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おかしな転生 短編集  作者: 古流 望


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8/18

書籍化記念短編 「アニエスとジョゼの嫁談義」

本編029話より以前の話になります。

短編 「嫁談義」



 結婚に際し、伴侶の父を(しゅうと)と呼び、母を(しゅうとめ)と呼ぶ。

 これに合わせる俗な呼び方で、伴侶の姉妹を小姑(こじゅうとめ)と呼び、兄弟を小舅(こじゅうと)と呼ぶこともある。


 モルテールン家長男、ペイストリー。

 彼の伴侶となる人間には、この姑、小姑による評価を受けることになる。他の誰でも無い、リコリス嬢もまた然り。


 「家柄については文句なしよね~」

 「そうですね、母様。正直、なんでうちにって思うぐらい良い家柄ですし」

 「フバーレク辺境伯の御令嬢でしょう。ペイスもやるわね~」

 「それを言うなら親譲りじゃないかしら。母様と父様も、釣り合いって意味じゃあ今回の話と似たり寄ったりでしょ?」

 「私の時はちょっと事情があったけど。……そうね、向こうにも何か事情があったのかも」


 ポカポカとした陽気の中、アニエスとジョゼフィーネの二人は、お茶会という名の雑談会を行っていた。

 このお茶会は、彼女たちにとって重要な議題があるとき。客観的に見れば、格好の噂の的を見つけた時に、不定期で開かれる。

 今回開かれた理由は、彼女らが愛してやまない家族の一人。ペイストリーに婚約者が出来たことについてだ。


 貴族家にとって、後継者の配偶者問題というのは、お家の存続や将来にも関わってくる一大事。貴族家の妻として、また娘として、傍観しておくことなど出来ようはずもない。

 という建前のもと、こうやってお茶会が開かれたわけではあるが、彼女らが行っていることは単なる嫁の値踏みである。

 アニエスにとっては完全な事後承諾となる愛息子(まなむすこ)の婚約。まだ見たことも無い相手である以上、どんな相手かを事前に予想し、対策が必要ならば講じておかねば、と彼女は気炎をあげている。


 「事情ねぇ。どういう事情があれば、お偉方のお姫様がうちに嫁いでくるのかしら」

 「性格に難があるとか? ほら、ちやほやされて育つと我儘になるって言うじゃない」

 「ああ、なるほどねえ。でも、それなら本人が『騎士爵家に嫁ぐなんて嫌だ』とか言い出しそうじゃない。我がまま言いたい放題なら」

 「う~ん、じゃあ性格がとっても良い娘だったとして、容姿に問題があるとかかしら?」


 アニエスは一口お茶を口に含んだ。


 実際、母として心配と期待が相半ばしているのが現状である。もしかすればいずれ義理の娘となるかもしれない相手。どんな娘なのだろうかと、期待もあれば不安もある。


 「容姿が問題あるなら、ペイスの横には立たせないんじゃない? あの子、男の子にしては可愛いから、下手な娘が横に立つと見劣りしちゃうし」

 「そうね、うちのペイスちゃんはとっても可愛いものね」

 「そうそう。それでもあえて……っていうのは、きっと美人なのよ」

 「ペイスちゃんと並ばせられるというなら、きっともの凄い美人なのでしょうね」


 貴族にとって、他人の悪評とは攻撃材料である。

 例えば、酒癖が悪い男が居る。仕事の能力とは全く関係が無いわけだが、それをあげつらって「このようなだらしない男に金銭管理は務まらない」などと言いだして、予算管理の部門から疎外を画策する、等。

 一見無関係なことであっても、さも関係があるようにこじつけて、他人の足を引っ張ろうとする輩はどこにでも居るものだ。


 そういう手合いを躱す為にも、不必要な恥、要らぬ誤解は、避けるのが貴族というもの。特に高位貴族はそういう自己保身能力に長けている。


 婚約であれば、機会があるごとに婚約者同士が並ぶ。もしそこで片方が明らかに見劣りする様であれば、これは恥になる可能性もある。特に女性は男性に比べて、容姿を評価される機会が多いもの。見劣りした場合のダメージというのもまた、女性側の方が大きい。

 その可能性を考慮する必要が無い、というのなら、少なくともペイスと並んでいても『御似合いですね』と社交辞令を貰える程度の容姿だということ。


 アニエスも、ジョゼも。ペイスの事は溺愛している訳で、特にアニエスなどは親の贔屓目が入りまくっている。

 故に、まだ見ぬリコリス嬢の容姿は、ペイスに勝るとも劣らぬ『絶世の美女』という事に決まる。

 同じように、プロポーションも良いに違いない、と二人は盛り上がる。更には、色々な附帯要素まで最高に違いないと言い出した。


 「つまり、ペイスちゃんの婚約者になった娘というのは……」

 「性格は良く、顔立ちは美しく透き通るようで、プロポーションは満点で、躾も行き届いていると」

 「まあ、そんな娘なら、きっとペイスちゃんも惚れちゃうわね。メロメロね」

 「ええ、母様。きっとそうに違いないわ」


 こうして、モルテールン領にリコリスの噂が流れることになる。

 『絶世の美女でペイスも惚れきっていて男を魅了するプロポーション』という噂である。


 後になって、それを聞いた本人たちが真っ赤になって否定するのだが、それはまた別のお話。


これにて書籍化記念短編リレー完了。


今後とも「おかしな転生」をよろしく応援下さい。

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