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タザリア王国物語  作者: スズキヒサシ
黒狼の騎士
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          2


 砦での交代式を明日に控えた夜半。ジグリットは柔らかすぎる天鵝絨(ビロード)張りの寝台(ベッド)で、眠りに入ろうとしていた。うとうとし始めた心地良い温かさの中で、ジグリットは唯一、自分が本来の姿に戻れる時間を過ごしていた。

 しかし、その僅かな休眠は、突如上がった激しい絶叫によって破られた。ジグリットはびくんと過剰に躰を震わすと、寝台の中で飛び起きた。続いて窓の下の兵が騒ぎ立てる声があちこちから上がり始めるのを聞いた。

 ――何があったんだ!?

 ジグリットが寝台から降りたところに、部屋の扉が強い力で叩かれた。

「王子ッ! 王子、起きてください!」ファン・ダルタの声だった。

「何があったんだ!?」ジグリットは訊きながら、灰色の綿の下衣(ズボン)上衣(チュニック)を着込み、長靴(ブーツ)に足を突っ込んだ。

「王子、開けますよ!」

 ジグリットが椅子に掛けていた剣帯に手を伸ばすのとほぼ同時に、ファン・ダルタが部屋に入って来た。騎士はすでに戦闘態勢に入っており、黒ずくめの装束で手には抜いた長剣を掴んでいた。

「王子、どうやら何者かが砦に侵入したようです」ファン・ダルタは言いながら、ジグリットが着けるなめし革(レザー)の胴衣を素早く彼の頭から被せた。

「何者かとは、どういう意味だ!? ゲルシュタインの兵なのか?」ジグリットは訊き返しながら、身支度を整え、彼と共に部屋を出た。

「ゲルシュタインの兵ではないでしょう。どうやら、夜盗(やとう)のようです」

「夜盗だって!? こんな辺境の砦に?」

()られたのは北の巡視路にいた兵が三人。ゲルシュタインの兵なら西から来るでしょう」

 ジグリットは寝起きの頭を巡らし、そいつらが何者なのか見当をつけようとしたが、わからなかった。タザリアには山賊や反逆者といった者達の集団は確認されていない。タザリアの北東部に位置するナフタバンナ王国では、山間部に賊が多いと聞いていたが、ここは何日も移動しなければ街すらない僻地(へきち)だ。

 ――わざわざ物資も(とぼ)しい砦を急襲するために、遠方から賊が来るとは考え難いんじゃないか?

 ――しかも砦は兵士の巣。なぜ武装した兵のいる場所を賊が狙うんだ?

 ジグリットとファン・ダルタが階段を駆け下りていると、小汚い格好のくすんだ板金鎧(ばんきんよろい)に身を包んだ男が逆に登ってきた。

「おい、こっちだッ! 見つけたぞ!!」無精鬚(ぶしょうひげ)の男が階段の下に向かって叫ぶと、幾人かの返事があった。

「下がってください」

 ジグリットの腕を取り、ファン・ダルタは彼を背に隠した。

「大丈夫だ、ぼくも戦える」

 ジグリットが剣を抜くと、騎士は鋭い眸で牽制(けんせい)した。

「手出ししないでください」

 剣を振りかざして階段を駆け上がってくる男に、ファン・ダルタが身構え、一部の隙もない一太刀(ひとたち)で首筋を断ち斬った。鮮血が舞い、男が階段を転がり落ちる。騎士はそれを追うように前方の踊り場まで飛ぶと、今度は二人、同時に駆け上がってきた男達に向かって叫んだ。

「名を名乗れ、愚賊(ぐぞく)共がッ!」

 男達はその気迫に階段半ばで立ち止まり、その漆黒の騎士を見上げた。

「我々はただの物盗りだ。上階にあるお宝を貰えば、すぐにでも退()こう。だが邪魔立てするなら殺すぞ」やけに体格の良い古びた鎧を着た男が言いながら、自分を見上げるのに、ジグリットは気づいた。

 右手にいた髪を逆立てた男も頷く。「そ、そうだ・・・・・・見かけ倒しのヤツばっかりで、もう何人も殺してやったからな。おまえは違うといいが」

 ファン・ダルタはその言葉に低い笑いを漏らした。砦にいる仲間を殺されたと聞いて、彼は自分の中の攻撃性が高まるのを感じていた。タザリアの黒き(おおかみ)と称される騎士の不気味な笑みに、二人の男がじりじりとその場で踏み留まっている。

 先に左手の一人が耐え切れずに突っ込んだ。慌てて右の男も。二人は両側から騎士の胴を狙って斬り込んだが、彼は左の男の屈強な刃を腕当ての金属部で食い止め、右の男の鎧の繋ぎ目を刺し貫いた。

 痛みに声を上げた男の肩から剣を引き抜くと、今度は左に振る。再度、騎士に斬りつけようとしていた男の太い両腕がぶつんと肘から千切れ、宙に飛んだ。

「ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛ッッ!!」

 両腕から噴水のように血が噴き出し、男が絶叫した。髪を逆立てた男も驚愕に眸を剥き、騎士の血の(したた)る剣を凝視している。

 ジグリットは階段の上部からそれらを見下ろしていた。本物の戦闘が、これほど残虐でおぞましいものであることに、彼は()せ返る血の臭いと男達の苦痛の叫びを前に衝撃を受けていた。かつてアプロン峠で、ジューヌが殺されたときのことが思い出された。その死はあまりに唐突で呆気ないものだったが、その血がどれだけの哀しみを(もたら)したかをジグリットは忘れていなかった。

 騎士は戦闘意欲を失った二人が、肩を寄せ合い逃げ出そうとするのを見ていた。(とど)めを刺そうとは思わなかった。階段の上部でジグリットが見ている。それを意識せずにはいられなかった。どうせ建物の外へ出ても、他の兵に殺されるだろう。ここで殺す必要はないと彼は考えた。

 しかし二人の賊に与えられた僅かな希望はすぐに(つい)えた。階段の下に何者かが走り込んで来る。近衛隊長のフツだ。二人の兵士を捉えた彼の獰猛な笑みが、瞬時に彼らの命を奪った。フツの剣さばきは冬将の騎士に匹敵する豪胆さで、左右に刃が走った直後、男達の首は()ねられた。今まで以上の血飛沫が上がり、ファン・ダルタには手前にいるはずのフツの顔さえ見えなくなった。

「さっさと始末しろよ」フツが鈍間(のろま)だとでも言いたげにファン・ダルタを見上げた。

 騎士は何も答えず、ただ敵の姿が消えた今のうちに、王子を砦の別の場所へ移そうと、上階へ声をかけた。

「王子、もう大丈夫です。降りてきてください」

 ジグリットは階段の木製の手摺りを掴んで膠着(こうちゃく)していた。指を離そうと思うのだが、力が上手く抜けず、彼は手摺りに掴まったままだった。()れた騎士が上がって行き、ジグリットの手を引っ張って降りてくると、フツがまだ屍体(したい)の側に残っていた。

「こいつら、なんか変じゃねぇか?」フツが言った。

 ジグリットは嫌々、屍体に眸を向けた。そして同じように、顔をしかめた。おかしな点を見つけたのだ。

「夜盗にしては、かなり(きた)えているな」ジグリットは男達の体格の良さが()に落ちなかった。大抵、夜盗といえば悪漢(ごろつき)だ。兵にもなれず、商人にも農民にもなれないようなヤツが酒場で飲んだ暮れた挙句(あげく)に、金欲しさに盗人になるものだ。これなら充分、どこかの傭兵(ようへい)としてやっていけそうに思えた。

「そうですね」とファン・ダルタも頷いた。「ですが、着ている鎧も持っていた剣も、随分な年代物のようです。どこからか盗んできたんでしょう」

 ジグリットは今は屍体よりも、彼らの身上の方に意識を向けていた。くすんだ板金鎧は確かに古く、安物だ。剣も使い古されたもので、夜盗と言われれば納得しそうになる。

 ――だが、夜盗だとしても、こいつらはどこから来たんだ?

 ジグリットの疑問を読んだかのように、騎士が言った。「タザリアにこんな組織だった盗賊はいないはずです。最近、結成されたのか、もしくは別の国から入って来たとして、やはりナフタバンナでしょうか」

 ジグリットは屈んで、屍体の鎧の繋ぎ目を覗いた。下に着ているのは薄い麻の上衣(チュニック)一枚だけだ。しかも縫い目が粗い。

「ナフタバンナから来たのなら、もっと分厚い服を着ているんじゃないか?」

 ジグリットの言葉に二人の男も気づいた。ナフタバンナの盗賊なら、蛍藍月(なつ)の間も肌寒い山間部に潜んでいるので、服装は常に毛皮の長靴や羊毛(ウール)外衣(マント)を着ている。

「だとしたら、こいつら本当にどっから来たんだ?」

「ナフタバンナじゃないことだけは確かだな」

 二人の男が考えている間に、ジグリットだけは別の推測に至っていた。夜盗を装ったどこかの兵士ではないかと、ジグリットは考えていた。そしてナフタバンナ王国やウァッリス公国なら、もっと正々堂々と身分を隠さず来たはずだとも思っていた。こんな卑怯なやり方を好むのは、一国だけだ。西のゲルシュタイン帝国。ジグリットは、自分の考えすぎかもしれないと思い、口にはしなかった。昔ジューヌがよく言っていた言葉が思い出された。簒奪者(さんだつしゃ)が来る、と。

 ――ジューヌのフリをしているせいで、思考まで似てきたかな。

 自分が彼のような心配性になるのだけは避けたくて、ジグリットは嘆息した。外でまた兵士達が騒いでいる声が聞こえてきた。

「まだ残りがいるらしい。始末してくる」フツがさっさと建物から出て行った。

 ジグリットと騎士は屍体を(また)いで階段を降りきると、建物の開いたままの扉から外を見た。敵の姿は見えず、ただ砦の兵士達が雄々しく剣を振り上げて西の外壁へと走って行くのが見えた。

「ファン・ダルタ、生きている人がいたら、掴まえてどこから来たのか聞けばいい」

 ジグリットの提案に、騎士は「そうですね」とだけ答えた。

 幾度もそのような(えき)をこなしてきた騎士は、可能性が低いだろうと思っていた。仲間を殺されたら、残った兵は敵を殲滅(せんめつ)することを躊躇(ためら)わない。

 そのとき、一人の兵士が冬将の騎士の許へ駆けて来た。

「生き残りが一人、人質を取って南門の前に!」

 冬将の騎士が走り出し、ジグリットも続いて追って行く。兵士は走りながらも説明した。

「それが妙なことを叫んでいまして、王子に出て来いと」

 ジグリットは眸を瞬いて、ファン・ダルタの背中を見つめた。騎士は振り返りはしなかったが、同じように驚いていることはわかる。

「王子などいないと言ったんですが、いることはわかっているとか、なんとか・・・・・・話になりません」

 ジグリットは思案しながら、兵士に訊ねた。

「捕まっている人質は誰なんだ?」

 兵士は振り返り「バールカという少年だ」と答えた。

「バールカ・・・・・・? もしかして・・・アイーダの弟の!?」

「ああ、そうだ。本当に不運な姉弟だよ」

 兵士は騎士には丁寧だったが、新米兵だと思っているジグリットには対等の口調で話した。

 ジグリットはバールカが人質になっているなら、なんとしても助けたいと思った。そのためなら、王子だとバレても構わなかった。

 南門には剣を手にした兵が五十人以上集まっていた。ちょうど石造りの門の真下に一人の長身の男がバールカを羽交い絞めにした状態で、大声で叫んでいた。

「タザリアの王子よ! 聞こえているのだろう! 貴様がこの砦にいることはわかっているんだぞ! 出て来い、貧民の子供だからといってコイツを見殺しにするつもりか!!」

 冬将の騎士はジグリットが出て行こうとすると、その肩を掴んで首を横に振った。

「でも・・・・・・」とジグリットが見上げると、ファン・ダルタは声には出さず、口だけ動かし「ダメだ」と告げた。

「おい、さっさと出て来ねぇか! この餓鬼(ガキ)が死んでもいいのか!」

 男ががなるのを、兵士達が「王子なんかいない」と口々に叫び返している。

「いるのはわかってんだ! 卑怯者が! 後、十数える内に出て来なけりゃ、この小僧の喉を掻っ切るぞ!!」

 ジグリットは男が数え始めると、冬将の騎士の手を肩から外した。そして門へ向かって歩き出した。

 男はバールカの首に長剣の先を当てていたが、ジグリットが近づいて来ると、さらにそれを押し込んだ。バールカが半泣きで堪えている。

「誰だ、おまえ・・・・・・おまえが王子か?」

 男の問いに、ジグリットは背後から兵士達が見つめるのを感じながら、はっきりと肯定した。

「そうだ。ぼくが、ジューヌ・タザリアだ。その子を離してくれ」

 兵士達がどよめく。それを受けて、男は怪訝そうに眉をひそめた。

「本当におまえが王子なのか?」

 ジグリットはバールカの首に当てられた銀色の刃を苦々しく思いながら、もう一度頷いた。

「そうだ、ぼくがタザリアの王子だ。顔も知らないで、殺しに来たのか?」

 男はまだ疑っているのか、しきりに周りを窺っていた。しかし何かを眸にして、にやりと笑う。

「どうやら本物の王子らしい」

 ジグリットは男が自分を王子だと断定できる何かが、背後にあることに気づいた。そしてこれを仕組める数少ない人間について、頭の中で列挙(れっきょ)した。それはあまり楽しくない想像だったが、顔をしかめるにはちょうどよかった。男はジグリットが怯えていると思ったのか、余裕を見せてバールカから剣を離そうとしていた。

「剣を捨てろ。それからゆっくりこっちへ来い」

 言われるままにジグリットは剣帯ごと外して右手の地面に放り投げると、ゆっくりと歩き始めた。背後から冬将の騎士が走って来る足音がした。

「おいっ! こっちに来るな!!」男がまたバールカへ刃を当てる。

 ジグリットは振り向き、ファン・ダルタに微笑んで言った。

「心配しなくていい。ぼくの剣を拾ってくれ」

 騎士はそこで立ち止まったが、眸をぎらつかせて、男を睨んだまま、ジグリットに言われた通り、剣帯を拾いに行った。

 その間もジグリットはゆっくりとさらに近づく。男はジグリットが手の届く距離にくると、バールカを離して、彼を捕まえた。

「ハッハッ、これでおれも陛下に・・・・・・」男が何かを夢想しているのか、心底嬉しそうに笑っている。

 しかしそれは長くは続かないと、ジグリットは知っていた。

「やれ!」と砦に響き渡るような鋭い声が(こだま)した。

 その瞬間、ジグリットに剣を向けようとしていた男の額に鋼鉄の矢尻が突き刺さった。

「あ゛ッ・・・・・・?」と男が理解できないまま、後ろへ倒れる。

 ジグリットは一歩前に進み出て、男がろくに血も流さずに死へ旅立つのを見た。そして次の敵の姿を捉えて、側で剣帯を手にしている冬将の騎士に叫んだ。

「近衛隊の隊員を捕まえろ、そいつだ!」

 指差した先にいる隊員とファン・ダルタの距離は、数歩で届いた。逃げようとする間もなく、若い隊員は冬将の騎士に捕まり、乱暴に地面に押し倒された。

「逃がすなよ」とジグリットは言いながら、額に矢が中ほどまで刺さった男を、口をあんぐりと開けて見下ろしているバールカの手を引いて、兵士の方へ連れて行った。

 すぐに眸を北東の外壁上部に向けて、そこにいるドリスティの小さな白い姿に手を振る。矢を射ったのは彼だった。ドリスティが手を振り返すのを見て、ジグリットは冬将の騎士の(もと)へ駆け寄った。

 近衛隊の隊員だった男は「何かの間違いだ!」と叫んでいたが、ジグリットが服を剥ぐように言うと急に大人しくなった。ジグリットは刺客(しかく)の男が目配せした相手のいる方向に、わざと剣帯を投げ捨て、冬将の騎士に拾いに行かせたのだが、裏切り者が近衛隊員だと知っていたわけではなかった。もちろん王子が砦に来ていることを知っている人間は限られている。騎士か近衛隊員だ。その方向にいたのが近衛隊のこの男だけだったから、裏切り者だと断定できたのだ。隊員の男の上衣が剥がれると、胸のちょうど心臓の真上に黒い鎖蛇(くさりへび)の紋章が描かれていた。それはゲルシュタイン帝国を指していた。

「どうしますか、王子?」

 冬将の騎士に答える前に、ジグリットの前にフツが現れて、答えを奪った。フツは冬将の騎士が押さえている隊員の胸の鎖蛇に、すでに抜いていた長剣を無言のまま突き刺した。男の口から血が溢れ出る。

「たい・・・ちょう・・・・・・」と絶命しながら男が口にするのを、フツは冷ややかな眸で見つめていた。

 周りにいた兵士達はジグリットが王子だと知り、困惑している様子だったが、当の本人はそれどころではなかった。ジグリットはこの事態が何を示しているのかを思うと、ゲルシュタインのある方角を見ずにはいられなかった。見たことのない砂漠の地で、玉座に着いた鎖蛇の王も今頃はこちらを気にしているだろう。ジグリットは自分が狙われたことを思うと、この胸にも冷たい刃が刺し込まれた気分だった。

 そして歩き出したジグリットは、兵士達が恐れを持って王子を見ている中に、茫然と口を開けている一人の大太りした男に眸を止めた。それは数日前にジグリットとアイーダの件で揉めた料理夫だった。ジグリットが脇を通ると、周りの兵士達が小波(さざなみ)のように、静かに(ひざまず)いていく。料理夫が真っ青な顔でそれに(なら)って跪くのを見ると、ジグリットは足を止めてその場で口を開いた。

「ここで起こったどんな些細な事柄も、ぼくは父に報告するだろう。思い当たることのある者は覚悟しておけ」

 顔を地面に向けたまま、料理夫の肩が小刻みに震えていた。

 結局、ファン・ダルタが想像した通り、すべての夜盗が殺され、砦の正門の脇に山積みにされた。総勢十五人の見るも無残な屍体を、ジグリットは敵とはいえ、砦の外に埋めるよう命じた。亡くなった砦の兵士は五人で、翌朝、交代式を一日延ばして、簡単な野辺の送りが行われた。そのときには、ジグリットは敵が本当に夜盗などではなく、ゲルシュタインの部隊だったことを確認していた。

 ファン・ダルタとフツの立会いの許、十五人の屍体を埋める前に、すべて躰の細部まで調べさせたのだ。着ているものから、髪の根に至るまで、すべて。隊員以外の二人の男から、身の毛もよだつような鎖蛇の紋章が出た。一人は肩に、もう一人は腕に、それは呪いのように黒々と刻み込まれていた。


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