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東方魂恋録  作者: 狼々
第2章 修行in白玉楼
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第15話 上の空

どうも、狼々です!

前回の話から、恋愛パートが始まってます。

ラブコメ要素を入れつつ、戦闘のシーンも書けたら良いな、と思ってます。

今回、霊夢視点が入ってますが、今まで一度も視点人物になってないので霊夢視点を入れました。

特に深い意味はありません。

では、どうぞ!

私と幽々子、紫は、今幽々子の部屋で彼と彼女の帰りを待っている。


「……ねえ、二人共、ホントに追いかけなくてよかったの?」


待つこと10分と少し。私が痺れを切らして口を開く。


「大丈夫よ。妖夢がいるなら私達はいらないわ。そうよね、紫?」

「そうね。私達の中で一番適任だったのが妖夢。それくらい霊夢もわかってるでしょ?」

「いや、確かにそうだけど……なんか遅くない?」

「どうせそこらでイチャついてんでしょ。すぐ戻ってくるわよ」

「イチャついてるってねぇ……」


そんな会話をしていると、静かに障子が開く。

その瞬間、私達三人は一斉に部屋の入口へ顔を向ける。……なんだかんだ言ってあなたたちも心配なんじゃない。

入り口には目尻がさらに赤くなった、もう一度泣いたであろう妖夢と、先程飛び出していった彼、天の姿があった。


「あ、あ~、そ、その、悪かったな……どうやら俺はまだ生きられるらしい」


三人は同時にホッとしていた。


「本当よ。どれだけ心配したと思ってるのよ。二人なんて『妖夢が行ったから』、なんて言って静かに待ってたけど、貴方達が障子開けてすぐ顔向けてたわよ」

「当たり前じゃない。私の呼んだ人間がこんなところで死ぬなんてありえないのだけれどね? 一応、心配じゃない」

「そうよ。まだ一週間だけど、天は私と妖夢の家族みたいなものよ? 心配するのは当然よ。妖夢なんて泣いちゃってるじゃない」


幽々子はさすがと言うべきか、自分の従者のちょっとした変化にも気づいてるようで。


「い、いや、泣いてませんからね!?」

「嘘つかなくてもいいわよ~? 泣くほど心配だったのよね~?」

「しょ、しょうがないじゃないですか! 天君を見つけた時、倒れて動いていなかったんですよ! もう、あのときは、しんじゃったかと……」


だんだんと妖夢の声に勢いがなくなって、今にも泣きそうになった。

幽々子が慌てて慰めに入る。


「あ、ああ、ごめんなさいね、妖夢。辛かったわよね……と、いうわけで。皆これだけ心配していたのよ、天?」

「……本当に、ごめん」

「あら、ごめんよりも言って欲しい言葉があるのだけど?」


紫が促す。


「ははっ……皆、ここまで俺のことを心配してくれて、ありがとう!」


彼は苦笑したあと、夜空に輝く一等星に負けないくらいの光のある笑顔を見せた。

……んじゃ、無事も確認できたことだし、そろそろ神社に帰らないと。


「じゃ、私はそろそろ帰るとするわ。じゃあね」


私は四人に見送られながら博麗神社へ帰った。


―*―*―*―*―*―*―


「じゃあ、私も戻るわね」

「あ、待ってくれ。戻ってこれたから今からお礼を言うよ。……あの時はありがとう、紫」



紫もスキマでどこかへ行き、部屋には俺と幽々子、妖夢のみとなっていた。




「にしても~、よ~くあんなに恥ずかし~いことを言って戻ってこられたわね~……」




幽々子が今までで一番意地悪で、愉しそうな表情を見せる。

……あ、あれ? お、おかしいな……なんか、嫌な予感しかしないぞ……?

俺のその予感は、まるで未来予知のように的中することになる。

幽々子が俺の声を真似して言う。


「幽々子、俺が死んだら――」


「うわーー! わーー! 聞こえなーーいーー! あー、あー!」


「あっはははは、面白い面白い! 黒歴史確定ねこれ、あはははは!」


幽々子がお腹を抱えて、足をばたつかせながら、目尻に涙を浮かばせるくらいに面白がっている。

一方、俺の方は面白くもなんともなく、ただただ恥ずかしいだけだ。

なんという公開処刑だろうか……さらに慈悲なしときた。


……あれ? 何か妖夢震えてない? 笑いこらえてない? 気のせいだよね、気のせいだと言ってくれ! 


「勉強になったよ、とか、お礼言えそうにないよ、だって~!」

「やめろーー! 恥ずかしすぎんだろが!」

「妖夢言ったことに至っては、色々としてくれてありがとう、だって! 聞いてるこっちが恥ずかしいな~!」

「だからやめろって言ってるだろが! 俺もそろそろ怒るぞ!」

「ゆ、幽々子様! わ、私まで恥ずかしくなってきます!」

「その言葉が一番俺に刺さってるんだよ―!」


……でも、こうしてバカなことやってられて、俺は嬉しい。

結局、俺もこの環境が好きなんだな、と実感させられる。




「あー面白かった! ……何はともあれ、無事でよかったわ、天」


幽々子の笑顔と共にあった目尻の涙は、さっき笑ったときのものだったのだろうか。




俺と妖夢は少し遅れた昼食を作るべく、台所へ向かう。

結構急がないとまずい、と思ったが、幽々子なら昼食と夕食一緒に食べても問題ないんじゃね? とも思い始めた。

結局、いつもの速さで料理を進めている。の、だが……


「「……」」


如何せん二人きりだと、その……意識してしまう節がある。それは俺にも妖夢にも言えることで。

つい、妖夢の妖美な泣き声と太陽よりも明るい笑顔が脳裏を掠める。

顔が赤くなっているだろう。自分でわかるくらいだ。

色々と考え事をしていると、もう一度指を切ってしまいそうになった。さすがに二回目は……な?

そうこうしている内に、料理は完成して、あとは運ぶだけとなった。

できるだけ、自然な感じで声をかけるんだ、俺。自然な感じで――


「じゃ、じゃあ妖夢、は、運びに行くか」

「え、ええ……そう、ですね」


俺の自然は本来の自然とは遠くかけ離れたものになっていた。

食事は大きめのお盆に料理を乗せて、何回か台所と部屋を往復して運んでいる。

のだが、二人共お盆がカタカタと小刻みに震えている。

お互いに反応が外に出すぎだろ……お互いだから自分のこと言えないけどさ!

俺と妖夢は隣り合ってお盆を揺らしながら料理を運ぶ。二回目の往復で、廊下を歩いている時。

そこで。そのタイミングで。俺の中で最悪な言葉を言う声が響いた。


(あ~あ、せっかく二人きり・・・・なのにねぇ~……)

「うわぁい!」

「ひゃぅあ! 天君、いきなり大声出さないでください!」

「ご、ごめん妖夢!」


栞によって、二人きり、という言葉の意味を再認識する。

心音が大きく響いて()まない。男はどうしてこんなにも単純なのだろうか……


「……どうしたんですか?」

「あ、ああ、栞がちょっとな?」

「……ふぅん、ふぅうん……そうですか~……」


妖夢の足が少し早足になる。いきなりの加速に俺が少し遅れる。


「ま、待ってくれ、……どうしたんだよ急に?」


追いつけないわけでもないので、妖夢の隣へ戻る。


「いいぇえ? ……別になんでもありませんよ」


加速したまま廊下を歩いていたので、いつもより速く食事を運ぶことになった。



食事中。妖夢がチラチラとこちらを見ている気がする。

自意識過剰の様な発言だが、明らかにこっちを見てる。それに最初に気付いた時、俺も妖夢の方を見たがすぐに目を逸らされた。

……これ、俺は妖夢に避けられてんのかな……?

そう自分が思ったのにも関わらず、寂しく、悲しくなる。信頼している人物に嫌われるのは嫌だ。

……嫌われて、避けられるのはもう十分だ。


―*―*―*―*―*―*―


私は無意識に彼を見ていた。

視線が吸い込まれるような感覚を不思議に思っていると、彼と目が合った。

咄嗟に私は目を逸らしてしまった。……逸らす必要なんて、ないのに。

そこで、私が泣いて彼に抱きついたことを思い出す。


彼の腕の中の感覚。耳元と頭の中でしきりに響く彼の声。


それらが鮮明に(よみがえ)り、急に恥ずかしくなる。が、不快では全く無い。

ふわふわと思考が覚束(おぼつか)なくなってくる。そうして、やがて高揚感が訪れる。

そうなると、もう思考に歯止めが効かなくなってくる。

鮮明に甦った記憶がさらに鮮明に。まるで今、目の前で起こっているかのように――


―*―*―*―*―*―*―


あれからまたさらに二週間程経ったある日の昼。


昼食を終え、俺は妖夢の異変に気がつく。

妖夢がぼうっとしている。普段はあんな姿、見せたこともないのに。


「おい、どうした妖夢? ぼうっとして。妖夢らしくないな」

「へ……? あ、はい、すみません。修行に行きましょうか」

「……なあ、教えてもらってる俺が言うのも何だけどさ、今日の修行は休まないか?」

「い、いえ、ですが――」

「一ヶ月くらい見てきたけどさ、今の妖夢は見たことがない。きちんと修行をこなしてるとこから見ても、今までずっとそうだったんだろ? いつもと違う様子が見られるのは誰にでもある。けど、妖夢みたいな性格の人となると話は少し違ってくる。異常が周りの人よりも大きいってことだ。多少の異常ならいつもと違う様子は見せないさ」

「……わかり、ました」


俺には妖夢の顔が、気持ちが沈んでいる見えた。

……あれ? 今気付いたが、買い物は普段どうしているのだろうか。

修行を早めに切り上げるときが2、3回あったが……


「なぁ、買い物っていつもどうしてるんだ?」

「えっと……三日おきくらいに人里へ降りて、大量に買い物して帰って来ますね」

「了解。今はまだ空飛べないけど、飛べるようになって、妖夢が今回のようになったら代わりに行くよ。ただ、さっきも言った通り、今は空飛べないから、妖夢だけで行ってくれ。できるだけ早く飛べるようになるよ」

「……すみません。今日のところは天君の言う通り、修行を休ませていただくことにします」

「ああ、それがいい」

「……じゃあ、今から準備をして、いつもより早く買い物に行ってくることにします」


妖夢はそう言って屋敷の中へ消えていく。

しばらくして、妖夢が戻ってくる。


「……では、いってきます」

「ああ、いってらっしゃい」


妖夢が準備を終えて、買い物を人里へ。

今日は、飛ぶことだけ練習してようかな……

そう思っていると、頭の中で栞から話しかけられる。


(天、あなた空飛びたいの?)

(ああ。栞も見てたからわかると思うが、まだ全然飛べないんだよ)

(そりゃそうだよ。霊力の使い方から違うもん)

(栞って霊力使えるのか?)

(うん。今の天の三倍近くの霊力とその使い方まで知ってますがなにか?)


……はぁっ!? さんっ……ばい!?


(おい。どうなってるんだ)

(神の力を吸い取ったときに、一緒に霊力も吸ったの。まあ、神だったら神力になるんだけど、同じようなものよ。あ、それと三倍っていうのは天が今ぎりぎり使える量。ホントはもっとあるよ?)


……さすが神様の力だなー。


(なぁ、限界ギリギリ以上の霊力使ったらどうなるんだ?)

(ん~? 多分反動で内臓ぐちゃぐちゃになって生きられないんじゃない? 生きても数分。それにおまけの激痛付きだと思うよ?)

(恐すぎだろおい!)


恐怖しか無い。内臓ぐちゃぐちゃとか、考えるだけでも恐ろしい。

……ん? これ足とか腕とか部分が限界を超えたらどうなんだ?


(それって、腕とか足とか一部分だけが霊力の限界を超えたらどうなるんだ?)

(霊力を流した所が数分後には使えなくなる。下手したら霊力爆発だね)

(その霊力爆発ってのは?)

(その名の通り、霊力の爆発だよ。例えば、腕が霊力爆発を起こしたとしたら、腕とその周り一帯が霊力の爆発を起こす。勿論、腕はぐちゃぐちゃ、体は爆発に巻き込まれて全身骨折。唯一の救いが、火とかみたいに熱を持たないから、火傷しないことだね)

(おい。救いとか以前の問題だろが!)

(あ、でも神経とかもダメになるだろうから、痛みは一瞬だよ。よかったね)

(よくねぇよ! 骨折の方は神経生きてるからダメじゃねえかよ!)


いいことが何一つない。限界には気をつけろってか。


(じゃあ、飛行に話を戻すよ。天の場合、飛び方に無駄な霊力を使いすぎてるの。具体的には、使う霊力全部を100として、その内飛ぶことに必要なことに使ってる霊力は10とか15くらい。100全部を効率よく使えば、今の天の霊力でも何不自由なく飛べるよ)


おい……俺の今までの努力は何だったんだ……

今の話を聞く限りでは、使った霊力量の85~90%が無駄ってことになるんだが。

エネルギー変換効率が悪いとかそういうレベルじゃない。もはや正常に機能してないな。


(やり方は教えるよ。多分少なくて一時間、多くても二時間ちょっとぐらいしか時間はかからないよ?)

(ねぇ、何でそれを早く言ってくれないの? 一ヶ月間見てたよね?)

(しょうがないでしょ、天の中に入ったから霊力の使用内訳がわかってるの。刀の中じゃわからないよ。それとも、私は教えない方が――)

(ぜひ教えてください! よろしくお願いします!)

(ふふっ……はいはい。わかりました)


……あれ? 栞が入ったのは二週間程前のこと。だったら少なくとも二週間は教えてくれてないんじゃ……無駄なことを言うと教えてくれない気がするから、余計な発言は控えよう。

そうして、俺は無事一時間とちょっとで、完全な飛行を実現できたとさ。


……え? 完全ってどのくらいかって? 高度は地上から十分冥界に届くくらいまで。時間は三時間ほどもつだろうと思われるくらいに。


……はぁぁ……

ま、まぁ買い物には行けるようになったし、よかったよかった。

……はぁ……俺の努力は無駄だったのか……


―*―*―*―*―*―*―


私は彼に言われて、今日の修行は休むことになった。

いつもと違って、今日の私はどこかがおかしい。

でも、おかしい原因がわからない。おかしいことは理解している。

なのに、どれだけ注意してもいつもの様にはいかない。

人里に買い物に来ている今でもそれは変わっていない。

むしろ、まだ白玉楼にいるときの方がマシなくらいになってしまっている。


「お、どうしたの? 今日は元気がないねぇ」


お店の店員さんから話しかけられる。


「えっと……あの、自分でもよくわからないんです」

「……今、どんな気持ちになってるのか、わかるかい?」

「ある人のことを考えると、なんか……もやもやして、でも、嫌とかじゃなくて……」

「その人は、男の人かい?」

「……? はい、そうですけど、どうしてわかったんですか?」

「ふふふ、何だ、そういうことか。あのね、よく聞くんだよ。多分、君は――







      ――その人に『恋』をしているんだと思うよ」



……恋、なのかな? 聞いたことはある。異性の相手を好きだと思うこと。

でも、本当に私が彼のことを好きなのかどうか、分からない。

けれど、どちらかと言われたら――


「わかりません、が……多分、違うと思います。私は、その人のことが好きじゃない、と、思います……あ、でも、嫌いってわけでは決して……」

「……そうかい。じゃあ、今はどうしようもないよ。けれど、いつかは自分がどうだったのかわかると思うよ。つまり、もっと時間が経てばいずれわかるってことさ。心配しなくとも大丈夫さ」

「……はい、ありがとう、ございました……」


時間が経てばいずれわかる、か……

そうだと、いいな……


そう思いながら、買い物を済ませて白玉楼へ帰る。

ありがとうございました。

まだ完全に妖夢は天のことを好きではありませんよ?

少し意識し始めたかな? くらいです。

恐らく初の恋愛だろうということで、拙い感じをできるだけ出そうとしました。

聞く所によると、神霊廊から妖夢が変化したらしいですね。

そっち方面で。

ではでは!

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