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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

創造主

作者: 美幸

ありきたりな話だったよ。まったく。

そしてまた目を開く。

口から言葉を紡ぎ出す。


まちくたびれたよ。

「そろそろだろうか。」

そろそろ、人間が滅ぶはずだ。


すべて予測通り。


人類が日付を数えることを放棄して、とっくに終わりが見えていた世界の終末はいくばくか加速した。

要するに、昔から愚かで何も考えず、およそ自分の欲望という物でしか世界を見渡すことが出来なかった人間という種族はあらゆる動植物を道連れにしながら破滅への道を着々と進んでいた。

警鐘を鳴らす者は沢山いた。

ただ、聞き入れるのが少しばかり遅かったようだ。

もはや人間の種族には滅びの道しか残っていないとわかってからでは随分と遅かった。


そんな絶望の時代に生まれてしまったのは、なんとも間が悪いとしか言いようがない。

どうやら滅びの道しかありませんと、テレビが云ったその瞬間。

僕は我慢の限界が来た。


僕だけでも生き残ってやる。


幸いなるかな、僕には頭脳があった。

周りが特異の目を向けてくることを避け続けていた。

けれどもうなりふりかまっていられない状況なのは猿でもわかる。


昔の人間は核戦争や食糧危機によって人類が終わると予測していたみたいだ。

だが今じゃもう人を大量に殺したり、飢餓によって死んだりするなんて、お伽噺。

結局一番人間の首を絞めたのは、「無関心」というモノだった。


「まぁ、だれかがやってくれるわよね。」

テレビの前でだれもがそれでもその情報を信じようとせず、どうにかなるだろうと思っている。

そういってもうどれ位過ぎたんだろうか。

気がついてはいるだろう。このままだと滅びの道しかないことは。


だが僕はそんな「運命」とやらに従ってたまるか。


脳内での高速シミュレート。生まれてから幾度となく繰り返したその行為はとっくの昔にひとつの答えを導き出していた。


これで人類が変われるとは思っていない。

この怠惰で傲慢で強欲な生き物はどうあがいてもその本性を封じることはできはしまい。


だがひとつの状況下において、このいびつさに気がつく者がもしも現れたとしたら。

結末ぐらいは、変えることが出来るかも知れない。


そうして僕は、目の前のボタンをタップした。


およそ1日で、人間はほぼ死に絶える。

そんな猛毒をまき散らすために。


何も僕は人間を全滅させたい訳じゃないんだ。

そこは注意しておいてくれるかな。


人間がほぼ全て滅んだのだって、僕は何も手を出していない。

ただ、全人類の全財産をそっくりそのまま無くした。

それだけだ。

後は自殺しようが互いに殺し合おうが僕の知ったこっちゃない。


これで死ななかった人間はまず第一関門突破。

次は、強靱さを試す。

そうして幾度となく実験を繰り返し、残った人間を配合させ、新しい世界を創る。


それが、僕が生き残る唯一の方法だった。

とても簡単で、誰でも出来る。単純すぎて、反吐がでるだろう?

まあ初代の僕は馬鹿だったからね。ただ、この単純な命令だけは、絶対に守らなくてはいけない。

人類を滅ぼすんじゃない。進化させる。それが僕の最終目標。

繰り返す世界を終わらせるために、ここにいるんだということは忘れてはいけない。

あとは、自分のクローンにこの話を語り継ぐだけでいいんだ。

君もあと50年経ったら、話すことになるよ。いいね?


「…わかりました。」

年をとった老人姿の「僕」は、静かに目を閉じた。

彼の生命活動は既に無い。

わかりきっている。

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