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東方魂恋録  作者: 狼々
第2章 修行in白玉楼
19/90

第19話 気付けたなら

どうも、狼々です!

今回、少し調子が悪いです。

いつもつまらない文がさらにつまらなくなっていることだろうと思います。

ご了承ください。

では、本編どうぞ!

さて、今俺は買い物に行く準備を部屋で進めているのだが。

……恥ずかしいことに、緊張してしまっている。

思えば、妖夢と二人で外に出るのは初めてだ。期待してしまう。

いや……これってデーt――


(わー天が不純な妄想をしてるー。妖夢ちゃ――)

(……おい、そういえば話があるっていってたよなぁ……?)

(あ、ああ、そんなことも言ってたねぇ……)

(少し前。結構遅めの昼食の時。俺にちょっかいかけたよなぁ? 妖夢に聞こえないことをいいことになぁ……)

(え、えっと……何のことかさっぱり――)

(忘れたとは言わせないぞ。あん時俺だけに聞こえさせたよな? 『わざと』!)

(あ、いや……えっと、その……)

(俺をそんなに困らせたいか?)

(つい出来心でやっちゃった♪ 面白かったよ。反省も後悔もしていない)

(少しは反省と後悔の意思表示をしろ!)

(ほ、ほら、早く行かないと! 大好きな妖夢ちゃんが待ってるよ!)

(誰が『大好き』だ! お前まだおちょくるつもりか!)


会話の間に用意を終え、部屋から出る。

大好き、というワードを聞いて、今朝の光景が甦る。

景色も、音も、匂いまでも。


(……あれ? 急に黙り込んだね。もしかしてずぼ――)

(おい後で覚えてろ。しっかりと問い詰めて反省も後悔もさせてやる)

(……はい)


玄関を出ようとすると、妖夢が俺に追いつく形で再会。

妖夢も準備は終わったようで。


「では、行きましょうか!」

「おう!」


冥界から降りて、人里へ。かれこれ一ヶ月ほど地上に降りてなかったな……

落下の速度が速まる中、飛行の要領で自由落下を相殺。

無事に怪我なく地上に降りられた。


「こっちです。行きましょう」

「あ、ああ。わかった」


妖夢がいないと危なかったな……場所がわかんない。

つくづく自分が抜けていることを感じる。知らない場所に地図とかヒントなしで買い物行こうとしてたのか、俺は。


歩いて約5分、思いの外近くにあった人里に着いた。

買い物を始める。肉、野菜、米等を買っていく。

店員の反応を見る限り、半人半霊であることはあまり気にしていない様子。

……よかった。前、会ったばかりの頃に思う所があったからな。


買い物を始めて10分ほど経って。

俺たちが八百屋へ行こうとしたところ。


「すみません、この――」

「おお! 妖夢ちゃんじゃないかい! ……で、その隣の男の子は?」

「え、っと……」

「――あ、ああ! なるほどね! 君、名前は何ていうの?」

「え、ええっと……新藤 天です」


俺はいきなりの出来事すぎて自分の名前を答えることさえすぐにできなかった。

でも、突然知らない人から名前の開示を要求されたら、こうなるのは当然だと思う。


「天君ね! 覚えたよ。ちょっと妖夢ちゃん借りてくけど、いい?」

「え、ええ。妖夢がいいなら……」

「と、いうことだけど、妖夢ちゃんは?」

「私も、天君がいいなら……天君、悪いですが、少し待っててください」

「おう、了解。待っとくよ」


妖夢は店員に連れられ、店の裏へと入っていく。

……大丈夫だろうか? まぁ、妖夢の様子を見る限りは大丈夫そうだが……


―*―*―*―*―*―*―


私は店員さんに連れられて店の裏側へ。

店員さんは、私に面白いものを見る目をして尋ねる。


「あの子がこの間話してた子であってる?」

「え、ええ……」

「で、好きなんだろ? あの天って子を」

「え、えっと……はい。好きだとわかったのは、つい先日ですが……」

「ふふっ、もう一緒に買い物に誘ったのかい。けっこう積極的なんだねぇ~」

「あ、いや、その――」

「いいんだよ、そのくらいの方が」

「あ、あの……天君には、一緒に買い物に行くことを嫌がられてると思いますか? 正直にお願いします」

「……そりゃ、少なくとも嫌じゃないだろうね。来てくれてるってことはそういうことさ。私にはむしろ、嬉しそうにしてると感じたね」

「ほ、本当ですか!?」


嬉しくてつい大声を上げてしまう。

そっか……嬉しいのか……えへへ


「うん、本当さ。……にしても、随分と惚れ込んじゃってるねぇ」

「……ええ。その、大好き、ですから……」


恥ずかしいが、嘘偽りは言いたくない。

好きの気持ちが薄れてしまいそうだから。


「ふふふ、見てるこっちが笑ってしまいそうだよ。このままいけば大丈夫だとは思うけどね~」

「……頑張ります」

「ああ。悪かったね、行ってきな、“大好きな”彼のところに」

「も、もう! からかわないでください!」


店員さんは、ふふ、と笑って私を送り出してくれる。

お店を出て、ずっと待っててくれていた優しい彼の姿が見える。

私は、つくづく彼のことを好きになってよかったと思う。

彼の魅力に気付くことができて、よかったと思う。


―*―*―*―*―*―*―


(お、妖夢ちゃん戻ってきたよ?)

(戻ってきたか、意外と遅かったな)

(そんなことはないよ。5分も経ってない。天が早く戻ってきて欲しかったんじゃないの、ねぇ?)

(……そうかもな)

(……え!? 否定しないの!?)


はいはい。そうですね。そうかもしれないですね。

……実際のところはどうなのだろうか。俺は彼女と早く会いたいと思っているのだろうか。

――まあいい。後でゆっくりと考えよう。


「お待たせしました。それでは、行きましょうか」

「……ああ、わかった」

「……? どうしたんですか?」

「いや……何でもないよ」


そう言って、俺は先に歩きだしていた妖夢に追いつく。


「そうですか。もうすぐ終わりますからね」

「ああ」


俺の妖夢への返事にはあまり力が入っていなかった。




買い物も終わり、もう帰るだけとなる。

実は、半霊の白いふよふよが、どうやって買ったものを持つのか少し気になっていた。

さて、妖夢はどうするのか……?


そう思っていたら、買った物を半霊に引っ掛けていた。

あれって物理判定あるのか……てっきりすり抜けるのかと思ってた。

幽霊ってそんなもんだとばかり。第一、その存在自体が不確かだもんな。


「どうしましたか? ……ああ、半霊ですか。いつもこうやって引っ掛けて運んでるんですよ。まあ、今回は天君も持ってくれますし、重くはないんですけどね。付き合ってもらってありがとうございます」

「いいんだよ。自分で言いだしたことなんだ。むしろ、妖夢に来てくれて嬉しかったし、実際助かった。まず道わからなくて終わってたからな」

「あ、あはは……嬉しかった、ですか」

「ああ。嬉しかったとも」


本心だ。嬉しかった。一人じゃ寂しいしね。


(私がいるじゃない)

(そうでした)

(忘れてました、みたいな言い方だね)

(その通りだから何も反論しないよ?)

(……ふーん、いいよ。こっちにも考えがあるから。私の口は塞げないことを一生悔いるといいよ!)


あ、まずい。少しふざけすぎた。

栞はなにを言い出すかわからないから恐い。やると言ったらやってしまうのが栞だ。


「妖夢ちゃ~ん、あのね~天が――」

「わー! 悪かったから、俺が悪かったから!」

「天君がどうしたんですか? 気になります!」

「妖夢も乗るな! 知ってもあまり意味はないし、な!」

「それで、天君がどうなんですか?」


だめだ、妖夢はもう俺に聞く耳を持たない。

いや、まだ栞には弁解の余地が――


「天が何を言っても私は言うのをやめないよ~! さっきの報いだ~!」


オワタ。弁解の余地すらない。もう俺には何もすることができない。

報いって……


「あのね、妖夢がいないときに、天が結構寂しがってたんだよ?」

「へぇ……そうなんですか?」

「うん!」


……あれ? もっと精神的な意味で痛々しいものが来ると思っていたが……


「もっと恥ずかしいやつが来ると思ったんですが、まぁこれでも中々ですね。私、結構早かったですよね?」

「そうだね。5分と経ってなかった。なのに天は、『遅かった』、なんて言ってたの。それで私が、早く戻って来て欲しかったんじゃないの? って言ったら、『そうかもな』って……」

「……私が少し、恥ずかしいです。でも、悪い気はしませんよ?」

「そうかい。そうかそうか、よかったな~」


何でここでこう言ったのか、自分の気が知れない。

とにかく、早く会話を終えたかった。


「……あれ? 天君、拗ねてます?」

「……そうじゃない」

「お~天は拗ねても可愛いね~」

「そうですね~可愛いですよ~天君」


俺は何も答える気になれなかった。なんか、体も心も重くなった気分になる。


「……そうかよ」

「えっ……? ちょ、ちょっと天、どうしたの? 何か変だよ?」

「そ、そうですよ? いつもならこんなことは言いません。何か言い返すはずです。何かあったんですか?」

「いや、別に……それよりも、二人が俺のことをどう思っているのかを問い詰めたいな」

「ご、ごめん。私が言い過ぎたからさ――」

「――まぁいいよ。早く帰って、夕食作ろう」

「……わかり、ました」


その会話以降、白玉楼に着くまで誰も口を開かなかった。

体が重い。だるい。何も考えたくない。

そう思いながら、俺たちは白玉楼に着く。

玄関を開けて、中に入ったとき、自分の異変に気がつく。

いくらなんでも、体が動かなすぎる。重すぎる。思ったように体が動かない。

……今日の夕食は、悪いけど妖夢に作ってもらうか。


「……なぁ、妖夢」

「はい、どうしました?」

「……悪いんだけどさ、今日の夕食は妖夢一人でつく――」







そこまで言って、俺は両脚の力が抜ける。

支えを失った俺の体は、重力に従って倒れる。

バタン、と音を立てて、俺の全身に衝撃が伝わる。が、どうすることもできない。


「……ぇ? ちょ、ちょっと、天君……?」


大丈夫だ。そう言おうとするが、口も開けない。

指もピクリとも動かなくなっている。あ……意識も薄れてきた。

俺は、目を開けているのがやっとの状態になっていた。

瞼がどんどんと重くなる。目に入る光の量も少なくなる。


「天君! しっかりして! ―らくん! ――! ――」

「天! 大丈夫!? ―ら! ――! ――」


薄れ行く意識の中、俺は妖夢の必死な表情と、妖夢と栞の強い心配の声だけが目に、耳に入った。



そうして、俺は目を閉じた。意識も手放す。


―*―*―*―*―*―*―


天がいきなり。突然に、倒れた。

様子がおかしかったのはわかっていた。けれど、倒れるほどだとは思っていなかった。

……あれ? 天の霊力が……殆どなくなってしまっている。

私は妖夢ちゃんに呼びかける。


「妖夢ちゃん。天の霊力がなくなってる。霊力は私が補給するから、天を運んで?」

「あ……はい、わかりました」


妖夢ちゃんは、天を運び始める。

……天の様子が変だったのは、帰りの飛行を始めて少し。タイミングを考えれば、すぐにわかったはずのに。

私は、天という器の中にいる。いさせてもらっている。

本質的には違うが、私の体は彼の体のようなものだ。彼の異変くらいは気づけ、私。


――何で、気づけなかった。どうして、わからなかった。


それらの言葉だけが、私の頭の中をぐるぐると回り始める。

責任は、私にある。私が、悪い。彼に気付かなければならなかった、私の責任。


「妖夢ちゃん、ごめんなさい。私が、気づいていれば……」

「いえ、私も悪いんです。彼に気付かなかったのは、私も同じことなんですから……」


私たちの中で、彼の存在は、とても大きくなっている様だ。

妖夢ちゃんの中の彼は大きくなっていることはわかっていた。

私の中の彼は、思っているよりもずっと大きかったようだ。


―*―*―*―*―*―*―


私は、何をしていた?

彼の異変に気付かないで、一人で喜んで。何が『大好き』、だ。

本当に大好きなら、彼の様子の変化くらい気づいてあげられる。



本当に自分は彼を好きなのか?



この言葉が私の中をよぎった時、私はひどく心が痛んだ。

好きになる資格さえないんじゃないのか?

そう思うと、涙が出そうになった。



天君を運んでいる途中、幽々子様と会った。

幽々子様は目を見開いて驚く。すぐに彼に駆け寄る。


「天! 天! しっかりして!」

「……幽々子様、少し前に話した、刀の魂の栞ちゃんによると、霊力切れらしいです」

「……そう、ごめんなさい。取り乱しちゃったわね。夕食の前に、彼の様子を診ておきましょう」

「わかりました」


彼を彼の部屋に運んで、幽々子様と私、栞ちゃんで彼の様子を診る。

診終わった幽々子様が口を開く。


「妖夢、それに……栞? 聞こえる?」

「うん、聞こえてるよ」

「……天の容態なんだけど……霊力切れだけが問題じゃないわ」

「そう、なのですか……?」

「ええ。それについては彼が起きてから話すわ。とりあえず、今はゆっくり休ませましょう」

「あ、霊力については私が補給させといたよ。あとは体力が戻るだけだよ」

「そう。ありがとうね」


そう言って、幽々子様は部屋を出る。

私と栞ちゃん、倒れた天君だけが部屋に残る。


「……じゃあ、私は夕食を作っておきます。栞ちゃん、天君のことをお願いします」

「わかったよ」


私はそう言って、逃げるように部屋から出て台所へ向かう。


私は逃げたかった。あの部屋から、栞ちゃんから、……そして天君から。


そして何よりも、自分が彼をああしたのは自分の所為だ、という罪悪感から。




私の罪悪感は、とうてい逃げられるようなものではなかった。


それこそ、死んで冥界まで付き纏い続けるように。


私のその感情は、生きている私にとっても、死んだも同然だった。

ありがとうございました!

そろそろ第2章終了です。

長くて2、3話、短かったら次話で終了になると思います。

最近、お気に入りの登録数と一日のUA数の多さに驚きを隠せません。

それこそ、目が飛び出しそうなくらいに。

皆さんありがとうございます! こんなに見ていただけるとは思ってませんでした。

ではでは!

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