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私立椿姫女学院  作者: 北野ゆり
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第3章 第1話

大変長らくお待たせしました。続きです。

「ねぇ、計画もなく来ちゃったけど・・・どうするの?」

そう宮本が言った。

「とりあえず・・・」

寺沢がそう言いながら、ポケットの中から何かを取り出した。それをみんなに見せながら、言った。

「・・・呼び出す。」

「え!!そ、それって・・・」

あまりの驚きに声が出なくなった宮本に続けて、寺沢が言った。

「ケータイだよ。」

「ど、どうやって手に入れたの?」

竹田がそう言うと、寺沢はあっさり答えた。

「親からの贈り物だよ。」

「親、から?」

渡部が寺沢の言葉は反芻した。

「そう。少し前に親から段ボールが送られてきて、開けたら入ってたんだ。」

「で、でもケータイの持ち込みは禁止されてるはずじゃ・・・バレたら・・」

森が言うと、寺沢はニコリと笑いながら言った。

「大丈夫!学校では寮部屋の中でしか使ってないから。使うときは必ずカーテン閉めてやってるし。」

「でも、もし段ボールの中を見られたら・・」

「いくらなんでもそこまでしたら、プライバシーの侵害で訴えられるでしょ。」

「あ、そっか。」

森は納得したようだった。この学校は一応親からの贈り物を受け取ることは許可している。

「さてと。」

寺沢はおもむろに北川に電話を掛けた。数回のコールのうち、電話は繋がった。

「もしもし寺沢と申します。北川さんのお宅ですか。」

『はい。そうです。』

電話に出たのは、若い女性だった。きっと北川の母親だろう。

「・・ゆかちゃんはいますか?」

『はい。少々お待ちください・・』

「・・・・・・」

『・・・もしもし・・』

しばらく待ったのち、北川が出た。

「もしもし、私。今から会いたいの。こないだの公園に来て。」

『・・行かない。』

「別にそれでもいいけど、そのかわり家に押しかけるけど?」

寺沢が嫌味っぽく言った。

「寺沢、それ脅迫・・・」

電話している横で森がつぶやいた。

『わ、わかった。行けばいいんでしょ。行けば。』

「じゃあ、待ってるから。」

寺沢はそう言って電話を切った。

「・・で?」

宮本がそう言ったのに対して寺沢は聞き返した。

「『で?』って?」

「だから、呼び出してこれからどうするの?」

少し怒りながら、宮本は言った。

「・・どうするも何も話すだけだよ。私たちの気持ちを。」

「それだけ?」

「それだけ。」

寺沢はきっぱり言った。

「はぁ、それだけで何とかなるとも思えないけど・・・」

「ま、ものは試しだよ。」

そう軽く言った寺沢に対して、宮本はこれ以上文句を言うのはやめようと思った。そんな話をしているうちに5人は公園についていた。5人は無言のまま北川を待った。3分ほどたったぐらいにして、北川が現れた。

「で、私を呼び出して何の用?」

そう聞いた北川に対して答えたのは、寺沢だった。

「そんなの言わなくてもあんたなら、わかる。でしょ?」

「・・・・・」

北川は答えなかった。

「・・・・学校に戻ろう。」

寺沢はとてもゆっくりとつげた。

「・・いやよ。学校には2度と戻らないって決めたの。それに、なぜ私が戻らないといけないの。」

「ゆか・・・。私たち、もう知ってるんだ。ゆかがやめた本当の理由。」

渡部がしゃべり始めた。

「私全然知らなかった。ゆかがいじめられてたの・・。ごめん。私、彼女なのに・・・。戻らなきゃいけない理由、あるよ。・・・・私、もっと一緒にいたい。もっとあっちこっちに行きたい。2人だけじゃなくて。・・・ここにいる、みんなで。いじめもみんなで一緒に向き合おう。みんないれば、怖くないよ。だから、一緒に戻ろう。学校に。」

「みさの言う通りだよ。1人で抱え込まないで。私たちにも抱えさせて。友達なんだから。」

竹田が渡部に続けて言った。

「一緒に・・?」

北川は小さくそう言った。

「一緒に。」

竹田は強く言った。それを聞いた北川は5人を見た。全員とも、笑顔だった。まるで自分たちも竹田と同じだと、言っているかのように・・・。

「・・・無理だよ・・今さら・・・」

鼻をすする音がした。北川は泣いていた。

「・・・もう、無理だよ・・退学してから、3日も経って、るんだよ・・・今さら取り消しなんて、できるわけないよ・・・私だってできるなら、戻りたい・・戻りたいよ!あの場所に・・・。やめてから、何度も、何度も、みんなの所に行きたかった・・・でもそれじゃみんなに迷惑かけちゃう・・・そうやって自分の気持ちを押し殺してた・・・今さらなんだよ・・・遅すぎた・・もう遅いんだよ!!・・・・」

しゃくりあげながらも、必死に北川は言った。

「そんなことはないと思うけど?ねぇ、そうでしょ?」

北川の言葉に反論するように寺沢は言った。そして、自分の後ろの方に視線をやった。

更新が2か月も後になってしまい、すみません。物語は第3章に入り、そろそろ結末が近くなってきました。本当に本当に、読んでくれている皆様に感謝します。ありがとうございます。

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