


「あ、あの……天さんは、やっぱり変態なんですか……?」


「違ぇよ!」「その通りだよ!」


栞と俺の全く逆の答えが重なり、文はさらに怪訝な顔になる。

絶対栞の方を信じてますねぇこれは……


「おい栞! 今は誤解を招くだろ! 何でこんな時に限ってそんなに自信満々で言うんだよ!」

「やっぱりそうだったんですか!」

「違うんだよ文、違うんだ。何もかもが独り歩きしてるんだよ」



俺が文の誤解を解くのに30分はかかった。

途中で栞が、「発情!、発情! 欲情!、欲情!」なんて言わなかったら、あと20分は縮まっていたはずだ。

本当に、ひどいものだ。



「……わかりましたよ。そんなに必死になって否定しないでください。良心が痛みます……ぐすん」

「さらっと嘘つくなよ。じゃあなんであんなに(かたく)なに信じなかったんだよ」

「……てへ♪」

「もう許さない。スカートの中の暴露も時間の問題だな。せいぜい反省することだな」

「すみませんでしたー!」


よし、圧勝。大勝利。

意外に『てへ♪』の表情が、可愛くて沈みかけた。

文も美少女なんだよ……妖夢には敵わないだろうが。

俺の好きな女の子の脳内補正がかかってるし。

補正がかかっていなくても大丈夫だろうが。妖夢が一番だと信じてる。


「ふむ、わかればよろしい。……で、まだ他にはなにかあんの?」

「では……ちょっと怪我の具合を見せてください。記事とは関係なく、心配なのですよ」


少し悲しそうな顔が浮かんだ気がした。

心配してるのか? 俺のことを、文が?


――な、なんかギャップが可愛いく感じてしまう。


「わ、わかった。じゃあ、今見せるから待って――」


と、俺が上の服を脱いで、包帯を取ろうとした時。


「いえ、いいですよ。――









――私が脱がします・・・・・・・から・・

「え? なん――ちょ、ちょい!」

「は~い、遅いですよぉ~……っと」


文が突然、目を見張るようなことを言って。












《《俺の下腹部に跨った》》。


傷は痛くない。あくまで傷はお腹だから。

だけど、この体制は――!


「わ~、天がまた発情してる~、繁殖期~」

「あやややや……私に興奮してるんですかぁ~……?」


栞の言葉の後に、文が悪戯な笑みに変わって。

……嫌な予感しかしない。


「……じゃあ、服、脱がしますね……?」

「まて文、まだ戻れるぞ――って、その声はヤバイから……!」


急に妖艶な声を出し、心が揺さぶられる。



そして、文は俺の服に手をかけて――


―*―*―*―*―*―*―


また二人となった朝食を終えて、幽々子様が。


「ねぇ妖夢。貴方、天のところに行きたいんでしょ? お昼と夜に戻ってくる以外は行っていいわよ?」

「あ……で、ですが――」

「いいのよ。行ってきなさい。きっと、天も喜ぶわ。彼が一番頑張ったんだもの。優先させないとね」


で、でも、いいのだろうか?

私は……行きたい。だけど……


「私のことで迷うくらいなら、行った方がいいわよ?」


幽々子様は、そう仰っているが……しかし……

――でも、行きたい。彼に、会いたい。


「わかり、ました……すみません、行って来ます」

「気を付けてね。彼を笑わせてあげてね。……彼も、かなりの重みと戦っているだろうから」

「……はい。では」


それだけ言って、私は永遠亭に向かって飛ぶ。

ああ言ったのにも関わらず、行くとなったら急いで永遠亭に向かう自分に、少し呆れていた。

どれだけ彼に夢中になってしまうのだろうか。


少し、怖くもなってくるし、幸せにもなってくる。



しばらく飛び続けて、永遠亭に着いた。

今は……8時30分くらいだろうか。やはり、普通より早くに着いている。

そのことに少し恥ずかしくなりながらも、彼のいる部屋への足は、早く早くと急かしてくる。


彼の部屋の前に着いて。

部屋の中から、少し話し声が聞こえた。誰かいるのだろうか?


「失礼しま――ぇ……」



私が見たのは、天君の下腹部に跨って、服を脱がそうとする文の姿だった。

一瞬の静寂。口を最初に開いたのは、天君だった。


「よ、妖夢! これは違うんだよ! 文が――」

「あ、妖夢さん、おはようございます。私が無理矢理脱がそうとしてるだけなので、大丈夫ですよ」

「いや俺が大丈夫じゃない。妖夢も大丈夫じゃない。……妖夢、何か言ってやってくれ――妖夢?」


私は、とてもとてもショックだった。

当然、天は私が好きであることが、確定もしていなければ、恋人同士でもない。


けれど、自分の好きな人を取られる。そうわかって、胸が抉られた。

悲しみに震えそう。だけれど、涙も流せないほど、言葉一つも出せないほど。

それほど、ショックだったのだ。


「あ……いえ、その……文、やめてもらえると、ありがたい、です……」

「あ、そうでしたね……すみません。私もやり過ぎました」


そう言って、文が天君の上から降りた。

少しホッとした自分に、嫌気が差した様な気もした。

自分の独占欲の強さに。彼を欲してやまない気持ちに。


「あ、ありがと……で、怪我を見せればいいんだろ?」


そう言って、彼は服を脱ぎ始めて、筋肉が見える。

彼が幻想郷に来た時も、体格はよかった。

が、刀の修行で程よく筋肉のついた体は、私にとって、とても魅力的なものだった。


ぼうっとして見ていると、急に恥ずかしくなって、急いで目を逸らした。

……けれど、少しどころではなく、気になってしょうがない。


……見たい。


ちらちらと、彼の逞しい体を見てしまう。視線が吸い寄せられる。


そして、お腹に広く巻かれた包帯が見えた。

天君はそれを、するすると取っていく。彼の様子からして、もう痛みもないようだ。


包帯を外し終わり、お腹の状態がはっきりと見えるようになった。

私と文は、すぐに彼に近づいて、目を見開いて、お腹を覗いた。

何故か。それは、昨日の傷が、殆ど塞がっているからだ。

文と私、二人して驚いてしまった。


「もう大丈夫みたいだな。……さすがにこれは驚いたな。もう退院してよさそうなもんだがな」

「そうですね……わかりました、私はもう帰ります。では、取材にお答え頂きありがとうございました!」


そうお礼を言って、文は部屋から出ていく。

その直前に、私に近寄って。私にだけ聞こえるように、小声で。


(本当に何もありませんからね。貴女と天さんの間を邪魔しようなんて、少しも考えてませんよ?)

(なっ……! なんで、それを……)

(私はブン屋ですよ? 人里に、ペアネックレスを買いに行ったことも、知ってますよ?)


そこまで知られて、言われると、少し恥ずかしい。

私が周りにわかるほど、『好き』の気持ちを前面に出しているみたいで。


それだけ言って、文はさっさと部屋を出て行く。

本当に、何もなければいいのだが。


―*―*―*―*―*―*―


文が何かを妖夢に耳打ちして、部屋から出る。

耳打ち、というのは、非情に会話の内容が気になるものだ。誰もがそうだろう。

だが、わざわざそうするということは、少なくとも俺に聞かれないようにするためである。

そのために耳打ちしたのに、『何話してたの?』なんて聞くようなことはしない。


「で、妖夢はどうしたんだ?」

「あ、えっと……その、特には何もないんです」


な、なにもないのに来たのか……?

永遠亭と白玉楼は、結構距離がある。

行きは勿論、帰りのことも考えると、何もなしにくるのは――


そこまで考えていて。


「その、強いて言うなら……天君に、会いたかったのです……」


妖夢が目を逸らし、もじもじとしながら答える。


「ガハァッ!」

「え!? そ、天君、どうしたんですか!?」

「い、いや、大丈夫だ、問題ない。装備だって、一番いいんだ……」


あまりに妖夢が可愛すぎて、吐血しかけた。

危うく命も刈り取られるところだった。

妖夢が、『命、刈り取っちゃいますよ♡』とか言ってたら、本当に刈り取られそう。

いや、怖いけどね? でも、可愛い。


それより、この格好よりも弱いものの方が珍しいくらいだろう。

俺の現在の服装。カッターシャツとごく普通のズボンのみ。

完全に私服。鎧なんて、影も形も存在しない。

まだ灰色の防具の方がマシだ。かといって、指パッチンで白の防具も出てこない。


「な、何を言ってるのかわかりませんが……少し、お話しましょう?」


彼女の柔らかい笑み。

やはり、この笑顔に勝てるものは何もないと思いつつ。

俺は、彼女との一時を過ごした。


……途中。


「そ、その……天君は、へ、変態さんなんですか……?」

「いや違うよ? あれはただ文が乗っただけなんだって」

「下腹部に、ですか……?」

「いやホントに違うんだよあれはだね――」


もう色々と聞かれた。

ホントに何もないのか、とか。

……俺が他の女の子とそういうことをするのが、気になるのだろうか?




それって、つまりは、やはり。




そういうことでいいのだろうか?


ありがとうございました!


次回は、そろそろ病院出たいです。

前書きのやつは何だったのだろう。長くて二話なのは変わりませんが。


あと五話以内に、あのキャラを出せるといいな、とは思っています。

正直、殆どの方が予想できないと思います。

できても、恐らくはずれですね。


どなたかわかる方がいらっしゃれば、メッセージか感想欄にどうぞ。


リアルでは、私はメガネをかけているのですが、不便ですね。

やっぱり、目は悪くするべきじゃないですね。

いいに越したことはないです。


ではでは!

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